理性と感情と、理想の人生

理性とか感情とか、こういうテーマについて考えていたのは今に始まったことではなく、前々からブログ上でもよく触れていた。そして最近また触発されることがあり、再び頭の中をめぐらしていた。理性や感情が、人生にどういった影響を与えるか。理性や感情とどのように向き合い、付き合っていくことが理想の人生へと繋がるか。人生とは、運や環境もあるが、少なくとも自分で歩む部分においては行動の結果であり、また結果の積み重ねでもある。ではその行動は、どこから生まれたのか。言い方を変えれば、行動を決めたのは何か。行動の根拠として、理性と感情という二つの大きな基軸がある(思考と欲求と言ってもいい)。

理性と感情

理性と感情の違いはなんなのか、あるいは理性的行動と感情的行動の違いは何なのか考えていた。全く内容を異にするようなその二つの行動、しかし行き着く先は、意外と同じだった。それはいずれにおいても、喜びと安心(もしくは安らぎ)である。理性的な行動であれ、感情的な行動であれ、人間の行動の行き着く先には喜びと安心しかない。喜びとは、楽しさ、おもしろさ、ときめき、幸福、快楽にあたる。安心とは、不快やストレスを避けること、痛みや不安を取り除こうとしたり、予想される不安や不幸、痛みを退けることによって得られる感覚を指す。理性的であれ、感情的であれ、行動の行き先には喜びと安心という二種類の結果しかない。ドーパミンとセロトニンです。

理性と感情の違い

行き先が同じであれば、再び理性と感情の違いはなんなのか。それは時制の違いだと思った。今この瞬間の喜び・安心を優先するのが感情であり、未来、将来における喜び・安心を優先するのが理性である。例えば「怒る」と「叱る」の違いなんていうのがときどき話題になるけれど、「怒る」は感情であり「叱る」は理性と見て取れるんじゃないだろうか。現在の不快を解消するための感情的行動が「怒り」、相手が未来に被るであろう不幸を取り除こうとする予防的行為が「叱り」だとか。

理性的行動、つまり未来における喜び・安心に繋がる行動は、現在において苦痛であることが多い。勉強や基礎トレーニングであったり、貯金にしろあとで役に立つことは大抵その場においてめんどくさい、楽しくない、しんどいことが多い。そして、それらを「不快」と認識することによって感情的に不快を取り除く行動を取ってしまったりする。理性的には未来に役立つと認識していても、感情的に現在の不快を取り除こうとする行動が優先されることがある。現在を優先するか、未来を優先するか、これが同じ喜び・安心のゴールを持つ、理性的行動と感情的行動の違いである。

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理性的か、感情的か。喜び指向か、安心指向か。

ある特定の状況で、人が理性的な行動を取るか、もしくは感情的な行動を取るかは、著しい個人差がある。中身まで考えるとそれこそ千差万別になってくる。僕の場合を考えてみる。

僕の場合、傾向として欲がないとか行動力がないとか言われることが多い。それが何故かというと、喜びの方向で働くセンサーがバカになっているからじゃないかと思う。何をしてもあまり喜びを得ることができない。だから理性的であれ感情的であれ、喜びを得ようとする方向に行動が働かない。それに引き換え、安心については過剰に反応する。特に現在における不快を回避しようとする行動が著しく、僕の代表的な行動は大体において現在の安らぎを求め、不快を取り除こうとする感情的安心指向な行動となる。例えば未来の幸福に繋がるような行動は、現在の安らぎを阻害するということで排除される。現在の喜びにつながるような行動はとても規模が小さく、滅多に発動しない。現在の安心を求める比重が大きすぎて、それを損なうリスクがある行動は、感情的であれ理性的であれ、まず候補に挙がってこない。

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何をもって喜びとするか、安心とするかは各人によって違うため、人と人を比べるのは難しい。しかし自分の行動指針において、何が一番重視されているかを考えてみることは、自分を客観的に見ることに繋がるのではないだろうか。

具体的行動事例

そして、自分の行動がどこに当てはまるか具体的に考えてみると、自分という人間がより客観的に鮮明になる。一つの行動が全てこの四隅いずれかの枠内に全て収まることは稀だろう。勉強が楽しい人はその割合に応じて、縦線の上に円が置ける。今勉強は楽しくなくても、勉強をすることで将来の楽しみと現在の安心を得られる人は、右上と左下に跨った楕円になる。円の大きさは重要度を現しており、具体的に行動を起こす頻度にも繋がる。自分にはどんな具体的要素が、どういう形で配置できるだろうか(尚、未来とか将来というのは実際の未来や将来ではなく、飽くまで未来に対する予測、期待でしかない)。

一般的な例
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僕の例
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革命家
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幸福な人生を送るには

