知らない名前を会話に出すな

これが実によくある話なんだけど、どういう頭してんのか理解できない。例えば

「〜がさあ、もう離婚しそうなんだって」

という話を振られたとしよう。こういう話の前提として、話題を振られたほうがその〜さんを知らないと、当然会話にならない。だから僕はいつも

「〜って誰?」と聞く。このやりとりがめちゃくちゃだるい。

「〜っていうのは職場の同僚で、」

おいおい普通に説明してくるのかよ、だったら初めから言えよ、なんで俺が会ったこともないそいつの名前知ってる前提で話してきたんだよ、まださ、業界用語とか知識の前提だったら相手が知っていると思って話すことはあるけど、個人名とか、お前の友人で俺が知ってる人間かどうかなんて最初からわかってるでしょ?何で最初に説明しないわけ?バカなの?とは言わない。大人げないから言わない。でもこういうやりとりはいい加減うんざりするから、そのままスルーするパターンを試してみた。

 

パターン① スルー

「〜がさあ、もう離婚しそうなんだって」

「へえ、そうなの。残念だね」

「は?何が残念なの?旦那からDV受けてたんだから離婚できて良かったじゃん!〜のつらさわかってんの?」

知るかよ!!俺はそいつのことも知らないのに、旦那とか離婚の事情なんて知るわけない。頭おかしいんじゃないかコイツ死ねよ、と思う。でも大人だから口に出して言わない。

「そうなんだ、じゃあ離婚したほうが安心できるんだね」

「それがね、なんか離婚の手続きとか大変らしくて、ほら、親権とかあるでしょ?」

おいおいそのまま話続けるのかよ、しかもガキもいるのかよ知らねーぞそんな話。お前普段散々人に察してくれって言うくせに、俺の心情は一切関知できないのかよ。今俺の心情を説明してやろうか?お前のわけのわからない知り合いの話を急に聞かされてスルーしようと思ったら、俺が知ってるはずもないDV設定出してきてまるで知らない俺がバカみたいな反応しやがって、お前は俺が何でも知ってると思っているのか?それともお前の口から出てくる話題は全て予習しとけってか?知るわけねえだろう、バカか!お姫様か?お姫様気分か?俺はお前の家来なのか?お気持ちを察してお使えしなければならんのかー?なんて反論するのは大人げないと思いつつも、このままではさすがに立場が危うく感じたため、ちょっと強気に出てみた。

パターン② 無関心

「〜がさあ、もう離婚しそうなんだって」

「…」

「ねえ、聞いてるの?」

「…何?」

「だから、〜が離婚しそうなんだって」

「で?」

「でね、あんなに幸せそうだったのに、わかんないよね」

「…それで終わり?」

「は?なんでちゃんと聞いてくれないわけ?!」

「興味ない」

「わかった、もういい」

「おまえさ、人に話を聞いてほしかったらちゃんとわかるように話せよ。まず、それ誰の話だよ。そんなやつ俺知らないから、知らないやつの名前出されてもわけわかんねえし、それに」

「もういいって」

おお、なんか俺が悪い感じになってる…何この空気やめて、俺の怒りの行き場が全くなくなるからやめて。逆ギレってやつですよそれ、気づいてますか?あなた俺に不快アピールしてますけど、その不快、俺のほうが先にアピールしてたの気づかなかったのかな?このまま続けても喧嘩になるパターンだ。気を取り直して、別の強気パターンを試してみた。

パターン③ 反論

「〜がさあ、もう離婚しそうなんだって」

「は?そいつ誰だよ、俺の知らないやつの話急にされてもわかるわけねえって前から言ってんだろ?」

「あ、そっか、そうだったよね、ごめん…」

「で、何?」

「ごめん…もういいや、大した話じゃなかったし」

「なんだよ、だったら初めからそんな話振ってくんじゃねえよ、バカか?」

「ごめん…バカだよね、私。また怒られちゃった」

おいおい、これじゃあまるで俺がDV野郎じゃないか、違うんだよ君、そんなつもりじゃないんだよ。ちょっとイラついただけで僕も本当は君と話がしたいんだよ、もっと気軽に円滑に話ができるように模索した結果が裏目に出てしまって、はい、じゃあもうちょっとソフトに言ってみよう。

パターン④ 嫌味

「〜がさあ、もう離婚しそうなんだって」

「ちょっと待って、」

「え?何?」

「その〜って僕の知ってる人?」

「うーん、知らないかも。でさ、〜が」

「ちょ、ちょ、」

「なに?なんなの?」

「あのさ、僕の知らない人なんでしょ?」

「そうね、そうだよ」

「だったらさ、まずその人が誰なのか説明してくれないと、そのまま話されても僕は全然わからないよね?」

「ああ、うんその子は会社の同僚なんだけど、もう離婚しそうになって」

「もう?もうって言ったよね?その子は一体いつ結婚したのかな?僕その子のこと何も知らないからわかんないなー」

「いつって、去年だけど…ウザ、もういい。話進まない」

「おい、ちょっとまって」

いや、これ割りとあるあるなんですよ。いつも「言い方がウザい」なんて言われるけどパターン③みたいに指摘したら萎縮してしまうし、そう思ってソフトに言ったつもりが、本人の説明不足という不手際を棚に上げて俺の言い方がウザいからムカつくっていう方向で怒りを買ってもう相手にされなくなるパターン、めんどくせえ!!

