「マンガ お金は寝かせて増やしなさい」を読んだ

投資本です。インデックス投資を中心に解説している水瀬ケンイチの本。水瀬ケンイチと言えば山崎元との共著「ほったらかし投資術」もある。内容的には同じだと思うので、読みやすい方を選べばいいのだろう。「ほったらかし投資術」の方は新書。

インデックス投資が如何に優れているか

株式投資と言えば、かつてはファンダメンタルズ分析かテクニカル分析か、バリュー投資かグロース投資か、みたいな話が中心だった。投資界隈でよく名前が挙がってくるウォーレン・バフェットも、ファンダメンタルズ分析でバリュー投資の人。

しかしいつの間にか、時代はインデックス投資中心、猫も杓子もインデックスになった。理由は簡単で、NISAにより投資家ではない一般人が株式市場になだれ込むようになったから。インデックス投資はとにかく簡単で、株のことなど何もわからない素人が気軽に手を出せて、なおかつパフォーマンスがいい。我々にとってはインデックス様々。

インデックスがいかに優れているか、この本で事例が紹介されている。1801年に米国インデックスを1ドル買っていたら、2012年には70万ドルになっている(P158)。たまたま景気が良かった時期ではなく、その間にはリーマン・ショックどころか第一次第二次大戦が起こっており、世界恐慌もブラックマンデーもあった。それだけの事があっても、何もせずインデックスを持ち続けてさえいれば、インデックスは200年で70万倍になっている。

反対に、現金1ドルの価値はインフレによって1/20になった。現金はただ持っているだけで価値が目減りしていく。インデックスではなく個別株などを買っていれば、インデックス以上に成功することもある。ただし倒産して0になったり、失敗のリスクも大きい。200年経っても衰退していない企業を見つけるのは、まず不可能だろう。そういった銘柄選択の目利きが不要で、選ばずに買えるのがインデックス投資の真骨頂と言える。しかもそれで大きなリターンが得られるなら、もう十分ではないかという風潮に現代はなっている。そういうことが、この本で語られている。

なぜインデックスが流行らなかったか

ではそんなおいしいインデックス投資が、なぜこれまでもてはやされなかったのだろう?アメリカでは「ウォール街のランダムウォーカー」が出版された1973年頃にはインデックス投資が注目されている。このあたりはこの「マンガ お金は寝かせて増やしなさい」では特別触れられていないけれど、日本でインデックス投資が注目されなかったのは、おそらく単純にそんないい商品がなかったから。

例えばアメリカのS&P500に連動するETFなどというのは、かつて日本で取り扱ってる話を聞いたことがなかった。あったとしても、割に合わないほど手数料を取られていたんじゃないか。この本でも解説されている通り、インデックスが優れているのは手数料が安いからパフォーマンスがいいのであって、高い手数料を取られてしまえばいくらS&P500に連動して成長しても意味がない。

実際今でも、手数料が少なく優良なインデックスファンドを取り扱っている日本の証券会社はそんなに多くない。この本では楽天証券とSBI証券がお勧めされているが、理由は優れた商品を取り扱っているのと手数料が安いから。いずれもネット取引が中心になって以降に登場した新興の金融機関だ。それ以前は日本でインデックスなんて売ってなかったか、あっても高かったかのいずれかだろう。インデックスがいくら手法として優れていても、かつてはアメリカで証券口座を開設するような本気の投資家にしか門戸が開放されていなかった。多くの一般人にとっては長らく絵に描いた餅だった。

それが今や、誰でも買えるようになった。ただそれでもまだ、証券口座の開設や投資に対するそもそものとっつきにくさだったり、用語や数字に壁を感じて、インデックスにさえ手が出ない人が大勢いる。

(ここまでのインデックスは基本的にアメリカや全世界の話で、一応日本の株式市場のインデックス商品というのも存在する。日本経済はバブル崩壊以降長らく低迷しており、あまり信用されていなかった。最近ようやく復活の兆しが見えるようになり、日経平均は去年34年ぶりにやっと史上最高値を更新した。こんなインデックスは買う気にならない。)

マンガでわかる?

