プラハの改札に衝撃を受けた話

プラハに行った時、改札のシステムに驚いた。イタリアも同じで、ヨーロッパは同じタイプの改札が多いと聞いた。

駅員のいない改札

地下鉄の改札なんだけど、改札口に駅員がいない。
駅員がいないんだから、この駅の運営コストはさぞ安いだろう。改札口には、仕切りがあるだけで、切符を通すゲートもない。どうやって改札するのだろうと思ったら、入り口に置いてある印かハンコみたいなのを押す機械に紙を差し込んで、自分で改札する。
人もいなければ、非接触改札のようなハイテクな機器も無い(券売機はある)。とてもローコストで運営されているはずだ。

スルーされる改札

「わざわざ自分で改札なんかしていたら、列ができて時間がかかって面倒」と思う人がいるかもしれない。改札は各改札口に3つぐらいしかない。実際、駅の様子はというと、9割以上の人が改札を素通りしている。
「無賃乗車か?」と初めは思ったけど、1日乗車券、3日乗車券などのフリーパスや、定期を利用している人がほとんどのようだ。その場合改札は不要で素通りできる。後で僕もパスを利用するようになった。駅の改札で詰まるとか、人が多くて混むといった状況は見たことがない。夏休みで観光客が大勢いるプラハの街にもかかわらず、だった。改札でわざわざ立ち止まることがないんだから、当然混むわけがない。

無賃乗車の防止策

「駅員がいなくて改札も素通りなら、無賃乗車し放題だろ!運営にコストがかからなくても採算合わないのでは?」と思う人がいるかもしれない。しかし、プラハの駅では、通路の途中で定期券、および改札済の切符のチェックが入る。チェックを受けなかったり、チェックの際にパスや切符を提示できなければ、それこそ無賃乗車で捕まるか、罰金5万円ぐらいだったと思う。切符のチェックは当然毎回ではない。僕は1週間のうちに2度受けた。おそらく各駅で1日1回ぐらい時間帯は不規則に行われているのだろう。
罰則や罰金はとても大きい。ましてや検札というチェックがいつ入るかわからない。無賃乗車のリスクは高すぎるから、まず誰もやらないだろう。やっている人もいるかもしれないが、成功するかどうかは運でしかなく、無賃乗車を続けるにはあまりにもリスクがある。地下鉄の運賃は安い。割に合わないから、合理的な人はやらない。

以上のようにしてプラハの駅では、人も機械も低コストで、並んだり煩わしいこともなく、無賃乗車も防げる。そういった合理的な改札システムで運営されていることに、僕は衝撃を受けた。

一方日本では…

その一方、日本では、非接触パスや非接触パスに対応した改札の全国一斉配備、規格の全国統一などの無駄な努力を必死で行っている。もちろん、それで技術の開発が進んだり、雇用が生まれたりすることはあるだろう。非合理性を保つために。
テクノロジーがそんな事に使われるのはもったいない。テクノロジーはコストや資源、人々の労働力や時間を無駄にするためにではなく、運営する人たちや利用者の合理性及び利便性を加速するために開発され、使われるべきではないだろうか。

そのずっと前から、プラハでより合理的に、手間もコストが少なく、混雑もしない運営が行われていた。驚くと同時に、悲しい気持ちでいっぱいになった。

ちなみにプラハ地下鉄の駅では、エスカレーターが日本の倍速かと思うぐらいの速さで動いていた。初めて乗る時には戸惑ったが、慣れると何とも思わない。タイやベトナムの道路を横断する時と同じで、危険そうに見えるが、慣れるとなんてことはない。
2倍速だから、わざわざエスカレーターを歩く人もいなければ、エスカレーターで混むこともない。たまに日本で議論になるような、エスカレーターは歩くなとか、右に並ぶとか左を空けるとか、そういう無駄な考えややりとりが一切ない。

日本からヨーロッパへ渡り、これらの合理性に衝撃を受けた人はおそらく僕以外にもたくさんいて、それもずっと前からいて、それでも全く日本で導入される気配もないからには、何かしらの不都合や理由があるのだろう。かといって、…非接触、うーん。同じ技術力、開発力があれば、もっと有効に使えなかったのだろうか。

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