「多動日記」感想・書評

多動日記は、高城剛がヨーロッパを旅行中に書いていた日記。タイトルは日付と滞在先になっているが、滞在先にはほとんど触れておらず自身の意見だけを述べている。著書「2035年の世界」のことが触れられているから、書かれたのはおそらく2014年のあたりだろう。多動日記の発売は電子版のみで、出版社を通さない高城未来研究所からの直販。黒本と同じスタイルだ。黒本は本人のメルマガからQ&Aを抜粋しただけで380円とお手頃な価格になっているが、この多動日記はそれとは違い高城剛の意見しか書かれていない。

黒本などのQ&Aにはよく「高城剛のフォロワーがなんでこんな質問してるの?」と思わざるをえない低レベルな内容にも高城剛が懇切丁寧にはぐらかしている。今回の多動日記にはそういう無駄な部分が省かれているため、メルマガを購読していない僕は読んでいておもしろかった。値段は680円だったかな。

ディズニーランドは、「キマった」人が作った「キマった」人たちにとっては夢の国だろうが、そこにシラフの老若男女行って楽しむなんて、「キマった」人々には悪夢に映るだろう。現世そのものが「キマった」ように感じるから。

位置No.215-217

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「ハイファに戻って/太陽の男たち:ガッサーン・カナファーニー」感想・書評

『ハイファに戻って/太陽の男たち』の文庫を買った。今年(2017)の6月に発売されたものだ。これ、なんで文庫化されてんの? 原著が発表されたのは1960年代、日本語版は2009年に単行本が出ている。著者はガッサーン・カナファーニー、この人有名なの?文庫は新刊として街の本屋に置かれ、帯には西加奈子の推薦文が書かれている。すごく違和感を覚える。

というのは、外国の小説って全然文庫化されていなかったりすぐ絶版になっていたりするから。事情は知らないが、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』だって文庫化されていない。ジョン・アップダイクの『ケンタウロス』だって文庫化されていない。他にも翻訳すらされていない、文庫化されていない、絶版になっている著名な本がたくさんある中で、なぜ『ハイファに戻って/太陽の男たち』の文庫化なんだ。そんな人気が高いの?何か事情があるの?経緯がすごく気になる。

ガッサーン・カナファーニーはパレスチナ人のジャーナリスト兼作家、パレスチナ解放闘争の活動家だった。1972年、レバノンのベイルートでイスラエルの諜報機関モサドによって車に爆弾を仕掛けられ、暗殺されている。一方で小説はというと「現代アラビア語文学の傑作」と評価されている。このような経歴の著者だから、読んで幸せな気持ちになる作品ではない。しかし人間生きていれば、とことん悲しい気持ちになったり暗い気持ちになりながら、悲劇について考える時間も必要なはずだ。

ガッサーン・カナファーニー - Wikipedia

  • 現代アラビア語文学が千円以下で所有できる
  • 短編集『ハイファに戻って/太陽の男たち』
    • 『太陽の男たち』
    • 『悲しいオレンジの実る土地』
    • 『路傍の菓子パン』
    • 『盗まれたシャツ』
    • 『彼岸へ』
    • 『戦闘の時』
    • 『ハイファに戻って』
  • パレスチナ問題
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「ヒドゥン・オーサーズ」感想・書評

それでは数が多いので全部紹介できないが、一部引用したりしながら紹介してみる。

「ごめんね、 校舎」 大前粟生

小説?散文?校舎に包帯をぐるぐると巻いていく話。パラパラマンガ見てるみたいだった。

包帯に摑まったその子が、顔をこっちに突き出す。修復途中の窓ガラスにあたってしまう。私たちは慌てて窓を開ける。その子がもう一度顔を突き出す。非常ベルで光った赤い顔がはっきり見える。苦笑いしてる。