パターン⑤ 理想

「ねえ、私の会社の同僚に〜っていう子がいるんだけど」

「うん」

「去年結婚したばかりなのに、ほら、去年の梅雨前ぐらいに東京まで式に行ってくるって言ってたの覚えてない?終わったあとの写真も何枚か見せたやつ」

「ごめん、去年たくさん結婚式行ってたからどの子かはわからないよ」

「そっか、まあいいや、でね、その子の旦那がめっちゃ優しそうな人だったんだけど、実は結婚してからDV男だったことがわかったみたいで、一回私にも泣きながら電話がかかってきて」

「ああ、それだったら覚えてる。去年の秋頃だっけ、電話のあと俺に相談してたよな、それでどうなったの?」

「もう離婚しそうなんだって。結婚した時はあんなに幸せそうだったのに、人ってわかんないよね」

この流れ作って、頼むから。しかし、事はなかなかそう上手く運ばない。現実的なパターンを模索してみよう。

パターン⑥ 現実

「〜がさあ、もう離婚しそうなんだって」

やっぱりここは、その〜が誰なのか聞かざるをえない。この、相手が誰なのか知ってる前提を覆す無駄なやり取りはどうしても避けられない。

「〜って誰?」

この〜って誰?やりとりは今まで何回もしたのにいつまでも学習してくれない!くやしい!けれど、ここで畳み掛けて「〜って誰?でいつ結婚したの?」まで一緒に聞いてしまうと大抵どちらか一つしか答えが返ってこないから一つずつ慎重に進める。

「〜は会社の同僚でー」

ここですかさず次の質問を入れる。

「それでいつ結婚したの?」

「それがね、まだ去年なの。1年も経っていないんだよ?早いよねー」

さあ、早いってキーワードが出てきました。何か理由があるはずだ!

「そうだね、そんなに早いってことは、何かあったの?」

「そうなの、〜の旦那がさ、実はDV男だったらしくて、結婚式の時はあんなに優しそうだったのに、人ってわからないよね」

お、そうか。話題自体はどうでもいいから、それぐらいの感想しかない。しかしここは、あえてそのまま話に乗っかってみよう!

「もしかしてその子たち、すぐ結婚したの?」

「そう、当たり!デキ婚なのデキ婚。付き合って1ヶ月ぐらいで子供ができちゃって、フィーリングが合うって言ってたのに、」

デキ婚と離婚率の相関関係はここではどうでもいい。これは架空の話なんだから。僕がここで言いたいのは、このやりとりがめんどくさいということだ。「別に聞きゃーいいじゃん」と思うだろう?だからこう言ってるんだ。知らない事ぐらいわかるだろ?先に言えよ!って。名前や状況を出す前に、相手がそれを知っているのか、把握しているかまず思い出してから話してくれ。それでもし知らない人間のことだったら、簡単でいいから先に説明してくれないと何の話をしているのかさっぱりわからない。こちらとしてはいちいち質問して把握しながら会話をするのが非常にめんどくさい。いや、めんどくさい、マジめんどくさい。そしてこういうやりとりは機嫌が良い時しかできない。なぜなら人間が小さいからね!あと初対面の相手ならどうでもいいから適当に合わせるけど、そうでなければいい加減強気なパターンが出てきて「最初は優しかったのに」みたいな話になりかねん。例えばさ、こいつら、このド低脳たちの会話って一体どうやって成り立ってんの?疑問の余地とか生まれないわけ?それともお互い適当に話合わせてるだけなの?相手に話聞いて欲しいんだったら、まず相手にわかるように話そうよ。それとも何、中身なんかどうでもいいわけ?ただ喋ってればいいの?じゃあもう俺聞かないよ?黙って聞いてるふりして別のこと考えるよ?実際そうしている人はたくさんいるよ?真面目に対応する僕が間違っていました。

「〜って言い方、私嫌いなんだけど」

知るかボケエエ!!何で俺がお前に配慮してやらなあかんねんボケエエ!!何でお前のそんなどうでもいい事情を俺に配慮してもらえると思ってんねんボケエエ!!お前は幼児か!!駄々こねる赤子か!!お前の心情察してくれんのはお前の母親だけじゃ死ねえええ!!!取り乱しました。