オーストラリアに着いた頃の話

去年の6月、僕はオーストラリアにいた。パースという街に降り立ち、その日泊まるホステルを空港で探していた。オーストラリアに来たのはなんとなくだった。ここに知り合いがいるわけでもなく、仕事のつてがあるわけでもない。流暢に言葉が話せるわけでもない。予定や計画があるわけでもない。目標もない。ただ闇雲に、次の行き先をオーストラリアに設定していた。なぜオーストラリアにしたかというと、ワーキングホリデーのビザが取りやすかったから。あまり考えずに決めた。

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6月のパースは冬だった。天気が悪く、よく雨が降っていた。空港からバスに乗って市街へたどり着き、予約したホステルまでの道を歩いた。ホステルにいたのは外国人ばかり。受付はフランス人の女性で、フランス訛り独特の英語を話した。あまり上手くない。彼女もワーキングホリデーで来ており、フリーアコモデーションという形で受付業務をする代わりに、ホステルのベッドを支給されていた。つまり無給である。部屋へ案内されると、そこには6つのベッドがあり、衣服やゴミが床に散乱していた。部屋にいたのはフランス人の男性、韓国人の男性、後から仕事を終えて帰ってきたのがアイルランド人、カナダ人だった。

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そんな部屋でもホステルの宿泊料は高く、働かないといけないと思った。働くにあたっては携帯と、銀行口座と、TFNという個人番号のようなものが必要になる。同室のフランス人に「何かいい仕事はある?」と聞いたら「建設業」と返ってきた。建設業か、やりたくないなー。しかしオーストラリアでも日本の建設業のバイトと同じで、時給がよい。ホステルに泊まっている(というよりはむしろ住んでいる)多くの欧米人が建設業で働いていた。もともとホワイトカラーだった人や、ラジオ局でDJをやっていた人なんかもみんな「お金がいい」という理由で建設現場に毎日通っているのだ。

とりあえず携帯を買ったりTFNの取得に手間取って2週間かかり、その間は住む家を探したりしていた。ずっとホステルに泊まるのはお金がかかり過ぎる。さらにゴキブリが出たり、Wi-Fiが遅かったりとあまり環境が良くなかったため、早く出たかった。働くには携帯番号とTFNがいるという言い訳を建前に、仕事を探すこともしていなかった。めんどくさくて、何より働きたくなかった。みんな文句を言いながらも、毎日素直に職場へ向かうのが理解できない。いや、そりゃあ生活費が必要だからだろう。そういった割り切りが必要なのは頭ではわかっている。それでも嫌で仕方がない。

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住むところが決まり、TFNも携帯も手に入れて、とうとう仕事を探し始めた。レストランやホテル、建設現場などをいくつか回った。海外から来た多くの若者がそういう仕事に就いており、取り柄のない僕はそういう場所でも雇ってもらえなかった。理由はいろいろあった。冬で観光シーズンじゃないから今は募集していないとよく言われた。他には経験不足があった。トライアルで落ちたこともあった。こういう場合は普通、運と根気で乗り切るんだけど、気力が続かなかった。英語が話せて若くて力のあるヨーロッパ人でも、履歴書100枚ぐらい配るのは当たり前と言っていたのに、僕は10枚ほどで諦めた。やる気が続かない。

働いてどうするんだ、何のために働くんだ。オーストラリアまで来て学生のバイトみたいなことをやって、やりたくないことを、なんのために。生活のため、生活費を稼ぐため、そんなことのために、などと考えていると足が動かなかった。目標がない。目的がない。生活のためって、じゃあなんのために生活するんだって思えてきた。生きるため、なんのために生きるんだ。

家の前にある大きな公園には、アボリジナルピープルが集まっていた。彼らは毎日そこに集って、朝から夕方までピクニックのように過ごしていた。ときどき通りがかりの白人オージーに金をたかったりしている光景が見られた。この季節は、よく雨が降った。雨の日に彼らは一体どうしているのだろう。夜はどこで寝ているのだろう。オーストラリアの大平原で生活してたアボリジナルの人たちは、建物の中で暮らすという習慣がなく、室内という狭い環境にいると閉所恐怖症に陥ってしまう、という話を聞いたことがある。

