「人はみんな弱い」
「一般論だよ」と言って鼠は何度か指を鳴らした。「一般論をいくら並べても人はどこにも行けない。俺は今とても個人的な話をしているんだ」 下巻p200
「羊をめぐる冒険」は村上春樹の初期三部作と呼ばれる「鼠シリーズ」の最終章である。"鼠"とは登場人物のニックネームであり、物語の主人公の、地元で知り合った友人として登場する(「風の歌を聴け」参照)。高校卒業後に上京して大学に通い、そのまま東京で働いていた主人公は、10年ばかり鼠と会っていなかった。それでも手紙の交流は続いていた。鼠も同じ頃に街を離れ、10年の間各地を転々とさまよい暮らしていた。その合間に鼠は、一方的に手紙を送っていた。やりとりのない一方的な交流だった。最後の手紙で、鼠は二つの頼み事を書いていた。一つは別れた女性に会ってほしいということ。もう一つは同封の写真を、どこか広く人目につく場所に載せてほしいということ。
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