幸福な未来とは、言うまでもなく右側にある。つまり理性的な行動を続けることが、幸福な未来に繋がる。反対に、左側は幸福な現在に繋がる。感情的な行動をとることが、幸福な現在を作っている。それに加え、過去における理性的な行動も現在の幸福を作った重要な要素である。では、幸福な人生とは一体なんだろうか。もちろん、現在も未来も充実していることだ。未来のために現在を犠牲にすることも、現在のために未来を犠牲にすることも、幸福な人生とは呼べない。常に幸福であることが望まれる。

現実にはそんなこと起こり得ない。自分の人生を全て自分で左右できるわけもなく、運や環境の要因もあって幸福だけの人生を送ることはできない。しかし指向性として人生の幸福を目指すのが、人間の人間らしい生き方と言える。目指すところは、右側も左側も枠いっぱいに要素が埋まっている状態だ。そのためにはどうすればいいか。仕事も趣味も大いに楽しむ、でもいいが、いろいろなことを同時に頑張るのは大変で集中できず、それぞれの要素が衝突することも多い。一番結果が期待できるのは、一つの円を大きくすること。

一つの理想形
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例えば再び勉強を例にする。未来における幸福のために始めた勉強が、現在の段階で面白くなってきたとしたら、それは上の枠で横に広がったことになる。それがもし趣味や娯楽より大きければ、趣味や娯楽の時間を差し置いてでも勉強に取り組むだろう。これで現在でも未来においても楽しい人生が期待できる。現在における喜び、つまり感情的な喜びというのは、意欲と密接につながっている。本来は安心を得るための行動も、現在の楽しみに結びつけることができれば円は次第に大きくなり、行動においての優先順位が上がる。

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例えば付き合う相手を選ぶとき、将来の事を考えて選ぶと理性的な判断が必要になる。現在のことだけ考えていれば感情的判断でいい。両方を考えるということは、感情と理性両方において判断するということになる。今現在付き合っている人との将来を考えだしたら、理性的に別れたり歩み寄ったり行動を変えることになるだろう。将来のことを考えて付き合った人との現在を考えだしたら、感情的に別れたり気持ちが入ったり行動を変えることになるだろう。

自分を騙すということ

理性と感情の両方の視点、もしくは右から左、左から右への誘導が必要になってくる。場合によっては理性で感情を騙すことも必要になり、これが人生を大きく左右する。理性による感情のコントロールとは、理性で感情を誘導する、すなわち感情を意図的に騙すということに他ならない。これを上手くこなす人が人生で成功している。勉強やトレーニングといった、本来なら大変で苦痛であるはずのことを、うまく感情を騙すことによって喜びに変え、現在の喜び、楽しみをそのまま未来の幸福に繋げている。

現在というのは、現在における自分の行動に左右されるためわかりやすい。感情が即現在に反映される。しかし未来はそうではない。未来を変えるのは、未来におけるその場の行動と、それ以上に現在における理性的な行動、未来を見据えた行動が未来を大きく左右する。未来は現在から用意することができる。未来に向けてどれだけ用意をしてきたか否かが、未来における決定的な差となってくる。いざその未来が来てみると、用意してきた者としてこなかった者とでは、その場の行動では取り返しがつかないほど大きな差が拡がっている。しかし、そんな決定的な未来のために現在を犠牲にするのは、やはり馬鹿らしいことなのだ。ここで、未来のための理性的な行動を、いかにして現在の喜びに結びつけるかが重要になってくる。それが理性による感情のコントロールであり、誘導であり、感情を意図的に騙すという部分になる。

すごく簡単な例で考えてみると、歯磨きがある。歯磨きが感情的にめんどくさいとしよう。理性的には虫歯にならないために歯を磨いておくべきである。これは現在のめんどくささと、未来の虫歯予防が対立関係にある。理性で感情をコントロールするということは、未来における虫歯予防のために現在の歯磨きを「めんどくさい」から「楽しみ」「すっきり」に変えることを意味する。歯磨き粉のフレーバーを利用したり、歯磨きそのものを感情的な肯定に、意図的に誘引することが、理性による感情のコントロールである。

逆のアプローチもある。現在感情的に楽しいことを、未来の幸福に結びつける努力だ。これはいかにして感情的な喜びを維持し続けるかがポイントになる。スタート地点が感情か理性かの違いだけであり、現在と未来を結びつけるためには両方の視点が必要である。

幸福な人生を送るために大切なことは、未来を見据えて円を大きくする努力を怠らないこと、そしてさらに、その行動を現在の感情、喜びに結びつけること。感情と理性のバランスを取るということは、どちらかに偏らないようにバランスを取るという意味ではなく、両方をいかにして結びつけるかということになる。

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