アフリカにおける日常の些末なこと

今は人の家に泊まっているんだけど、床を真っ黒な芋虫が横切っていた。初めて見たし、どっから来たんだろう一体。紙の上にのっけて、玄関から外に捨てた。

泊まっている部屋

窓のふちに蜘蛛がいた。蜘蛛といっても今まで見たことがないような肉厚で、どちらかというとカニに近い。こんなのが部屋にいると眠れない。殺そうと思って部屋の中にあった棒でつついたら、足一本引きちぎってどこかへ逃げてしまった。

洗面台の下にゴキブリがいた。これも今まで見たことのないようなサイズで、いわゆるカブトムシぐらいの肉厚だった。これにはどう対処したものかと思い、殺虫剤めいたものは持っておらず、持参していたハッカ油をかけたらよろよろとトイレの方に逃げていった。トイレのドアを開けると姿を消していた。

虫のイリュージョンはいたるところで起こる。

約束

町長の秘書という人から「町で行事があるから、そのつもりでいてくれ」と言われたことが何度かあった。その都度準備していた。一度は迎えが来て、4時間も待っていたが何も起こらなかった。その後も何度か連絡は来るが、町の行事は一向に行われる様子がない。こっちの人は基本的に現地語で話しており、なにしゃべっているのか全然わからない。

一度首都に帰るとき「また町に戻ったら連絡してくれ」と言われていた。首都にいる間にも連絡があった。折返し電話をしたが出なかった。そして町に戻ったとき、また電話をした。

「よー元気にしていたか?今どこにいるんだ?今からそっちに行くよ。あ、今は忙しいから後から行くよ。そうだな、夜7時半ぐらいはどうだ?何をするかって、ただそのあたりを散歩するだけだ。じゃあ後でな」

言われるがままに僕は待っていた。7時半の手前にそこそこ雨が降り、今日は流れるなーと思ったら7時半には止んでいた。しかし誰もうちに来ることはなく、8時頃に電話がかかってきた。

「今日はもう遅いからまた明日行くよ」

その次の日も誰も来なかった。

アフリカンウェア

こっちに来たらもれなく、アフリカンウェアを着ることになる。アフリカ人がよく着ている派手な柄のシャツだったりつなぎだったり、半袖だったり布をまとっているだけだったりするやつだ。どうやらあれに国境はないらしく、呼称も「アフリカンウェア」とか「アフリカンクローズ」とかで統一されている。

人からもらったシャツ

これの楽なところは、こんな派手な柄でありながら伝統的な服ということで、公的な場に着ていけるところだ。フォーマルな場に出向くことなんてそうそうないんだけど、アフリカンウェアを着ているだけでフォーマルとして扱ってもらえる。もう一つ楽なことは、洗って干しておけばすぐに乾くところ。

アフリカンウェアの難点は、生地が固くて伸びないところ。着心地はそんなに楽ではない。もう一つ挙げるとすれば、意外と涼しくない。日に照らされると熱を持つという点。

水については以前にも少し触れたが、水道水はもちろん飲めない。飲めないが料理には使われていたりする。飲料水として売られている水が二種類あり、ペットボトル入りと袋入り。ペットボトル入りは50円ぐらいする。袋入りはペットボトルの半分ぐらいの量だが、わずか5円ほど。

これが袋入り水。ハサミとマーカーは無関係

さて、味はどうかというと袋入り水はまずい。工業用水のようなケミカルの味がする。これをずっと飲んでいて健康に支障はきたさないのだろうか。しかし一応飲料水として売られているものだ。ペットボトル入りはというと、日本で売られているミネラルウォーターのように普通に飲める。たまにハズレにあたると石鹸みたいな味がする。

最近はもっぱら袋入り水しか飲んでいない。ボトルドウォーターは高いということもあるが、売っているのをあまり見かけない。袋入り水は、袋の端を歯で噛み切って飲む。ボトルの半分とはいえいっきに飲めない量で、よく机の上なんかに無造作に置かれている。噛み切った部分を上にしてずれないように置くと水はこぼれない。