「どうぶつにかがみをみせてわらう」 みみやさきちがこ

なんか頭のなかで浮かんだ言葉を片っ端から書き並べたような文章。

けど、 ドンキに行ったこと二回くらいしかない、のに、これ歌えるのってすごくない、この歌のひろまりぐあいすごくない、この歌、作詞作曲したひとすごくないですか、

「二十一世紀の作者不明」 大滝瓶太

短編小説。クローン人間の一生みたいな話。寝ている間に夢を見て、夢であることを自覚できることもあるんだったら、意識的に夢を見ることができる人がいてもおかしくない。20歳のときにできた子供と50歳のときにできた子供へ遺伝する情報に30年間分の差があるとしたら、記憶の遺伝があってもおかしくないよなーと思った。

実体を持たない集団が語る声を、実体を持つ個はその耳でもって聞くことができるのか。

実と虚のふたつの空間を隔てるものがボリスの認識にはなかったといえる。

「マジのきらめき」 斎藤見咲子

歌集。ヒドゥン・オーサーズ作品群の中で一番好きかもしれない。それは多分僕が若々しいものと都市の雰囲気を好む傾向があるからだろう。状況描写と心象の組み合わせが好きです。

明らかに異様な音を立てていた間違ったとこ開けようとして

「お昼時、 睡眠薬」 ノリ・ケンゾウ

統合失調症の人の頭の中を文章でつづったらこんな感じになるんじゃないか。いろんな意識が溶け合って混ざりだしてはっきりしない。

ねえ、私はスーパーのこと、これからマーケットと言うようにしたいんだけど。と 試しに今の夫に相談してみると、スキニシタラ、と言われた。

「聖戦譜」 伴名練

高校の文芸部の部誌『北陵』第100号発刊記念の冒頭挨拶文が延々と続く。最初はすごく笑っていたけれど話がどんどん未知なる方向へ展開していってわけわからなくなったと思ったらまとまってくる。

つまりは鳴海高校文芸部の初代部長はそもそも人類と出自を異にしているのではないか、という議論が持ち上がったのも無理からぬことです。

「つむじ圧」 杉山モナミ

歌集。とにかく女の人っぽい。持ってくる題材や目線、見る対象。

あのひとは光に乗ってしまうのではないかというほど咳していました

「引力」 相川英輔

ヒドゥン・オーサーズの中で一二を争うほど一般人が読める文体で書かれている短編小説。近所で餌をやっていた猫が死んで埋めに行く話。

少なくともここであれば穏やかに眠ってもらえそうだ。自分が死んだときもここに埋めてほしいとさえ感じた。

本当は全部読んだし好きな部分や感想もいっぱいあるんだけど長くなるしめんどくさいんでやめます。ぜんぜん違うぞって苦情は甘んじていただきます。

[asin:B072LZ33P3:detail]

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読みたい本をどこから見つけるか

読みたい本が増えてきてせっせと欲しいものリストに追加している。しかし手元にはまだ読み終えていない本が1、2、3、8冊ある。中には借り物もあって、こちらから先に読んでいかなければならない。それにしても、このように読みたい本がどんどん溜まっていくこともあれば、全く無いこともある。本が読みたいときに、読みたい本が見つからない、そういうことって多々あるんじゃないか。読みたい本はどうすれば見つけることができるのだろう。その経緯を少しまとめてみた。

ほしいものリスト - Letter from Kyoto

  • 本から
  • 映画の原作
  • Twitterから
  • ブログから
  • 配信から
  • ネットですね
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村上春樹小説の性描写を数えてみた

村上春樹が7年前に書いた長編小説「1Q84」を昨日読み終えた(「騎士団長殺し」はまだ読んでいない)。読んでいてどうしても気になったのが、この本セックス多すぎない?もともと性描写の多い村上春樹小説だが、それにしても1Q84は多い。ところどころでやりまくりだ。挙句の果てには世間を騒がせる細身巨乳の女子高生作家「ふかえり」とまで行為に及んでいる。読んでいて「結局やるんかい!」と思わずツッコんだ読者も多かったことだろう。

コンドームをつけなくていいのだろうか、と天吾は不安になった。(文庫版4巻p51)