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彼らは一体何がしたいんだろう。僕は何がしたいんだろう。仕事も見つからないままそんなことばかり考えていた矢先、一人の人と話したことがきっかけで、一緒に旅行することになった。遠くスペインから中東にかけての長期旅行だ。しかし僕にはまとまったお金がない。向こうもあいにく、旅行の日程を設けるために時間がかかるということだった。その期間は半年。半年かけて、この旅行のためだけにお金を貯めようと思った。僕は郊外にある、日本人が経営する農場に連絡した。街から50km以上離れたところにある農場で、もしここで働くとなれば、また住む場所も何もかも全て変わることになるため、あとに連絡する先として残していた。ここで引き受けてもらえなければ、別の職場をあたろうと思った。

農場では今働く人を募集していなかった。しかし2週間後でよければ連絡してくれたらいいと言われた。その間にも他の求人に応募した。履歴書を配り、メールを送り、応募はしたが音沙汰がなく、再び農場へ連絡した。とりあえず引き受けてくれるということだった。短期雇用でまかなっている職場では、戦力にならないとわかると2、3日で簡単にクビになる。なんとかしがみつこうと思った。

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もし旅行が決まっていなければ、僕はそのまま日本に帰っていたかもしれない。事実、旅行が終わってからまたオーストラリアに戻ったけれど、働くこともなくブラブラしていただけで、1ヶ月のビザを残して帰国してしまった。目的意識を持つということ、具体的な目標を持つだけでこれだけ違う。具体的な目標さえあれば、歩を進めることができる。それはある種のまじない、暗示のようなものに近い。意識すること、自分を騙すことさえできれば何でも暗示になり、なんだって目的になる。それが僕のように旅行といった一過性のものではなく、何か未来に繋げることができれば尚一層良いと思う。目標が次の目標に繋がり、連鎖的に未来を描けたら、ずっと前に進んでいられる。その"仕組み"が大事であり、中身はなんだっていい。何からでも学ぶことができ、何からでも気づくことはあり、何からでも未来に繋がる。夢や未来は結局、なんだって描ける。

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タックスリターンのお金を日本に送金できない

オーストラリア絡みの日記もこれで最後かなーと思っていたらトラブル発生。トラブルというか、不注意によるミス。重大なミス。今年の6月頃、オーストラリアのワーキングホリデーを終えて日本に帰国した。タックスリターンという税金の返金手続きを現地で済ませ、向こうの口座に寝かせていた。当時オーストラリアドルのレートはあまりに悪く、レートが上がってから円に両替すればいいやと思って何も調べずそのまま帰国した。これが全ての間違いだった。

  • カレンシーオンラインが使えなかった
  • オーストラリアの銀行から送金できなかった
  • おまけ:スーパーアニュエーション
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海外から帰国して免許の更新ができなかった

最悪だ。海外渡航中に期限が切れても3年間は再取得できると思っていた。帰国して運転免許試験場に行ったら「残念ですけど、これは道路交通法の落とし穴なんです」と言われた。続けて「もう一回教習所に通ってもらうしかありません」と言われた。稀にこういうことがあるらしい。大学生の時に30万以上(自動二輪も含む)自腹で払い、苦労して取った免許が水の泡となってしまった。一応詳しく話を聞いたからここに残しておく。

  • 3年間はウソなのか?
  • 落とし穴の1日
  • どうにもなりません
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カナダとオーストラリア、どちらが良いか?

ワーキングホリデーを考えるにあたり、カナダにするかオーストラリアにするか迷う人は多い。ワーキングホリデーの渡航先として一番人気があるのはイギリスで、日本人の枠が1,000人しかないため毎年すぐに締め切られ抽選になる。なぜイギリスが人気かというと、理由は3つある。

  • イギリス人気の理由
    • 本場の英語
    • 2年滞在できる
    • ヨーロッパ旅行の拠点になる
  • イギリスを除けば
  • オーストラリア?カナダ?
    • 英語を学ぶなら
    • お金を稼ぐなら
    • 旅行するなら
    • 気候
    • 物価
    • 外国人と付き合いたい?
  • まとめ
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海外で働くために必要なのは英語ではない

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今ワーキングホリデーでオーストラリアにいます。今回はワーキングホリデーを考えている人や海外で働きたいと思っている人が事前に知っておいた方がいいと思うことを書き残しておきます。オーストラリアでは多くの日本人がワーキングホリデーで働いています。そのうちの大多数が「ジャパレス(日系レストラン)」もしくは「ファーム(農場)」で働いています(僕自身もファームで5ヶ月働いていました)。その2つが悪いとは言いませんが、カフェでもアパレルでも多くのローカルジョブがある中で、何故こうも偏っているのか。疑問を持ったことはないでしょうか。英語ができないから?それもあるでしょう。しかしそれと同じぐらい重要になってくるのが経験です。未経験は雇われません。

