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入れ忘れている物はあるのか。気になって、一度全部出して確認すると、また一つ入れ忘れる。指折り数えるが、そのうちもう足りないものではなくなる。背負うのをやめ、表へ出る。すぐまた引き返す。その繰り返し。行ったり来たりウロウロしていた。そこに歩むべき道はなし、足はなし、踏み込む地面なし、摩擦の抵抗なし、すかすかと足踏み。イメージだけで空を飛ぶあひるのように、真剣に考えたことがあるのか。

出会う者はみな笑顔を向けてくれる。目が合わない。背中の形が違う。お互いに納得する。「いい日でしたね」それを僕らは正しき伝統だと言える。やさしさだと。石の形をしたら埋まってしまうから、なるべく早く通り過ぎる。わきまえている。