この小説ではトータルでいったいどれだけ性行為が行われたのだろう。もしかしてあの「ノルウェイの森」を越えたんじゃないか。気になって数えてみた。こんなバカなことを既に思いついて調べた人もいたと思うが、ネットで検索しても出てこない。「1Q84」「ノルウェイの森」以外はどうだろう。手元にある村上春樹作品を全部引っ張り出して数えてみた。

  • 0回 ご家族でも安心して回し読みできます
  • 1回 ハリウッド映画でもこのぐらいは
  • 2回 中心的なテーマではないけれど
  • 3回以上 おーい、やってるかい?
    • 「ダンス・ダンス・ダンス」
    • 「国境の南、太陽の西」
    • 「海辺のカフカ」
  • 5回以上 もうね、日常茶飯事
    • 「ノルウェイの森」
    • 「1Q84」
  • 全体的な傾向
  • 純文学ではありがち
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「1Q84」感想・書評

一週間ぐらいかけて1Q84を読んだ。率直な感想としては、村上春樹の本としては珍しい部類だった。まず、暗い話ではなかった。何事もなくすんなりとハッピーエンドを迎える。村上春樹の新しめの作品はハッピーエンドな傾向が高い。たとえば「海辺のカフカ」もそうだった。万事解決して終わる。多崎つくるはどうだったか忘れたが、ある程度解決していたように思う。それにしても、何事もなくすんなりと終わるのは珍しい。

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「わたしを離さないで」感想・書評

もしかしたら、そうかも。そうか、心のどこかで、俺はもう知ってたんだ。君らの誰も知らなかったことをな p421

率直に言って、なんじゃこりゃーという小説だった。この前に「日の名残り」を読んでいたから、一人称の独白で過去を回想しながら現在にたどり着くという全体としての大まかなスタイルは同じだなあと思った。著者が育ったイギリスを舞台にしているところとか、時代設定は「日の名残り」と少しずれているけれど、雰囲気はどことなく共通するものがあった。でもそれ以外は同じ作者が書いたと思えない。幅が広いと言うか、人物の描写があまりにも違いすぎて、なんじゃこりゃー。というのはこれを書いたのがおっさんだとはとても思えなくて。

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「日の名残り」感想・書評

カズオ・イシグロの「日の名残り」を読んだ。いろんな意味でうまくできた話だった。展開が気になるおもしろさがあり、こっけいさを描いた笑いもあるかと思えば、仕事に打ち込み燃える姿や、政治にまつわる教養と緊迫感もある。さらにはそこに恋愛も加えられ、一人の人間が人生で経験する、あらゆる要素を自然に調和させたひとつの物語としてできあがっている。だからまず真っ先に「よくできた小説」だと思った。しかもそれが執事の物語だなんて、よくこんなおもしろく書けたもんだ。

  • あらすじ
  • 仕事をおもしろく語る
  • 仕事人間と感情豊かな人
  • 時代の移り変わり
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「日本人の英語」は難しすぎる

「日本人の英語」を読んだ。難しい。何が難しいかって、日本人が英語を習得することが難しい。著者のマーク・ピーターセンはアメリカで英米文学、日本文学を専攻し、現在は明治大学で教授をしている。バリバリ日本語を話し、この著書も自ら日本語で書いたものだ。そんな日本語が堪能なアメリカ人から見た、日本人が間違えやすい英語、理解しにくい構造がまとめられている。まさに日本人のための英語学習指南書。特に冒頭の章はインパクトが大きい。

Last night, I ate a chicken in the backyard.
昨夜、裏庭で鶏を一羽つかまえてそのまま食べてしまった。

これをみたときの気持ちは非常に複雑で, なかなか日本語では説明できないが, (中略)夜がふけて暗くなってきた裏庭で, 友だちが血と羽だらけの口元に微笑を浮かべながら, 膨らんだ腹を満足そうに撫でている――このように生き生きとした情景が浮かんでくるのである. p10

