「帰ってきたヒトラー」感想・書評

上下巻ある長い本なんだけど、昨日1日で読んでしまった。面白かった。2012年にドイツで出版され250万部のベストセラーになり、42カ国語に翻訳された「帰ってきたヒトラー」(原題は"Er ist wieder da"「彼が帰ってきた」)。内容はタイトルの通り、現代にヒトラーがタイムスリップしてきたという話。ヒトラーは地下壕で自殺した記憶をなくしており、2011年のベルリン、地下壕があった場所に現れる。この本は全てヒトラー視点で描かれたタイムトラベル物の小説だ。彼はまだ1945年の戦時下にあると思い込んでいるが、周りの様子がおかしいことに気づく。そしてキオスクの新聞にある「2011年」という年を確認するあたり、バック・トゥ・ザ・フューチャーなど往年の定番タイムスリップ物になぞらえている。

  • 忠実に再現されたヒトラー
  • 蘇ったヒトラーは何をするのか?
  • ヒトラーに扮するヒトラー
  • この本の難しさ
  • 洒落にならない現実
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「タイタンの妖女」感想・書評

「わたしだって、彼らがわたしを仲間に入れてくれるならそうしたろう」

カート・ヴォネガットの有名な本で、特に爆笑問題の太田光が大絶賛していたから名前だけは知っていた。そして岡田斗司夫推薦のSFということもあり、気になって読んだ。タイトルの「妖女」っていうのは原著だと「セイレーン」になっている。ファンタジーによく出てくる妖精か精霊みたいなやつだ。タイタンというのは土星の衛星のタイタンで、コンスタントという男がタイタンに住むセイレーンを追いかけて宇宙の旅をする話。事の経緯は、時間等曲率漏斗という宇宙の狭間に吸い込まれたラムフォードという男が、概念のような存在になり2ヶ月に1度だけ地球に姿を表すようになったところから始まる。彼は過去から未来まで全てを見通せるようになっていた。そしてコンスタントを自宅に招き、後に宇宙旅行をすることになるという予言をする。そのときラムフォードがコンスタントに見せたのは、このタイタンに住むセイレーンが写った写真だった。

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今年読んだ本(2016)

去年おととしと今年の夏まで日本を離れていたせいで、全然本が読めなかった。今年の夏以降はこれまでに比べ本を読み、感想を書いたため振り返ってみた。それでも35冊、月1冊読めばいい方だった以前に比べると多い方だ。僕は一冊読むとその後何日もかけて考え、落とし込むための長い時間を要するから、同時並行で読んだり次々と読むことができない。器用な人はそういうのを読みながら行ったり短時間でこなしたり何冊も同時にできるんだろうけど、僕はなかなかそういうのを一つずつ集中しないと思考がはかどらない。 速読多読より熟読派であり、同じ本を何度も読んだりする。

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日記

来月に面接があり、肩まで髪があってはさすがに印象悪いだろうと思って切った。かれこれ5年ぶりぐらいにめちゃくちゃ短くしたら兵隊みたいな髪型になった。髪を洗うのが楽になるなあと思っていつもの感じでシャンプーしたらめちゃくちゃ泡立った。タワシにこすりつけてるみたいなもんで、泡だけ大量に立って余った。一回に使うシャンプーの量を減らさないといけない。

デカフェのコーヒーを初めて飲んだ。といってもインスタントだけど、匂いや味は普通のコーヒーと全然変わらない。しかし、やっぱりあのカフェインの来る感じはなかった。夜用だな。ちなみにデカフェのインスタントコーヒーならこれがおいしいと評判。

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現代史を辿る旅行

これまでの旅行には、共通したテーマを持って行ったものがいくつかあった。今年の2月から3月にかけてはユダヤ人(セファルディ)の軌跡を辿るというテーマのもとに、スペインからモロッコを経てイスラエルを訪れた。その旅行と一部被ってしまうことになるが、現代史を辿るというテーマでまとめられる旅行があった。今僕らが生きているこの世界が、何故このようになったのか、今の直接的な土台となっている現代史にその答えを求め、訪ねていた。

僕が生まれた1980年代は、まだ東西冷戦の真っ最中だった。その時代にはアメリカに匹敵するソ連という国が存在した。ハリウッド映画と言えば反共映画だった。ソ連は今のロシア以上に恐ろしい国として描かれ、同時に我々一般庶民にとっては訪れることも困難な遠い国だった。いつの日かロシアを、ソ連の名残りを求めて訪れたいと思っている。

少年時代にベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終わった。昭和天皇の崩御もあった。それらの時代は今と全く別物のようでありながらも、今へ確実につながり、根付いている。僕たちが過ごした時代の前には何があったのか。今とどう違い、どのように関わっているのか。それを確かめずにはいられなくなり、答えを求め、各国を旅して周った。

