17日目、山を登ろうと試みる

前回の続き

モスタルの街を取り囲む山がどうしても気になり、僕は登りたいと思っていた。東の方の、頂上に十字架がある山については見るからに崖が多く、僕は西側の大きな山を目指して歩いてみた。モスクがある横の道から山の方へ歩き、民家の横を通り、坂を登り、牧草地のような場所を抜けると山のふもとだった。その先は階段もなければ登山道のようなものもなく、砂利と斜面だけが続いている。僕はその時スニーカーを履いていた。少し登ったところで直感的に「これは無理だな」と思った。元々登るように整備もされていない道もない場所でズルズル滑る。このままスニーカーで上を目指して怪我でもすれば、この旅行は全て終わってしまう。僕は頂上を諦め、ふもとで写真だけ撮って街へと降りていった。

 

山へ至る道

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モスクの横の道から

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真っ直ぐ山の方へと進む

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道路をまたぎ

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民家の横を通りぬけると

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山が見えてくる

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道無き道

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ふもとより街を見下ろす

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反対側の山。ハイクツアーもあるそうだ。天気が悪い

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この写真のちょうど真ん中あたりまで行ったことになる

新市街で雨

昨日は旧市街を一通り回ったため、今度は新市街の方へ行ってみようと思った。トリップアドバイザーなどで観光先を見てみると、旧市街以外はバスツアーやタクシーで向かうような郊外が多かったため、そちらは諦めた。新市街はバスターミナルから東の方、昨日ちょうど僕が道に迷った橋を渡った方にあった。そちらも相変わらず人が少なかったけれど、マクドナルドがあったり小さなショッピングセンターのようなものもあった。レストランでは地元の老人がテラスで食事をしている姿を多く見かけた。どちらかというと若い人が少なかった。また、新市街でも多くの廃墟を目にした。これは新市街に限ったことではなく旧市街近くにもたくさんあった。これらの廃墟は紛争後そのままになっているのだろうか。

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この日も大変な雨に見舞われた。土砂降りだった。ボスニア・ヘルツェゴビナではどこに行っても雨に見舞われる。僕は教会で雨宿りをしたり、閉まっている店の屋根がある場所で雨宿りを繰り返し、一度ホステルへ戻ろうと歩き続けた。

ホステルの客、ドイツ人とクロアチア人

ホステルに戻り、雨も上がった頃になるとオーナーのおっさんが一人の男性客を連れてきた。丸坊主で身体が大きい。話してみると、ドイツ人だそうだ。ザグレブから南下してきて、次は僕と同じドゥブロヴニクへ向かうと言う。

「ドイツのどこから来たの?」

「フランクフルトだよ。ヨーロッパを旅行しているんだっけ?フランクフルトに行っても何もないよ。つまらない街さ」

「そんなことないだろう。でかい街じゃないか。空港もあるし」

「普通なんだ。観光には向かないっていう意味かな」

「なるほどね。ここの山は美しいよ。もしトレッキングシューズか何か持ってるんだったら登ってみたら?僕はスニーカーで行ってしまって登れなかったけどさ」

「そうか、でも俺はまた別の問題を抱えているんだ」

そう言って彼は自分のかかとを指さした。両足のかかとに大きな絆創膏が貼られていた。これはトレッキングどころじゃないな。

「まあでも、ちょっと街を見てくるよ。また後で」

「ああ、また後で」

彼はそう言ってホステルを出て行った。僕は特に行くところも思い当たらず、雨が降ったら嫌だと思ってホステルに残っていた。

しばらくすると、オーナーがまた別の男性を連れてきた。いかにも旅行者の風体でヒゲを生やした若い男性だった。

「俺はクロアチア人なんだ。今日はドゥブロヴニクから来た、1日しかいかなかったけどね。あそこは初めて行ったけれど、どうもツーリスティックすぎてね」

「ここはもう一人宿泊客がいるよ。さっき旧市街を回るって言って出て行ったばかりだ」

「おお、そうかい。そういや旅行者っぽい人を見かけたよ。彼かもな」

クロアチア人の男性はもうここの観光を済ませてきたみたいだ。そして夜になり、またしばらくするとドイツ人男性が帰ってきた。

「この街はコンパクトにまとまっていて見応えあったよ。ツアー客みたいなのはたくさんいたけどさ」

僕は彼らの会話を聞いていた。マジで英語全然ダメだなと思えた。今までは英語喋れない人間として、合わせて会話してもらっていただけで、彼らのスムーズな会話にはついていけない。言っていることがなんとなくわかって意見を言うことはできても、自分が主体となって話したり被せていったりすると後が続かない。英語ぐらい話せたらなあとしみじみ実感する。彼らはサッカーの話などをしていた。

「サッカーは見ないのか?」

「僕は全然わからないんだ。でもドイツに日本人の選手がたくさんいるのは知ってるよ」

「彼らは有名だよ。香川とか乾とか長谷部とか。それでまた日本人のファンってのが面白いんだ。彼らがチーム移籍するだろ?するとファンも一緒にチームを移籍してしまうんだよ」

「あれ笑えるね。俺らはクラブチーム主体でそういう応援のしかたしないから。どこでもいいのかよって感じだよな」

それでも、昨日一人で過ごしていた時間と、こうやって3人で過ごす時間はどちらも、それぞれ悪くないと思えた。

次回、18日目モスタルからドゥブロヴニクへ