前回の続き
九龍寨城公園を離れ、宿泊先の方面へ歩いた。歩いて30分だが、泊まる先の人は夜7時に仕事が終わるため、まだ時間がある。休憩したり時間をかけながらブラブラと歩く。香港の街はどこ歩いても香港の街で、こんなのがずっと続いている。
この時期の低気圧のせいか、頭痛がする。頭痛薬は持ってきていない。道を歩いていると上からしょっちゅう水が落ちてくる。雨か?と思ったらエアコン室外機からの水だった。香港の街を歩くときは、地面を見ながら水たまりを避けて歩かないといけない。室外機から水が落ちてくる場所には水たまりができている。
街なかではバスケットコートをたくさん見かける。流行っているのだろうか。
道端でエッグタルトを買って食べた。お菓子というよりはおかずのような味がした。これは4香港ドル(約60円)と安かった。写真は撮っていない。手持ちの扇風機を顔に当てて歩いている人をよく見かける。写真は撮っていない。
歩いているとあまりにも暑くて、休憩しようと思いマクドナルドに入った。サンデーを頼み座るところを探そうとすると、全然空いていない。何も注文していないご年配の方々がたくさん涼みに来ている。カナダのマクドナルドもこんな感じだった。あっちは外が寒すぎてホームレスのたまり場と化していた。
また、中華圏は相席が当たり前らしい。2人がけや4人がけで席が空いていると、隣や向かいにどんどん座っていく。中国本土も同じだと聞いた。台湾もそうなのだろうか。
マクドナルドを出てウロウロしていたらメッセージが来た。
「仕事が終わってマクドナルドに来ている」
またマクドナルドに戻った。
宿泊先
「やあ、僕です。はじめまして」
「はじめまして、よろしく。ご飯食べた?今から食べに行こうと思ってるんだけど」
エッグタルトとサンデーを食べたからそんなに腹は減ってなかった。
「あーうん、ご飯は食べてないけれど、そんなにたくさんは食べられないかな」
「あそう、じゃあとりあえず荷物置きに行く?すぐ近くだから」
そうやって僕は泊まる家を案内してもらった。昼間歩き回っているときに見ていたような高層アパートの一室である。5階まで階段で上がらないといけない。「ボロい建物で部屋は小さいが清潔にしている」と事前に聞いていたが。
荷物を置いて外へ出た。
「ヌードルは好き?辛いのは平気?」と聞いてくるから「平気」と答えた。連れて行ってもらったのは米麺の酸辣湯麺のレストラン。ここも相席である。辛さを選べるということで3にしておいた。そして食事が運ばれてくるまで話をしていた。
「今日はどこ行ってた?」
「九龍寨城公園」
「え、あそこもう何もないでしょ?」
やはり九龍寨城公園は観光で訪れる場所という認識ではないらしい。
「うちの近くまで迷わなかった?」
「うん、Googleマップ使ったから」
この人は事前に家までの行き方をやたらと丁寧に送ってくれていた。乗るバスの番号から降りる停留所から周りの風景の写真まで、カウチサーファー用のルートマップを用意しているみたいだ。人を泊め慣れている。それにしても、これだけ丁寧なのは今までかなり不慣れな旅行者を相手にしてきたのか、大丈夫って言ってるのに何度も連絡が来た。Googleマップで住所入力すれば一発なのに、他の旅行者はそういうのやらないんだろうか。
酸辣湯麺が出てきた。器がでかい。食べ始めると、熱い、辛い、しびれる。実は酸辣湯麺は食べたことなくて、下と唇が痛い。これは辛さではなく麻痺だ。なんじゃこの食べ物。決してまずいわけではないが、とにかく痛い。隣では平気な顔をして食っている。
量が多く、先ほどマクドナルドのサンデーを食べたばかりで食えないと思った。
「まずくはないんだけど、ちょっと量が多くて食えない」
「あ、無理して食べなくていいよ。でもマナーとして肉だけは残さないで」
なんだそれは、そういうのあるのか。既に腹いっぱいだったがスープに浮いている肉だけ掬って食べた。
チラ見の重慶マンション
代金を支払おうとすると「ゲストだから」と言って奢ってくれた。うーん、タダで泊めてもらうのに。しかも残してしまってすみません。
「今からどうする?夜だしハーバーでも行く?夜景がきれいで、パフォーマンスもやってるよ」
異論はなく、2人でバスに乗って向かった。夜の道路は渋滞しており、ハーバーに着くには時間がかかった。
「明日はどうするの?」と訊かれたから「深センに行く」と答えた。カタカナ読みの"シェンツェン"で通じた。
「シェンツェンって中国だよ?ビザはあるの?」
「ビザはいらないよ」
ビザがいらないということに驚きだったようだ。
「えーっなんでいらないの?私仕事で中国に行くけどビザいるよ?8ヶ月ごとに申請しないといけない。中国人も香港に来るときビザがいるのに」
「なんでって、日本人だからいらないんだ」
「ウソ!?」
中国人、香港人は中国ー香港間でビザがないと行き来できないらしい。しかし日本人は中国へ入国するにも香港へ入国するにもビザがいらない。だから日本人が香港ー中国間を行き来するにもビザは不要だ。
ハーバーに着いた。降りたバス停はスターフェリー。
「シェンツェンへ行くんだったら人民元に両替していく?」
「あー、うん。どこかいいところあるの?」
「重慶マンション。すぐ近くにあるから」
おお、こんなタイミングでまさかの重慶マンションへ行くことになった。後日一人で行くつもりだったが、今行って場所だけおさえておくのもアリだ。
ハーバーから重慶マンションは歩いてすぐだった。
「ここ、いろんな国籍の人がいるから嫌がる人も多いんだ」
両替屋を見て回り、レートをチェックする。しかし見方がわからない。香港ドルから人民元へのレートは書かれているが、僕は円から両替しようとしていたため計算がややこしい。
「やっぱり人民元はいいや。シェンツェンの銀行で両替するよ」
「そうだね、じゃあ戻ろうか」
僕らは再びハーバーへ戻った。
九龍公眾碼頭
そういう名前のところらしい。英語だとKowloon Public Pierで出てくる。このあたりは観光客だらけで、人が多すぎる。今まで見かけなかった白人の家族連れや年寄り、若いコリアンがたくさんいる。気温は夜でも相変わらず暑い。
「今年は香港返還20年でにぎわっているみたい」
そう言えばもうすぐ習近平が香港に来るんだった。返還の日は7月1日らしい。
このあたりからスターフェリーが出ており、乗船賃は2.5香港ドル(約40円)と破格だから香港島に渡るならスターフェリーに乗ればいいとおすすめしてもらった。埠頭には並んで座れるところがたくさんあり、座って休憩していた。
「香港は初めてだよね?」
「そうだよ、すごく暑いね。全身汗だくになった」
「汗かくの好きだけどな。身体から毒素を出してくれるし」
なるほど、そういう発想の人もいるのか。汗について肯定的な意見っていうのは久しぶりに聞いた気がする。
「あ、船が出ている!あの船はレアだから」
船が出ていた。
昨日は空港泊でちゃんと寝られなくて、今日は暑い中半日歩きまわっていたから疲れた。そんな様子をかもし出していたのか「そろそろ帰る?」と訊かれ帰って寝た。
次回、香港旅行記2日目①「深センの電気街」
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