  • 冠詞、単数、複数
  • 前置詞
  • 自然な英語は、英語的発想から生まれる
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「ノルウェイの森」を読むのはとてもつらい

「ねえ、あれは本当に淋しいお葬式だったんだ。人はあんな風に死ぬべきじゃないですよ」 下巻p252

村上春樹のファンタジー冒険小説を読んでいてもこんなふうに思うことはほとんどないんだけど、「ノルウェイの森」を読んでいるととてもつらい気持ちになってしまう。この本を初めて読んだ17歳のときもそうだった。あのときはショックが大きくてなかなか立ち直れなかった。それは哀しい話で泣いてすっきりするようなものではなく、身体の内側に重くのしかかるような、読み終えた後もずっと頭から離れないような、そういうものだった。そこにあるのは、明確な痛みだった。当時僕はごく平凡な高校に通っていて、恋愛もしたことがなく、この本みたいに周りで親しい人が死んだこともなかった。その後も変わらず平凡な日々を過ごしている。それでもこの本を読むと、自分の中をえぐられるような、ひどい痛みを覚える。

この物語は僕の経験とは全くリンクしていない。時代も違えば、出てくる人たちと共通点もない。考え方も違う。同じような体験もしてない。この本を周りの人に勧めると、内容への驚きや展開の意外性についての感想はあったが、僕のようにひどく落ち込んだ人はいなかった。感想はそれぞれがそれぞれの形で持つから、一致することのほうが珍しい。では僕がこの本から一体何を感じ取ったのか。何がそんなに、僕に対して訴えかけてくるのか。そういうことを言葉にできたらと思う。この本には誰もが経験する、ある種の普遍的なことが描かれていた。

  • すれ違いの物語
  • 強調される生きづらさ
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キューバ旅行記をKindle本にした。超簡単だけど超大変だった

先日から既に公開しているけれどあらためて。2015年に旅行したキューバの日記を電子書籍にまとめた。まとめ記事は検索からのアクセスもあり、ある程度読まれるんだけど、苦労して書いた旅行記がほとんど読まれない。これはもったいないと思い、全部ひとつにまとめてみたら、超簡単だけど超大変だった。

超大変だったこと

誤字脱字表現を直すのがめゃくちゃ大変だった。自分が書いた同じ文章をいったい何度読み返しただろう。日記は覚えているうちに書くことが先決だったため、誤字脱字の嵐だった。実はこの作業、去年から手を付けていたがあまりにもめんどくさくてほったらかしていた。やっと完了した。途方もなく疲れた。ベースはブログの文章、写真も同じだけど、新たに追加したりしています。誤字脱字、変な日本語はまだまだあると思うから、気づいたら教えてください。

超簡単だったこと

今回初めてEPUB3形式にしてみた。電子書籍の標準はEPUB2なんだけど、現在日本の電子書籍は日本語仕様の独自路線として、EPUB3が主流になっている。EPUB3用のエディタは無く、Markdownで書いたものをでんでんコンバーターで変換した。めっちゃ簡単でこれなら誰でもできる。目次の作成も自動でやってくれる。電子書籍の自己出版に興味がある人がいて、わからないことがあれば教えますよー。難しいことは僕にもわかりませんが、今回やった程度のことなら伝えられると思います。

文量は約4万字、ページ数で言うと150ページぐらい。値段は300円です。読み物か、もしくはガイドブック代わりにどうぞ。

※カラー写真が基本になるため、タブレットやスマートフォン、パソコンのKindleアプリで見ていただくことをおすすめします。それでもほとんどが文章だから、ペーパーホワイトでも読めなくはない。

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追記:頂いた感想

ありがたいことに感想を頂いているので、ご紹介いたします。

「海辺のカフカ」感想・書評

僕らの人生にはもう後戻りできないというポイントがある。それからケースとしてはずっと少ないけれど、もうこれから先には進めないというポイントがある。そういうポイントが来たら、良いことであれ悪いことであれ、僕らはただ黙ってそれを受け入れるしかない。僕らはそんなふうに生きているんだ。
上巻p343