  • 1953〜59年.キューバ革命
  • 1955〜75年.ベトナム戦争
  • 1968年.プラハの春
  • 1948年〜.中東戦争
  • 1992〜95年.ボスニア紛争
  • 訪れる意味
  • 旅行にはテーマを
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「他人の顔」感想・書評

これは主に風呂の中で読んだ。風呂に入ってる最中が暇で、人によってはテレビを置いたりスマートフォンを持ち込んでいる兵もいるかもしれないが、僕はもっぱら本、というわけでもなく、たまたまこの本を風呂の中で読む時間が長かっただけ。

  • 物語の概要
  • 再生し続ける物語
  • 人間関係を構築する絶え間ない応酬
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ヒトコトへの回答①

先日投稿フォームを設置して、「ちょっとそこのブログを見ているあなた」にひとことメッセージを募集したら何通か頂いた。順番に紹介していこう。

  • 1通目:行人
  • 2通目:仕事
  • 3通目:「カッコイイ」と「めんどくさい」
    • 「カッコイイ」と「めんどくさい」は両立できるのか
    • 「カッコイイ」と「努力」は両立なのか
    • 「かっこ悪」はイヤなのだけど、それなら必然的に格好良さとか努力とか必要なのか
  • 4通目:人付き合いが苦手
  • 5通目:生計
  • 6通目:海外での生活
  • 7通目:対話シリーズ
  • 8通目:パプリカ
  • ひとことどうぞ
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オーストラリアに着いた頃の話

去年の6月、僕はオーストラリアにいた。パースという街に降り立ち、その日泊まるホステルを空港で探していた。オーストラリアに来たのはなんとなくだった。ここに知り合いがいるわけでもなく、仕事のつてがあるわけでもない。流暢に言葉が話せるわけでもない。予定や計画があるわけでもない。目標もない。ただ闇雲に、次の行き先をオーストラリアに設定していた。なぜオーストラリアにしたかというと、ワーキングホリデーのビザが取りやすかったから。あまり考えずに決めた。

https://www.instagram.com/p/5n3LxvBvGD/

6月のパースは冬だった。天気が悪く、よく雨が降っていた。空港からバスに乗って市街へたどり着き、予約したホステルまでの道を歩いた。ホステルにいたのは外国人ばかり。受付はフランス人の女性で、フランス訛り独特の英語を話した。あまり上手くない。彼女もワーキングホリデーで来ており、フリーアコモデーションという形で受付業務をする代わりに、ホステルのベッドを支給されていた。つまり無給である。部屋へ案内されると、そこには6つのベッドがあり、衣服やゴミが床に散乱していた。部屋にいたのはフランス人の男性、韓国人の男性、後から仕事を終えて帰ってきたのがアイルランド人、カナダ人だった。

https://www.instagram.com/p/5oyg0XhvHO/

そんな部屋でもホステルの宿泊料は高く、働かないといけないと思った。働くにあたっては携帯と、銀行口座と、TFNという個人番号のようなものが必要になる。同室のフランス人に「何かいい仕事はある?」と聞いたら「建設業」と返ってきた。建設業か、やりたくないなー。しかしオーストラリアでも日本の建設業のバイトと同じで、時給がよい。ホステルに泊まっている(というよりはむしろ住んでいる)多くの欧米人が建設業で働いていた。もともとホワイトカラーだった人や、ラジオ局でDJをやっていた人なんかもみんな「お金がいい」という理由で建設現場に毎日通っているのだ。

とりあえず携帯を買ったりTFNの取得に手間取って2週間かかり、その間は住む家を探したりしていた。ずっとホステルに泊まるのはお金がかかり過ぎる。さらにゴキブリが出たり、Wi-Fiが遅かったりとあまり環境が良くなかったため、早く出たかった。働くには携帯番号とTFNがいるという言い訳を建前に、仕事を探すこともしていなかった。めんどくさくて、何より働きたくなかった。みんな文句を言いながらも、毎日素直に職場へ向かうのが理解できない。いや、そりゃあ生活費が必要だからだろう。そういった割り切りが必要なのは頭ではわかっている。それでも嫌で仕方がない。

https://www.instagram.com/p/6oSr8ABvBe/

住むところが決まり、TFNも携帯も手に入れて、とうとう仕事を探し始めた。レストランやホテル、建設現場などをいくつか回った。海外から来た多くの若者がそういう仕事に就いており、取り柄のない僕はそういう場所でも雇ってもらえなかった。理由はいろいろあった。冬で観光シーズンじゃないから今は募集していないとよく言われた。他には経験不足があった。トライアルで落ちたこともあった。こういう場合は普通、運と根気で乗り切るんだけど、気力が続かなかった。英語が話せて若くて力のあるヨーロッパ人でも、履歴書100枚ぐらい配るのは当たり前と言っていたのに、僕は10枚ほどで諦めた。やる気が続かない。