  • どうやって手に職つけるか
  • 未経験でもできる仕事
  • 何をやりたいのか考える
  • 裏ワザ
    • あしたはもっと遠くへいこう
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バイロンベイ、ニンビン、サーファーズパラダイス③

前回の続き

目を覚ますとティピの中には他の人がいた。自分以外に一人だけ、おっさんであり言葉が通じる感じではない。その人はリュックを置いて出ていった。僕は共用施設へ行ってシャワーを浴びたり、やることがなくてうろうろしていた。ティピには当然ながらwi-fiもない。ロビーにはあるかもしれないが繋いでいない。宿泊客は10人ぐらいいただろうか。ここでも無料で宿泊する代わりに掃除やシーツの交換などの業務を手伝う仕事を募集していた。最長で3週間までいられる。こういうのを日本人の間ではフリアコ(free accommodation)って呼んでいるらしく、パースで一緒に働いていた人の中に、フリーアコモデーションでここに滞在していたことのある人がいた。

「自然が多くていいところだよ。一週間ぐらいはいたら?」

そう言われたが宿泊代がいらないとはいえ、この何もやることがない場所で一週間も過ごすというのは厳しい。無理すれば堪えられると思うが、そんなことをする意味が見出だせない。明日には去ろうと思い、再びティピへ戻って寝た。もう寝るしかやることがない。

しかしそう何度も何時間も寝られるわけではない。ティピから出て、座りながら空を眺めたり暗闇の写真を撮ったりしていた。

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バイロンベイ、ニンビン、サーファーズパラダイス②

前回の続き

バイロン・ベイの日々というのは、あまり書くことがない。2日目、朝食をとった後ロビーで待つ。部屋を移らないといけないため、次の部屋が準備されるまで待機していた。ここのロッカーは有料であり、お金を払ってまで荷物を預ける気にはなれない。そのあたりに置いといても良かったんだけど、急いだところでやることがない。部屋の準備が終わり荷物を置いた。今日は灯台まで歩こうと思った。片道30分ほどのトレイルコースがあり、灯台へ続く道にオーストラリアの最東端ポイントがあるとか。

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バックパッカーズを出て歩いていると「図書館はどこか知ってる?」と話しかけられた。「さあ、知らない」むしろバイロン・ベイに図書館なんてあるのか、この小さい町に。そう思いながら灯台の方向へ歩いていると、あった。図書館だった。すぐ近くだ。先ほど話しかけてきた人はもう見えない。今日はまだイースター連休が続いており、図書館は休みだった。明日見に行ってみるか。