話題の「騎士団長殺し」読みましたか?僕の手元には「騎士団長殺し」どころか「多崎つくる」も「1Q84」もなく、しかたがないから「海辺のカフカ」を再読していた。「海辺のカフカ」が発売されたのは僕が大学生の頃で、大学の本屋に「少年カフカ」が積まれていたのを覚えている。読んだのは社会人になってからだった。5年以上も前のことであり、内容はぼんやりとしか覚えていなかった。せっかく再読したんだから、ネタバレありの感想を書こうと思う。

[asin:410353415X:detail]

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「爆笑問題のススメ」に見習う

昨日のリスペクターの話のつづき。

以前にTwitterで、文学界が盛りあがらないという話を見かけた。文芸誌は売れておらず、ピース又吉が芥川賞獲ったりしないと一般読者層はついてこない。その流れも極めて一部、一時的であり、安定しているのは村上春樹が既存の文学界とは別に極めて異例の形で一般読者層にも売れるぐらい。このままでは文学界は危ういのではないかというような話だった。

しかし文学賞選考への持ち込みは多いそうだ。その中でも一部は「文藝春秋」や「文學界」「群像」などといった文芸誌を一切読まず、テレビで取り上げられる有名な芥川賞を獲って成り上がりたいだけの一般読者層だという。僕自身、小説を書いたこともなければ文芸誌を読んだことがない一般読者層だ。そもそも現代文学をほとんど読まないというのもあるが(「火花」は読んでいないが「コンビニ人間」は借りて読んだ)僕みたいなときどき本を読む一般読者層が、なぜ文学界のことを全く感知せず、文芸誌を手に取ったこともないのか。それはやはり敷居が高いから。

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クローズアップ現代のハルキスト特集がきつい #騎士団長殺し

2/23(木)に放送されたグローズアップ現代+は「いきなり130万部!?村上春樹新作フィーバー」というタイトルだった。この時点で「騎士団長殺し」の内容は全く明らかになっておらず、発売を目前にして番組で何を扱うのかと思えば、まさかのハルキストだった。その日はTwitterで「空想読書会」などというわけのわからないワードが飛び交っていたからおそらく見た人も多いだろう。僕は今やっと見た。地獄絵図ですね!!正直見てるのがつらいです!!毎年ノーベル賞のたびにハルキストたちがニュースに取り上げられ、その存在は知っていたがまさかこれほどとは…おぞましい!!

「空想本です」

なんと、まだ発売されていない本を勝手にデザインしちゃったようです。

新作速報!村上春樹フィーバーに迫る - NHK クローズアップ現代+

  • 吊し上げのハルキスト
  • 村上春樹、逆輸入作家説
  • 村上春樹ネタで遊ぶ人たち
  • 「騎士団長殺し」祭に参加する人たち
  • ハルキスト情報
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「怪しいシンドバッド」感想・書評

長いこと旅行から遠ざかっている。最後に旅行したのは去年の夏、あと4ヶ月ほどで日本に帰ってきて1年になる。どこかへ行きたい、どこか遠いところへ、そんな気持ちを常に胸の片隅に置きながらも、しばらくは眠っていた。「怪しいシンドバッド」を読んではいけない。力強く呼び起こされる。著者はこの本の中でインド、コンゴ、タイや中国、コロンビア、と世界各地を飛び回っている。全て仕事であったり取材であったりするが、中には伝統あるインディオのみが儀式で使用する「幻の幻覚剤ヤヘイ」を試しに行くという突拍子もないものも含まれている。旅行したい。目的を持たない放浪の旅みたいなのが苦手で、そういうことをやってる本を読んで憧れることはあるが、いざ行ってみると何もやることがなくて、途方に暮れてしまうのが常だった。この本のように、何かを探し求める旅行がしたい。ただ今のところ、その目当てにするものが見つからない。

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