「ホドロフスキーのサイコマジック」を見た

映画館で見る予定だったが、今はどこも開いていない。開いていても行けない。そんな中UPLINKがオンデマンド配信してくれた。4/24から先行上映、寄付も込めての72時間1,900円から(映画は1時間44分)。早速見た。

今回の映画はドキュメンタリーで、ホドロフスキーがこれまで行ってきたサイコマジックを紹介するという内容。冒頭でサイコマジックとはなんなのか、という説明から始まる。

サイコマジックとは

サイコマジックとは、アートを用いた癒やしのカウンセリング、心理療法だそうだ。ホドロフスキーいわく、フロイトの精神分析が言葉で行うのに対し、サイコマジックは全身を用いた行動で癒やしをもたらす。ホドロフスキーが考えたオリジナルの心理療法である。

この映画には様々な悩み、トラウマ、痛みを抱えた人たちが登場し、次から次へとホドロフスキーのサイコマジックを受けていく。その映像がただひたすら続く。また、これまでホドロフスキー監督の作った映画のシーンも登場し、映画もサイコマジックであったことが示される。

そんな映画!?

さあ、こんな映画はおもしろいのだろうか?予告編を見て面白そうと思った人は、多分期待を裏切らない。最近のよくある映画トレーラーと違い、予告でもっとも見せ場のシーンを流してしまっているなんてことはない。本編において、もっと激しいサイコマジックのやりとりが続く。

「ヤバそう」と思った人、その感想は正しい。この映画、サイコマジックという手法、ホドロフスキー監督、全部明らかにヤバい。始まってすぐ、母の愛情を取り合う兄弟(成人)がサイコマジックを受けている映像が流れる。本人たちには申し訳ないが、めちゃくちゃ笑ってしまう。映画館で見ていなくてよかったと思う。その後もびっくりするシーン、思わず笑ってしまうシーンが続く。

ホドロフスキー映画はいつもこんな調子なんだけど、これまでの作品はフィクションであり、アートとして受け入れているところがあった。しかし今回のはドキュメンタリーだ。悩みを抱えた一般の人たちが、我々の住む普通の世界で、ホドロフスキーやってしまっている。これは驚かずにはいられない。

サイコマジックを受ける人

サイコマジックを受ける人たちは、スペイン、フランス、メキシコ、オーストラリアなど世界中の普通の人たち。基本的には人間関係、特に両親について悩みを抱える人が多い。この事実にまず驚いた。日本以外にも、こんなに家族についての悩み、トラウマを抱える人が多かったとは。それも成人、中年ばかりだ。家族間にて生じる問題というのは、世界中普遍なんだなーと実感する。

自分の知り合いや身の回りにいる人も、もしかするとサイコマジックを受けてみたらいいのかもしれない。親との関係に不和や歪を抱えたままの人は何人かいる。ただサイコマジックを受けるには、おそらく大金を積まないといけないだろうし、ホドロフスキーに絶対の信頼を置いていないと成り立たないから、あまり現実的ではない。

サイコマジックで何が起こるのか

映像を見ていると、サイコマジックでやらんとしていることが段々わかってくる。まずホドロフスキーは対象の話を聞き、トラウマの原因や、問題の根っこにある取り除かないといけない部分、癒やすべき部分を見つける。

そして、誰もが思いつかない方法で、対象の全身を直接揺り動かすことにより、対象の肉体や精神に理解や認識を与える。ホドロフスキーは無意識と言っているが、無意識に自覚を与えることで、対象の枷となっていた部分が外れる。

ホドロフスキーにしかできない

ここで行われる具体的な行為がサイコマジックそのものなんだけど、「自分の月経の血で似顔絵を描け」とかホドロフスキーしか思いつかない。サイコマジックはホドロフスキー自身が全身全霊で対象と向き合い、取り組んでいる。

もし仮に、自分の身近に悩みを抱えた人がいたとしても、決してホドロフスキーのように相手に寄り添うことはできないだろう。大金を積まれても無理だ。ましてや彼にとっては赤の他人である。サイコマジックは彼だからこそ為せる。むしろ何故彼がこんなことをできるのかわからない。しかもこれを50年続けているって…。

この映画、「ホドロフスキーのサイコマジック」は、何も知らない人が傍から見れば、老人が裸で抱き合っているマニアックなポルノだ。エンドレス・ポエトリーのBGMも相まって、超シュールな映像が流れている。エル・トポTシャツ買いました。

お題「#おうち時間