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トランプ選挙についての意見が大体出揃った

11月8日に行われたアメリカ大統領選挙について、各方面からの意見が大体出揃った。これら周辺の思惑と、自分の頭の中を整理する意味でも一通りまとめてみようと思った。「アメリカのことだから日本と関係ない」「大騒ぎしすぎ」といった意見もあるみたいだけど、内政にとどまらず外交においても大々的な変革を掲げていたトランプがアメリカの意思として当選したことは、表立って意思決定が進まない曖昧な日本の選挙よりも十分注目に値する事柄だと言える。特に日本の国防についてはアメリカ頼りのところがあり、「米軍の費用は負担しろ、さもなくば撤退」を政策として掲げていたトランプの当選は、今後日本がさらにアメリカの属国と化していくか、それとも自立を目指すかの境目になる。政策通りに事が運べばの話だが。

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選挙の分析

トランプ候補はなぜ大統領選に勝ったのか: 極東ブログ

トランプが当選してまず最初に注目されたのが、finalvent氏の見解だった。投稿されたのも早かった。アメリカにおける大方のメディアの予想を外して大統領になったトランプが、何故当選したのか、何故メディアの予測は外れたのかという疑問を整理する雑感。

内容としては、メディアが調査した表向きと実態の解離、トランプ陣営とクリントン陣営の選挙資金の配分とその効果の違い、両陣営におけるメディア広告の使い方の差など。

ただ、こうした選挙運動全体が、どのようなメディアを使うのであれ、実際に投入されたメディアの跡を見なおすと、それらは政策や主義の情報やコミュニケーションではなく、感情をトリガーする操作が決め手になっていたとはいえる。

トランプの選挙戦略を語るにあたっては、メディア展開においていわゆる見出し記事のような短い文言だけが感情を煽り、全体を語るようなものが多かったように思う。ヒラリーが何を言っていたかはあまり印象に残っていない。

「トランプ大統領」誕生 - 山猫日記

次に国際政治学者として朝ナマなどのテレビでも活躍されている、三浦瑠麗氏の記事。今回の選挙の焦点となった部分を、大まかな全体像でまとめている。ニクソンやレーガンといった、同じく共和党からの大統領と並べた、歴史の流れにおけるポイントの置き方、どの州が決定的だったか、どの政策が重視されていたか、選挙戦略の差、そして、この選挙結果に対して日本がどのように向き合っていくべきかなど。

私は、事態を直視せずになし崩し的に思いやり予算を増やすよりは、限られた予算の中でも、日本がやれることは日本がやりますと言って、米国の責任を一部分担し、通常兵力を増強するべきと思っていますが、果たして、そのような決断ができるか。

この点について日本でもいまだに楽観的な見方が強い。大見得切って当選したはいいものの、結局トランプはそんな大舵を切れないんじゃないか、特に日本に対してどうこうというより、世界中の米軍派遣は単純に出費というわけではなくあらゆる利権も絡んでいるから、そう易々と全額負担なんて要求できないんじゃないかと言われている。

ただアメリカ側が享受する利益も含めた差し引きで計算されたり、取れるところからは取れるだけ取るという方針になったり、過去から「日本は金だけ出して兵はよこさない」と言われているように単純に予算の金額ではなく日本からの軍事派遣も合算して検討されると、日本は変わらざるを得ないだろうなと感じる。アメリカが極東に介入するメリットってほとんど無いから。

選挙後のスピーチに触れて

【米大統領選】「私はこの国を愛しています」トランプ氏が勝利演説(全文)

打って変わって、選挙前のトランプ節が見られず「まともだ」と言われた当選確定後のスピーチの内容。挨拶としては普通か。

私たちは分断という傷を癒していかなければなりません。すべての共和党員、民主党員、そして無党派層の人たちに対して、アメリカ国民として一つにまとまるべきだと訴えたいと思います。

ブコメ最上位にも挙げられているように、今回の選挙に勝った大きなポイントはトランプがこの分断に目をつけた部分だろう。大統領選挙のメディア予想が大きく外れたことにより、アメリカ社会にある意識格差、それがもはや分かり合えないどころか、意思疎通すらままならない状況だということを露呈した。この流れはもちろんイギリスのEU離脱投票にも見られたことだし、大阪都構想の投票結果は、またちょっと違うか。

