迷走する人へ、「間違う力」と「アスクル」感想・書評

欲しいものリストから頂いた中で紹介していなかった「放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法」ファンの間では通称「アスクル」と呼ばれている本を読んだ。その次に人から借りた「間違う力」を読んだ。この二冊はセットで読んでしまっていい内容だった。どちらを先に読めばいいかというと「間違う力」だと思うが僕は逆の順番で読んでしまったから、どちらでもいいと言えばどちらでもいい。

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間違う力

「間違う力」は辺境作家、高野秀行がいかにしてオンリーワンな作家になってきたかという工夫の手順を書いた本だった。高野さんいわく、自分には感性とか才能がなく、そういったものを最早信じていもいないということだ。言うなれば「究極の普通」だった自分が、普通という立場から感性も才能もある一流の人たちと渡り合うためにどのようなサバイバルをしてきた、という本になる。行き着いたのがこのタイトル「間違う力」だった。これは何も「失敗は成功のもと」だとか「間違うことを恐れずに」とかそういう努力指南の本ではない。世間的には「間違ったやり方」だけど、その間違って失敗したからこそ面白いことや発見があり、今があるという経験談だ。

しかも高野さん本人は決してそれを「間違い」だと思っていない。その時に考えつく、できる限りの最善であり、合理的でかつ楽をするための方法だと思って取り組んできた。一般的には「間違い」と言われてきたが、なぜ高野さんいわく「間違いではない」のか。「間違う」ことによって得たもの、失ったもの、見えてきたもの、面白かったことなど、間違うしかなかった著者が間違い続けたその工夫と理屈を、過去の経験を遡りながら解説している。こんな本の紹介だと「読んで意味あるのか?」「その本大丈夫なの?」と思うだろう。高野さん自身は

『間違う力』は、今となっては「書いたことが間違いだった」と思う本なのだが、

とおっしゃっている。しかしブログによると「実に嬉しいことがあった」と報告されている。

あるとき、同じ人事部のメンタルヘルス担当の課長に私の『間違う力』を渡したところ、
課長がそれを10冊購入し、精神を病んで求職中の社員10名に送った。

すると、なんと10人中8人が読了後、会社に復帰し、
しかも社内の評価(恐ろしいことに学校みたく5段階評価になっているという)が、休職前は1か2だったのが復帰後は4か5という高評価をあげた。
それも他の社員と同じようにしゃかりきに働くのではなく、自分のペースで働いて好結果を生みだしているという。

一般に精神を病んで休職後、職場に復帰するのは3割程度で、ましてや評価をあげるなどよほどのことがないとありえないらしい。
なのに、8割が理想的な復帰を遂げた。

Sさんによれば、その人たちは「『間違う力』を読んで気が楽になった」と語っているという。

高野本の未知なる領域

これは何も宣伝文句として書かれたわけではなく一エピソードに過ぎないが、このブログ記事を読んで断然欲しくなった。僕はもう会社員ではなく鬱病でもないから関係ないんだけど、実に興味深い話ではないか。そして実際読んでみた。本の内容は前述した通りで、僕自身これを読んで思ったのは「こういう考え方もあるのか」ということだった。こういう考え方を予想できなかった時点で、自分には柔軟性が決定的に欠けていると感じた。高野さんは今まで生きてきた中で、早々に自分の感性や才能に見切りをつけている。そして自分がやれるもっとも楽な、面白い、見返りもあるであろう方向を突き進んできた。それはオンリーワンになろうなんて思ってやっていたわけではなく、あまりにも平凡な自分が楽しく生き残るための手段を模索した結果である。

この本は書き連ねられたエピソード、経験談を読んだだけでも面白かったし、参考になるような考え方、持論もたくさんある。ただ、正直に言うと少し物足りない。高野さん自身が自分の生き方を肯定しきれていない部分があり、そもそもこの本は編集者に依頼されたから頭を捻って書いただけであり、及び腰だったせいもあるだろう。しかし、この「間違う力」を補強するような本がある。それが「アスクル」だ。

ここで「アスクル」がある

アスクルこと「放っておいても明日は来る」は、上智大学で高野さんが受け持った「東南アジア文化論」という講義をまとめた本である。講義とは言っても毎回高野さんの知り合いを一人ずつ、合計8人ゲストに招き、どういった経緯でアジアの国々へ渡り、生活し、活躍してきたかという経験を語る講義だ。高野さんの人生経験から綴られた「間違う力」を補強するような形で、他の破天荒な8人の人生経験という事例を知ることができる。そこにはもちろん運や才能で切り開かれた事例も多く、高野さんの「間違う力」と同じような内容ばかりではない。あらゆる人があらゆる経緯をたどり、出会いや発見、きっかけを元に活き活きと人生を前に進めていく様子が伺える。分野も経歴も8人8様で似たような話は全然ない。共通する点と言えば、全員がフリーもしくは起業家だったというところ。どういう人がゲストで招かれていたか、参考として目次を貼っておこう。

好きな"場所"を仕事にしてみる/二村聡(開発に頼らないジャングルのビジネスを●マレーシア)
人生、何事も結果オーライ/下関崇子(本場でプロのムエタイ選手●タイ)
情熱は案外身近なことで燃やせる/井手裕一(地元発の映画プロデュース●沖縄)
危険でもとにかく真っすぐに進む/金澤聖太(辺境ツアーの現地手配業●ミャンマー)
楽しいだけだとつまらなくなる/モモコモーション(多国籍バンド/サウンドクリエイター●タイ)
こりない思い付きこそ人生そのもの/黒田信一(作家/ライター/カフェ経営●ラオス)
チャンスは「面白そうじゃん」の方向に/野々山富雄(ネイチャーガイド●屋久島)
スタートはいつだってゼロからである/姜炳赫(翻訳エージェント●韓国)

この講義は元から本として出版される予定で初められたものではなかった。しかし講義が大変好評であり、他学部や他大学からもぐりの聴講まであったそうだ。そして受講していた学生からのアンケートでは「就活に疲れて癒される」という感想が多かったという。これは本にしたほうがいいという意見があり、録音されていた講義の内容を元に書籍化された。

講義は口頭であるため、内容は対談本のように高野さんが司会進行、質問や合いの手を入れながらゲストの話が流れるように進んでいく。講義自体はそれだけで終わるが、その次のページで各ゲストの話を高野さんが分析してまとめ、どの部分に注目すべきなのかポイントをおさえてくれている。ゲストの話は面白い話として読み、学ぶべき重要な部分は高野さんの解説で復習するというよくできた構成になっている。

面白ければそれでいい

高野さんの「間違う力」と「アスクル」の両方を読んでも参考にならないと思う人や内容が薄いと思う人はいるかもしれないが、単純に読み物として面白いので人生とか就職とか重くとらえずに気軽に読んでみればいいと思う。面白ければそれでいい、というのは本のことだけでなく、高野さんや「アスクル」に登場されるゲストに共通した人生の捉え方を象徴している。これらは人によっては大いに参考になる本だろう。

間違う力 オンリーワンになるための10か条 (Base Camp)

間違う力 オンリーワンになるための10か条 (Base Camp)

 
放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法

放っておいても明日は来る― 就職しないで生きる9つの方法

  • 作者: 高野秀行,二村聡,下関崇子,井手裕一,金澤聖太,モモコモーション,黒田信一,野々山富雄,姜炳赫
  • 出版社/メーカー: 本の雑誌社
  • 発売日: 2009/11/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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