働いてどうするんだ、何のために働くんだ。オーストラリアまで来て学生のバイトみたいなことをやって、やりたくないことを、なんのために。生活のため、生活費を稼ぐため、そんなことのために、などと考えていると足が動かなかった。目標がない。目的がない。生活のためって、じゃあなんのために生活するんだって思えてきた。生きるため、なんのために生きるんだ。

家の前にある大きな公園には、アボリジナルピープルが集まっていた。彼らは毎日そこに集って、朝から夕方までピクニックのように過ごしていた。ときどき通りがかりの白人オージーに金をたかったりしている光景が見られた。この季節は、よく雨が降った。雨の日に彼らは一体どうしているのだろう。夜はどこで寝ているのだろう。オーストラリアの大平原で生活してたアボリジナルの人たちは、建物の中で暮らすという習慣がなく、室内という狭い環境にいると閉所恐怖症に陥ってしまう、という話を聞いたことがある。

https://www.instagram.com/p/6pMiqaBvJ0/

彼らは一体何がしたいんだろう。僕は何がしたいんだろう。仕事も見つからないままそんなことばかり考えていた矢先、一人の人と話したことがきっかけで、一緒に旅行することになった。遠くスペインから中東にかけての長期旅行だ。しかし僕にはまとまったお金がない。向こうもあいにく、旅行の日程を設けるために時間がかかるということだった。その期間は半年。半年かけて、この旅行のためだけにお金を貯めようと思った。僕は郊外にある、日本人が経営する農場に連絡した。街から50km以上離れたところにある農場で、もしここで働くとなれば、また住む場所も何もかも全て変わることになるため、あとに連絡する先として残していた。ここで引き受けてもらえなければ、別の職場をあたろうと思った。

農場では今働く人を募集していなかった。しかし2週間後でよければ連絡してくれたらいいと言われた。その間にも他の求人に応募した。履歴書を配り、メールを送り、応募はしたが音沙汰がなく、再び農場へ連絡した。とりあえず引き受けてくれるということだった。短期雇用でまかなっている職場では、戦力にならないとわかると2、3日で簡単にクビになる。なんとかしがみつこうと思った。

https://www.instagram.com/p/6Z4zUphvNj/

もし旅行が決まっていなければ、僕はそのまま日本に帰っていたかもしれない。事実、旅行が終わってからまたオーストラリアに戻ったけれど、働くこともなくブラブラしていただけで、1ヶ月のビザを残して帰国してしまった。目的意識を持つということ、具体的な目標を持つだけでこれだけ違う。具体的な目標さえあれば、歩を進めることができる。それはある種のまじない、暗示のようなものに近い。意識すること、自分を騙すことさえできれば何でも暗示になり、なんだって目的になる。それが僕のように旅行といった一過性のものではなく、何か未来に繋げることができれば尚一層良いと思う。目標が次の目標に繋がり、連鎖的に未来を描けたら、ずっと前に進んでいられる。その"仕組み"が大事であり、中身はなんだっていい。何からでも学ぶことができ、何からでも気づくことはあり、何からでも未来に繋がる。夢や未来は結局、なんだって描ける。

https://www.instagram.com/p/5Qz5F7BvCo/

ネットニュースで振り返る2016年

2016年も残り少なくなってきました。前回の岡田斗司夫ゼミを見ていると「私が選ぶ2016年10大ニュース」という内容をやっており、真似しようと思いました。自分の場合はネットから気になったものを、10大と言わず1月から順にさかのぼって振り返ってみようと思います。全てがニュースというわけではなく、ネットで話題になったトピックを取り上げる形になるため、あれが入ってないこれが入ってない、何でこれが入っているのか、という個人の嗜好満載になります。では早速見ていきましょう。

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「素晴らしき日曜日」感想・評価

先日、黒澤明の映画について書いた日記にコメントが有り、「素晴らしき日曜日」という映画をおすすめしてもらった。黒澤明の映画はサムライ映画だったりシリアスな映画ばかり見ていたが、今回見た「素晴らしき日曜日」は言わば日常系だった。 どんな映画か全然知らずに見たから良かった。Wikipedia等にはネタバレがあるので、ここにはネタバレにならない程度の概要と感想を載せておこうと思う。

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BuzzFeedに載ってた「パパ活女子大生」は労働者の鏡

マジ偉いと思った。俺には絶対できない。

「私にはパパが4人いる」 月100万円を手にする“パパ活”の実態に迫る

詳細は記事を読んでもらったらいいと思うけど、内容は16歳の頃からおっさん4、5人を回して月100万以上稼いでる女子大生(20)へのインタビュー記事。パパ活って言うらしいですよ、いましたねー昔から、愛人契約で月20万とかやってる知り合いいました、それの強化版でしょうか。

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