アメリカが今後良い形に一丸となって復活するとしたら、今回の支持層と言われる白人中流層を単に優遇するだけでなく、これまでできなかった、分断した溝を埋めることが鍵になるだろう。スピーチで言うようにアメリカ国家全体をまとめることができれば、もしかすると今後アメリカ国内は良い形で安定するのかもしれない。まだ今のところ逆を行ってるが。

ヒラリーの敗北宣言スピーチがとても素晴らしかった・・・・・が、スピーチがうますぎたのが敗因じゃないかと、ふと思った。 - 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために

反対にヒラリーさんのスピーチから見た感想。この記事ではクリント・イーストウッドに端を発し、今回の選挙におけるキーワードとして話題になっているポリティカル・コレクトネスについてわかりやすくまとまっている。ポリコレポリコレと合いの手のようにTwitterでもさえずられているが、ポリティカル・コレクトネスとは日本語に訳せば政治的正しさ、過去8年間における民主党政治においては正しさを追求するだけで結果が伴わなかった、現実が見えていなかったというのが今回のポリティカル・コレクトネスに対する批判の大筋と言える。

そしてヒラリーのスピーチにもやはり一貫した「正しさ」の主張が見られると。その点については選挙直後のスピーチになるため挨拶的なスピーチをしたトランプにも同じことが言えるだろうけど、正しさでは現実を変えられないというのが今回の選挙の争点になった。いくら正しさを突き詰めようとしても現実的な成果という壁が立ちはだかり、正しさではなく厳しい現実に焦点を当て、例え汚いやり方であっても現実を変えていくことを優先したトランプが勝利する結果となった。

差別は、政治生命を失わせますからね。けど、そういう上品な態度で、安全は買えないんですよね。だって、実際、ゲーティツドコミュニケティーができるわけだし、階級階層人種で、実際は住むとこも変えるんですよ。それが現実。明らかに深く客観的に考えれば、そういう短絡的な解決方法を示すトランプさんが、大統領になったからといって、安全をもたらしてくれるわけではないんでしょうが、少なくともその話を逃げずにちゃんとしているので、ああ、他のウソをついている(ように見える)候補者よりも正直な人なんだなと感じたんですよね。

これは非常に難しい問題で、正しさよりも現実を見るということはすなわち取捨選択を行うということになる。これまでのアメリカ政府はその選択を行わずに、公平であることを選択してきたが、今回の選挙によって拾われる者と捨てられる者が政府に選ばれた。アメリカを優先する、アメリカファーストという言葉は、アメリカ人なら移民もマイノリティも分け隔てなくまんべんなく公平に尊重するという意味ではなく、アメリカの基盤になる層を中心に立て直していくという選択をしたと捉えることができる。これはまさしく経営者視点のビジネス的な運営方針だ。

しかしそこは会社ではなく開かれた移民国家としてのアメリカがある。選択と集中を行うにしても、その中で捨てられる者について対処するかが政治の捨てきれない正しさになってくるんじゃないだろうか。選挙では分断された反対側を味方につけてトランプは勝利したが、そのまま舵を切るだけでは分断の溝が深まるばかりだろう。ここにはヨーロッパ各国における移民排斥ムードと単純に並べることのできない、移民国家としてのアメリカの業があるように思える。

海外の反応

【写真】トランプ氏の勝利に世界はどう反応したのか

こちらは選挙結果に反応する人々を写した様子。日本の選挙で当選者が決まって泣く人がいたりすることって、身内以外では無いんじゃないかな。ましてや市民によるデモ・暴動が起こったりすることなんて。70年代ぐらいまでならあったかもしれないけど。

