綿棒を何に使うか

綿棒は何に使う物だろう?

オーストラリアにいた頃、綿棒が欠かせない男がいた。鈴木だ。

彼はオーストラリアに来ても、薬局で綿棒を購入していた。日本の百均で買うような小分けの販売がなく、膨大な量を買わされていた。

彼が綿棒を何に使うか。それは、風呂上がりの耳掃除だ。厳密に言うとオーストラリアには風呂なんかないからシャワー後に、耳の中に溜まった水を吸わせて出す作業をしていた。彼はこのシャワー後の耳掃除を、まるで儀式かのように毎回決まったやりかたで行っていた。目を閉じ、口を開け、なんなら鼻も開き、今にも声が漏れそうな顔で儀式を行う。すごく嫌だった。

彼は儀式を、世界中のみんなが当たり前にやっていることだと思っていた。ある日、同じシェアハウスに住んでいた同居人が、鈴木くんに向かって「お風呂入りましたか?」と聞いた。彼はこう答えた。「見ればわかるだろ!綿棒使ってんだから」彼の中では「綿棒を使っている=風呂上がり」という等式が成り立っていた。

僕は風呂上がりに欠かさず綿棒で耳掃除をする習慣なんてない。ましてやオーストラリアに来てまで綿棒を買うようなことはなかった。彼はプールへ行ったときや、海に行ったときも綿棒で耳掃除をするのだろうか。

しかし最近になって、風呂上がりの耳に違和感を覚えるようになった。水が残っている…。指で掻き出そうとするが、なかなかうまくいかない。そしてその様子も、つまり、耳に指を突っ込んで掻き出す姿も、あまりきれいなものじゃない。しかたない、負けた、鈴木よ。綿棒を使うようになった。

綿棒でそんなにしっかり水が取れるわけでないんだけど、気になったら使うようになった。外出先にまで持っていったりはしない。それにしても、なぜ耳はこんな簡単に水が溜まる構造になっているのか。

僕の場合は、それ以外にも綿棒の使い道がある。僕はときどき綿棒を使って、鼻の粘膜にワセリンを塗っている。これは鼻バリアと言うらしい。僕はアレルギー体質で、とりわけ花粉症の季節はひどい。そういうとき、鼻の粘膜に綿棒でワセリンを塗ってガードする。これは確か、ためしてガッテンでやっていた。イギリス人はそうするらしい。僕は花粉症シーズン以外にも、ときどき鼻バリアを行っている。そのために綿棒を使う。

他に、通常の耳掃除にもときどき綿棒を使う。耳垢を取るには、耳かきよりも綿棒のほうが有効だ。耳垢が湿性の人は、綿棒を突っ込んでかき回すだけで耳垢がへばりついて取れることだろう。溜まる場所は決まっているから、コツを掴めば取りこぼしがない。さて、問題は乾性の人だが、実は耳垢が乾性の人にも綿棒が有効だ。そのまま使用するとあまり取れないから、耳に突っ込む間に、綿棒の方を適度に濡らす。これで湿性の人が綿棒を使うのと同様の効果を発揮する。なお、耳垢を残しておくと虫よけになるそうだ。

耳垢 - Wikipedia