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1日目

「部屋を探しているそうだな。うちはどうだ?週$135で安いぞ」

「場所は?」

「ショッピングセンターの近くだ。空港まで迎えに行ってやろうか?$40でどうだ」

「バスなら$20だ」

夜1時、受付が開いているホステルに泊まった。

「朝食はパンケーキが無料だよ」

4人部屋、一人の男性が寝ていた。シャワーも浴びず服も着替えず靴下だけ脱いでベッドに入った。朝起きると彼はいなくなっていた。パンケーキは見かけなかった。

霧のような雨が降る。トラムに乗り、移動する。

「チェックインは2時からだ」

まだ11時だった。

2日目

近くの図書館へ行った。明日から3週間閉館するそうだ。

仕事を募集している。携帯に連絡が入った。

「マッサージなんだが、一時間$22でどうだ」

「やったことないけれど大丈夫?」

「まずは俺のマッサージを受けて、覚えてもらう。裸になるが問題ないか?風呂は入ったか?白い靴下を履いているか?今から来れるか?」

3日目

部屋を見に行った。2LDK、2部屋に2段ベッドが4台ある4人部屋、8人居住、ボロくて汚い。一週間あたり$99、貸主のマレーシア人はあまり英語が話せない。

「bond(預り金)は?」

「いらない」

「最低居住期間は?」

「一週間。この家はアジア人しか許可していないんだ、日本人も3人いる。他はコリアン、タイワニーズ、以前住んでいた人も日本人が多い」

壁には日本地図が貼られ、各所に矢印と名前が書かれている。これはなんのためにあるのだろう。ただ地図を眺め、今まで住んだ人間に思いを馳せるのが好きなのかもしれない。

バイロンベイ、ニンビン、サーファーズパラダイス①

2016年3月、直前に20日間という短い期間でスペインやモロッコ、イスラエルなんかを周る旅行を終え、燃え尽きてしまった。そして何事もやる気が起こらない状態でオーストラリアに戻ってきた。気分が乗らない。家のないこの国で引きこもることもできず、路上生活の気概もない。オーストラリアに滞在できるビザはあと3ヶ月残っている。お金も少しだけ残っている。やることはない。旅行を終えたばかりではあるが、また旅行感覚で移動してみようと思った。去年オーストラリアのパースに来て、2ヶ月間ダラダラ過ごした後に近郊の農場で5ヶ月働いていた。オーストラリアはパース近郊しか知らない。それ以外には3年ほど前に3日間ケアンズにいただけ。オーストラリアという国についてそれほど関心があるわけではないにしても、今回ワーキングホリデーで来てさすがにそれだけで帰るのはどうかと思った。日本に帰るまでに、シドニーなどの有名な街がある東海岸の方へ寄っておこうと思っていた。この機会に行ってみるのもいいかもしれない。オーストラリアで有名なのは海や動物、エアーズロックなどの自然公園といったところか。うーん、やはりどれも興味が無い。行き先を決められないでいると農場で一緒に働いていた人は「バイロンベイが良かった」と言っていたからとりあえず行ってみることにした。

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オーストラリアで5ヶ月働いて貯金100万円

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煽りタイトルっぽい。この金額はオーストラリアであれば特別多い額ではない。もっと稼げる場所もあり、これぐらいが大体の標準となる。オーストラリアでは最低時給が$17であり、普通のバイトで月収30万円ぐらい稼げたりする。僕が5ヶ月通っていた農場では時給$21(約1,700円)であり、先日バイト生活が終わって最終的な貯金が約55万円(A$6,500)、後のタックスリターンで返ってくるタックスが約45万円(A$5,500)となった。去年までのカナダ生活で70万円近く浪費したため少しは元に戻せたかもしれない。

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パース近郊のオオクマファームで働いていた

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2015年の冬から夏にかけて、パース近郊にあるオオクマファームというトマト農場でお世話になっていた。ここは日本人の大熊さんが経営している農場であり、ワーキングホリデーで多くの日本人が働きに来ているため西オーストラリアに来る日本人の間では有名らしい。僕がここの事を知ったのは2014年にワーキングホリデーでパースに来ていた前原さんという人のブログからだった。前原さん自身はオオクマファームで働いていなけれど、知り合いが働いていたということでブログに紹介されていた。

読売テレビ | グッと!地球便

大熊さんがテレビ取材された記事

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2015年12月の出費を振り返る in Australia

前回11月の家計を振り返った時、あまりにも支出が少なかったため「たまたまこの時だけじゃないの?」という嘘八百を払拭するために12月も振り返ってみようと思った。とはいえ12月、年末、出費のかさむ時期だ。イベント事に縁がないとは言えど、付き合いに駆り出されることもあり11月に比べたら何かと出費がかさんだだろう。ヘタすると倍以上じゃないだろうか。そんなことも、カードの履歴を振り返ってみれば一発で正確にわかります。はい、2015年の12月は一体どんな家計だったのでしょうか。

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5ヶ月目でもう働きたくない

ずっとそうだったと言えばそうなんだけど、もうすぐ辞めるということもあり「働きたくない度」がピークに達している。しかしそれは僕に限った話ではなく、周りにいる人達がみんな辞めたがっている。実際辞めることが決まっている人も多く、今週に2人、来週にも一人、再来週に一人、そして3週間後には僕が辞める。オーストラリアにおけるワーキングホリデーの労働では短期で辞める人が珍しくなく、人が入れ代わり立ち代わりしている。そんな中でみんな辞めたい辞めたいと言っており、特に長い(5ヶ月でも長い)人は限界に達している。労働内容がすごく嫌というわけではなく、一緒に働いている人がすごく嫌というわけでもなく、労働環境が悪化したというわけでもない。何故こんなに嫌気が蔓延しているのかと言うと、一つは飽きであり、他には時期がある。

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オーストラリアでの生活費はどれぐらいか

今旅行のために着々と貯金しているところなんだけど、では生活費としては実際どれぐらいかかっているのだろうか。カナダにいたときも計算していたが、ここオーストラリアでも計算してみようと思う。基本的にカード払いしかしてないため、履歴を辿れば収入も支出も簡単に計算できる。

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