特にマイノリティが悲嘆に暮れいてる様子は見ていてつらいものがある。長い時間をかけて勝ち取ってきた権利が否定された瞬間であり、当事者たちにとっては絶望的だろう。

トランプの勝利により、今、マイノリティに何が起こっているか - Togetterまとめ

トランプ氏勝利後、数え切れないほどのヘイトクライムが全米に広がる

そんなトランプ勝利を経て、アメリカで見捨てられたマイノリティへの被害をまとめている。対象となっているのは黒人、ゲイ、ムスリム、内容がなかなかひどい。これらは選挙前からトランプが煽っていたことであり、彼の支持者であったアメリカにおける白人中流層、ポリティカル・コレクトネスを否定した人たちの極端な行動として現れている。トランプ支持者がみんなこうなのか、大多数がこうなのかは知らない。同様に、クリントン支持者だった人たちによる極端な行動も話題になっている。

こうしたヘイトに満ちた行為はおそらく今後も続くとみられる。アメリカ人はこの新たな現実を無視することなく、同調せず、ヘイトを認めないという意思表示をすることが以前にも増して重要になっている(もしこの現実に圧倒されているなら、あなたにできることを紹介しよう)。

その前に、トランプ氏勝利後の数日間全米各地で繰り広げられた、憎悪に満ち、民族主義的で目を覆う悪事を振り返っておこう。これを読めば、何か行動を起こそうという気持ちになると思う。

ポイントとしては、今後民主党支持者ではなく共和党支持者側が、こういった極端な人たちをどの程度制御できるかというところだろう。トランプに投票した人は彼らの行動に全て賛同するのだろうか。同調して煽ったり、見て見ぬふりをするようであれば、アメリカは本当に悲惨な国になるだろう。アメリカはアメリカ国民全体ではなく、白人中流層に恩恵を与えるため、本当に彼らを、徹底的に見捨ててしまうのだろうか。もしそうなれば、アメリカ国内にいる良識あるアメリカ人までもが肩身の狭い思いをすることになる。"捨てきれない正しさ"は、やはり捨てられてしまうのだろうか。選挙のその後が注目される。

トランプ氏当選後、AppleのCEOが社員に送ったメッセージ

民主党への投票が多かったカリフォルニアの企業、アップルの経営者であり、自信がゲイであることも公言しているティム・クックからの社員にあてたメッセージ。

先行きが不透明であることに対して、今は様々な意見がありますが、Appleの北極星は変わらないということを信じてください。私たちの製品は世界中の人々をつなげます。そしてお客様は生活を、ひいては世界をもっと良くするツールを手に入れることができます。この会社はすべての人に開かれています。そして私たちは、ここアメリカ合衆国、そして世界中に広がるApple社のチームが多様性に富んでいることに喜びを感じています。外見、出身地、信仰、そして誰を愛するかは関係ありません。

アップル社員のインタビューなどを読んだことがあるけれど、本当に移民が多かった。ティム・クック自身の立場からも、今回の選挙は非常に困惑する結果となっただろう。これは国の方針がどうなろうと、スティーヴ・ジョブズの時代から受け継がれてきたアップル社の信条は変わらないという、今後に向けての意思表示だと見受けられる。

人物としてのドナルド・トランプ

貴族だったトランプがアジテーターに転向した理由  WEDGE Infinity

こちらはトランプの成り上がりストーリー。大統領の座につくまでの道のりが、いかに戦略的に計算されてきたものかが語られている。具体的には、ただ選挙に勝つためだけの手段を、どこからどのように学んできたかというもの。今日のトランプの姿というのは、過去には見られなかった。今我々が知っているトランプというのは、選挙戦略のために作られた演出であり、演技であり、虚像としてのトランプに過ぎない。

ニューヨークの富裕層に生まれたトランプは、ブキャナンの選挙戦とWWEで初めて白人労働者層、いわゆるサイレント・マジョリティーの鬱屈したパワーに触れた。マーケティングの名手としてはこれを利用したい。なら、共和党しかない。共和党の支持者の9割が白人で、学歴や収入も民主党のそれに劣る、つまりWWEと同じ客層だからだ。

この記事を読む限り、トランプが掲げた政策も主張も何もかもが、選挙に勝つためだけに用意された作り物にしか見えない。支持者や投票者は、トランプの選挙戦略という巧みな演技に騙されていただけなのだろうか。本来のトランプ像とは一体どのようなものか。トランプの本心はどこにあるのだろうか。そして、戦略通り選挙に勝ったトランプは今後、どういった行動を取っていくのだろうか。読んでいると段々わけがわからなくなっていく。