この本を読んで、マンガだから誰でも簡単にインデックス投資が始められるかと言うと、全然そんなことはなかった。マンガは本全体の一部に過ぎず、大事な部分は活字で書かれている。活字部分について、残念ながらそこそこ難しい内容になっている。投資にまつわるあれこれを学んでも頭に入ってこない、という人には厳しいかもしれない。

かといってこのマンガ部分に意味がないのかというと、気休めというか箸休めになる。活字本を読むだけでは疲れるという人には、マンガ部分がちょうどいい。逆に、こんなマンガ部分がなくても本を読み進められるという人は、マンガのない「改訂版 お金は寝かせて増やしなさい」を読んだらいいと思う。

精神論が中心になる

僕個人的にこの本で得られた知識は、インデックス投資についての補強と、昨今の潮流だった。ここ数年は、リスク許容度とアセットアロケーションという言葉を何度も聞くようになった。それらはかつて、あまり聞かなかった用語だった。インデックス投資はただ買って、ひたすら買い続けることが肝心になる。売らない勇気。下がっても売らないで、ひたすら買い続ける勇気。これを精神論と言わずして何と呼ぶのか。

インデックスで負ける人は、誘惑に負けたり恐怖に負けて売ってしまう人。そういう誘惑や恐怖に惑わされないためには、理論武装が必要になってくる。リスク許容度とアセットアロケーションとは、言うならば感情に振り回されないための安心材料で、本質的には投資戦略と関係ない。知り合いの投資家の人は、恐怖がぶっ壊れているから生活費以外100%株式のフルポジションを20年以上ずっと続けている。しかも全部グロースでやっている。リスク許容度もアセットアロケーションもあったもんじゃないが、投資は全然上手くいってる。

そういう超人になれない一般人は、自分の生活からリスク許容度を具体的に数字で割り出して、計画的に資産を築いていきましょうという話をこの本では丁寧に解説してくれている。不安なく投資を続けるために。この部分は大切だと思うけど、内容が難しくて多くの初心者には頭に入ってこないだろう。主に株式と債券の保有割合の話をされているが、利上げ局面の現在は債券ではなく、国債か定期預金を勧められている(P118)。それも含め、リスク許容度とアセットアロケーションは初心者からすれば、「結局どういうこと?」と思わずにいられない。

NISAの情報は古い

2022年に出た本なので、NISAの情報は古いままになっている。2024年以降の新しいNISAの情報も含め学びたいなら、「改訂版 お金は寝かせて増やしなさい」(マンガなし)がカバーしているだろう。NISAについて、ちょっとやそっとでは覚えられないことや、細かい注意点もあるため、本を一冊持っていてもいいかもしれない。今後また法律が変われば、情報の更新が必要になってくる。

例えば、この本でカバーされていない内容の一つとして、新NISAの非課税枠が復活する話がある。旧NISAでは非課税枠の復活というのはなかったが、新NISAではNISA枠で購入した商品を売却すると、翌年に売却した分だけのNISA枠が復活する。

「NISAはともかく、インデックス投資を学びたい」という人にとって、この本は今も有用だと思います。

「ウォール街のランダム・ウォーカー」へ

本書では事あるごとに「ウォール街のランダム・ウォーカー」の名前が出てくる。著者は「ウォール街のランダム・ウォーカー」にちなんで「梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)」というブログを書いているぐらい信奉しており、インデックス投資を始めたのもこの本がきっかけのようだ。

「マンガ お金は寝かせて増やしなさい」が飲み込めたら、より専門的な「ウォール街のランダム・ウォーカー」へステップアップしてもいいと思う。ロングセラー本で、日本語版は初版が1993年に出ており、基本的な中身は同じだけど時代の流れに沿って追記を重ね、現行では13版が最新版となる。僕は旧版を中古で安く買い、今読み進めている。

今からでも遅くない

新NISAは去年始まったばかりで、中には早速手放した人や、あきらめた人もいるかもしれない。インデックス投資は生活に影響が出ない範囲でとにかく買って、買い続けて、持ち続けるだけの投資手法だから、いつ始めてもいい。早ければ早いほどいい。今からでも遅くない。

具体的には本書内でも紹介されている通り、

  • 楽天証券もしくはSBI証券を利用する
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)をNISAで積み立てる
  • 2年分の生活費は現金で置いておく

このあたりが基本となる。あとは精神論なので、安心を補強するためにインデックス投資にまつわる関連書籍をあれこれ読み漁るのもいいだろう。安心すれば、投資は続けられる。