前回の続き
海日和
昨日友人と別れ、僕はホテルに戻ってから旅行のメモをとったりテレビを見たりして夜遅くまで起きていた。夕方に少し寝ていたこともあってか、なかなか寝付けなかった。朝は9時に目を覚まし、いつもより多めに朝食をとった。多分、お昼は食べないだろうから。今日は一人で再び海へ行こうと思っていた。もう海への行き方もわかっており、勝手も知っている。行くことにさして意味は無い。ただ海が好きで、最後にもう一度見ておきたかった。外へ出てみると、おとつい行った時より晴れており気温も高い。海日和だ。
手慣れたビーチ
バス停へ向かうと、バスは既にそこに来ていた。僕は10時にバスに乗り、10時半にはビーチに到着した。同乗していた西洋人の家族連れが、前回の僕らと同じようにどのバス停で降りたらいいのか不安がっていた。僕は音楽を聞きながら半分寝ていた。
ビーチに着き、近くのインフォメーション・センターのようなところでトイレを借りた。「え、トイレ?」みたいな反応をされたから「無理だったらいいよ」と僕は出ていこうとしたところ「従業員用ならあるからそれを使ってくれ」と言われ、オフィスの中を通された。ここで借りるのは基本的に無しだったようだ。
前回と同じようにビールを買おうと思ったところ、売店が開いてなかった。まだ朝の10時半という早い時間だったからかもしれない。僕は浜辺を歩いた。寝そべることができる白いイス、あれをなんて呼ぶのか知らないけれどそれを見つけ、寝そべっていたら、服を着てサングラスをかけた監視員みたいな人が来た。
「このベンチは2CUCだ」
僕はこの日、バス代の5CUCを使い残り2CUCしか持参していなかったため、ベンチを離れた。少し歩き、前回と同じように砂浜にバスタオルを敷いてその上に横になった。その後も大したことはしていない。寝そべったり、泳いだり、浮かんだり、波の前で座禅を組んだり、そういうことをずっと繰り返していた。途中でもう一度売店を見に行くと、開いていたからCrystalビールを買った。どうやら12時から開くらしい。僕が砂浜で寝ていたら若い白人女性の二人連れが、僕から少し離れたところで僕と同じように寝そべり始めた。今日見た彼女らもトップレスだった。
ノッキンオンヘブンズドア
僕は以前このブログにも書いた「ノッキンオンヘブンズドア」という映画が好きで、浜辺でビールを飲みながらそのことを思い出していた。ドイツの映画で「もういつ死んでもおかしくない」と医者に不治の病を宣告された二人の男が、死ぬ前に今まで一度も見たことがなかった海を目指す話だ。彼らは病院を抜け出して車を盗み、銀行強盗をしたりマフィアに追いかけられたりもするロードムービーで、僕はこれを繰り返し何度も見た。
「知ってるか?天国では皆、海の話をするんだぜ。お前、海を見たことがないのか?あの世でのけ者になるな。そうだ、死ぬ前に見に行かないか?」
ハバナ市街へ戻る
夕方の4時になり、ハバナ市街地へ戻るバスに乗った。そのままホテルに戻ってシャワーを浴び、鏡を見たら松崎しげるがそこにいた。全身日焼けでめちゃくちゃ痛い。あまりの痛さに僕は動きたくなくなり、ベッドに入って呻きながらテレビを見ていた。
ずっとそうしているのも退屈だったため、ハバナの海岸で夕陽でも見ようと思った。ドラマの深夜特急で大沢たかおがどこに行っても夕陽を見ていたことを思い出したんだ。そしてトリップアドバイザーにも海岸で見る夕陽がきれいだと書いてあった。僕自身はそんな夕日を見て綺麗だね、なんていう質の人間ではないけれど、暇だったから向かった。
外へ出て歩いていると
「ヘイ!ジャパンジャパン!」
と声をかけられた。そっちを見ると、ラチェだ。
「ラチェ!」
僕は正直関わりたくなかったけれど声をかけた。
「なにしてるんだ?」
「夕陽を見に行くんだ」
「場所はわかるか?一緒に行くよ」
「大丈夫」
「そうか、急いだほうがいいぜ、もう沈むからな」
彼は手をくるくる回すジェスチャーを交えてそう教えてくれた。海岸は歩いてすぐそこにあり、着いたものの夕陽は見えなかった。方角的に海へ沈むものではなく、雲か建物に隠れていた。僕はその、空の色合いを写真に撮った。
日焼け痛すぎ
僕は海岸沿いを南に歩いた。特にやることもなく、歩く度にカメラやポーチのストラップが擦れ、日焼けした肩に痛みが走った。そのうち日は完全に沈み、僕は旧市街の方へと入っていった。旧市街はライトアップされていた。僕は何枚か写真を撮りながら歩いたものの、日焼けが痛すぎてホテルに戻ることにした。ホテルで水だけ買い(1CUC約120円)、部屋に戻ってすぐ横になった。時間にしてまだ8時ぐらいだった。時間が早いこともあったけれど、それ以上に日焼けが痛すぎて全く眠れなかった。
次回、キューバ旅行記最終日「帰国まで」へ続く
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