2年前に父を亡くして

先日三回忌を迎えた。父を亡くして丸2年が経ち、やっと少し、父親がもういないという現実を認識することが増えてきた。まさか自分が30代のうちに親を亡くすと思っていなかったから、心の準備ができていなかった。そういう予感というか、兆候みたいなのもわからなかった。今から思えば、というのはあった。

階段で荷物を運ぶと息切れするようになっていたり、ときどき体調を崩すようになっていた。でも父親は検査どころか健康診断も受けない。医者嫌いというよりは、医者を信じていなかった。また、健康に気を遣って長生きするよりも、好きに生きて死にたいという考えだった。人間ドックなどは一度もやったことなかったし、がん検診も受けたことがなかった。

奥さんの父親は対照的で、早くに大病を経験してタバコをやめている。酒は長らく飲んでいたが、もともと体質的に強く、肝臓などの数値は正常だった。病院にも定期的に通い、検査を受けている。おかげで昨年胃がんが再発するも、ステージ1で発覚した。胃は全摘になったものの、それから1年経って元気に畑仕事をしたり、ゴルフに行ったりしている。さすがに酒はやめたようだ。

自分なりの教訓としては、適度な運動や適切な食事、定期的な検査によって、ある程度の予防・早期発見ができるのだろうと思う。例えば僕はおととしに初めて大腸内視鏡検査を受けた。自分の父親が大腸がんで亡くなったため、今まで一度もやったことがなかったからとりあえず受けてみた。内視鏡検査による大腸がんの予防(ポリープ段階での摘出)・早期発見の効果は高いと聞いた。胃がんの予防も胃カメラによるチェックやピロリ菌除去の効果が高いと聞く。その他の内臓についても、それぞれ効果の高い予防法・検査方法がある程度存在するのだろう。

父親が亡くなってから、父と同年代だったりその近辺の男性の病死を、妙に意識するようになった。坂本龍一は父とほぼ同い年だった。坂本龍一の入院中に作られたアルバム「12」を聞くと、父が入院中に苦しんでいた姿が思い出され、連想された。アントニオ猪木はちょっと上になる。昭和のプロレス好きだった父親が亡くなって数ヶ月後、猪木が亡くなった。山崎元さんは父より若くして亡くなった。闘病生活について記された遺書のようなnoteがあり、読んでいるとやはり自分の父親のことを思う。痛ましい。

人生100年時代とは何だったのか。医療技術は何がどれぐらい進歩しているのか。あまり実感できない。祖父が89歳、93歳で亡くなっているのに対して、父は71歳で亡くなった。20年近く早い。父に限らず、知っている範囲で寿命が延びたり健康寿命が長くなっているという実感がない。自分もきっと、それぐらいまでに亡くなるのだろうとぼんやり思うようになった。

父親は病気がわかってから3ヶ月で亡くなってしまったため、入院費や手術代で生活に困るということはなかった。70を越えていたため、高額医療費の手続きも必要なかった。今後は医療費の負担割合がどうなるかわからない。基準の年齢も変わるかもしれない。制度の改変をチェックしておきたい。

お金面に関しては、山崎元さんが自身のノートで詳しくまとめられている。今後本にもまとめられるかもしれない。あくまで現時点での制度の上では、参考になると思う。山崎元さんはがん保険にも入らず、自らの投資でそれ以上のパフォーマンスを実現していたから医療費には困らなかった。そういうのが全く向いてない人は、保険とかについて調べておいてもいいかもしれない。

父親の病気がわかって以降、しばらく笑うことができなくなった。亡くなってから1年ぐらいは、毎日父親のことが頭に浮かんだ。ずっと暗い、重い日々を過ごしていた。去年は去年で飼っていた猫の闘病、死があり、とても落ち込んだ。それは今も引きずっている。父親の死については、2年経ってようやく少し、まともに向き合えるようになってきた。