マイケル・ムーア「トランプは任期4年を全うできない」

ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーアは、選挙前からトランプ勝利を予想していた。

奴は、ドナルド・J・トランプのイデオロギー以外何のイデオロギーも持っていないからだ。あんなナルシストは、自分の天下になればますます自分に酔うだろう。奴は必ず、たぶん無意識に法を犯す。何が自分にとって最善かということしか考えていないからだ」

ブコメによると、過去に違法案件で退陣になったアメリカ大統領はロッキード事件のニクソンだけ。マイケル・ムーアの映画は見ていないし、トランプ個人については不明という印象しか持っていないから何とも言えない。

【米大統領選】トランプ次期大統領がディスりまくった対日発言とは

さて、ここで我々日本人としては、トランプが実行に移せるかどうかは別として、日本に対してどのような発言をしてきたかをおさらいしておくべきだろう。

「我々は世界の警察官にはなれない。世界中のすべての国を守ることはできない」「相応の負担をしないなら、何百万台も車を売りつける化け物のような日本を守ることはできなくなることは十分考えられる」

これはトランプに限らず、これまでから言われてきたアメリカ人の一般的な考え方だ。相応の負担というのは単にお金の話ではなく、命の負担のことを指している。国防を他国に任せっきりにしてきたツケは、近いうちに返ってくるかもしれない。

おまけ

こちらは選挙直前の岡田斗司夫の予想。選挙前の時点で既にアメリカ社会の分断について触れている。ウォルマートによる地方の荒廃や、「肩をすくめるアトラス」という小説について触れ、これまでの大資本家が国を支えて寄付金を配り、国民に還元するというアメリカの資本主義が立ち行かなくなってきた現状を解説している。対立軸であった社会主義国家は崩壊し、資本主義にとっての社会福祉は単なる経済の足かせになった。そこで、切り捨てられてきた白人中流層に目をつけたトランプが大統領になる、というシナリオはあり得なくないという話。結局その通りになった。

肩をすくめるアトラス

肩をすくめるアトラス

ただ個人的によくわからないのは、結局トランプはどうしたいのだろうか。減税や雇用対策を行うみたいなことを政策に掲げていたが、それで潤うのは結局大企業なんじゃないかと思えてくる。もちろん大企業は税金対策などを独自に行えるから、大企業のような資本力がない会社も、これまでより活躍しやすくなるのだろう。関税による国外流出を抑えて、国内で経済を賄うことにより雇用と流通を確保することができ、国内における大企業と労働者の格差は縮小するという意味だろうか。富裕層はそのままだが、最底辺を切り捨てて中流を再興するという話だろうか。

こちらはロサンゼルスに住むアメリカ人の、今回の選挙結果に対する短い感想。ここでもアメリカ国内における意識の分断について触れられている。彼はカリフォルニアのアメリカ人しか知らず、トランプ支持者層の考え方について今まで全く意識することがなかった。今回の選挙結果は、これからそのことを意識せざるを得なくなった結果だった。民主党支持者側からの、アメリカ全体に対する歩み寄りの意見だと言える。

メキシコ、米国との国境に壁を建設へ

虚構新聞です。これはジョークとして扱われているけれど、本当に公言してたことだから果たしてどうなることやら。

ややリベラル寄りに偏った

関心が湧いたものだけ取り上げたため、ややリベラル寄りに偏った意見、内容のまとめになってしまったが、取り上げていないところで感知してる内容としては、リベラル陣営からのトランプ支持者に対するヘイトもあったということぐらい。

キーワードとなったのは、分断ポリティカル・コレクトネスになる。しかしこの分断構造というのが白人中流層vs富裕層+マイノリティという変な構造になっている。富裕層とマイノリティがセットに扱われているのはどういうことなのだろう。富裕層の施す福祉からはマイノリティしか恩恵を受けられないためセットになっているという意味だろうか。白人中流層とマイノリティは競合するためセットにできないということだろうか。これから白人中流層を優遇していくということだが、富裕層の立場は変わらず結果的に残るのは白人中流層+富裕層となり、マイノリティだけがどん底に陥るということになるんじゃないだろうか。現代の民主主義国家として捨てきれない正しさを何とか保持してほしいところです。