人と会っていた

ここ一週間ぐらい人と会うことが続いていた。そのうち二人ぐらいは流れたが、それでも数人と会って話していた。話した内容を一部抜粋します。

アフリカ帰りの男

オーストラリアの農場で知り合った人と会った。日本に帰ってきて5日目だと言う。彼の地元は東京だが関西に知り合いがいて、神戸、大阪、京都と数年ぶりに会う人たちのところを回っていたそうだ。僕と会ったのも1年半ぶり。彼が日本に帰ってくる5日前まで何をしていたかというと、旅行だった。アフリカ大陸を4ヶ月間半、27ヶ国。そのままムンバイや東南アジア経由で帰ってきた。今回初アフリカだったということで、率直な感想を聞いて返ってきた言葉は

「居心地悪かった」

もともと9ヶ月の予定を組んでいたにも関わらず、あまりに退屈だったから早足で回り帰ってきて、いつもだったら使い切るお金も余ったとか。僕はアフリカいつか行きたいと思っていたから「居心地悪い」という感想を聞いてややがっかりだった。何がそんなに印象悪かったのか聞くと、

「とにかく娯楽がない。ツーリスティックな暇つぶしもなければ、旅行者もほとんどいない。肌の色が違うだけでタカりに遭うし、見るところも遊ぶところもなければ話す相手もいない。やることもない。だからどんどん予定を繰り上げて移動した」

と返ってきた。端的に言うと合わなかったみたいだ。彼は今回モロッコやケニア、エジプト、エチオピアといった文明と観光地のある北アフリカを避け、またスーダンやコンゴ、ナイジェリア、ソマリアのような危険そうなところも避けて通った。その結果何もない地域を27ヶ国、ただ素通りするだけに終わってしまったようだ。彼が抱いたアフリカに対する印象は、

「いまだに西欧諸国の植民地。資源と労働力のために、生かさず殺さずいいように使われている。アフリカは危険っていうイメージが一般的だけど、あれは多分西欧諸国が自分たちの狩場に他の国の人を寄せ付けないためのデマカセだと思う」

「最貧国と呼ばれる国はいくらでもあり、国際的な支援に浸かって生活してきたから、もらって当たり前だという感覚が根付いている。支援する側は見返りとして、国連などで票を集めたりしているだけのただの取り引き」

「教育も行き届いておらず、論理的思考をできる人が本当に少ない。今もまじないが大事にされている。農業がメインで、毎日ずっと同じことを何年もやって暮らしている人が多い。これからも長い間発展しないだろう」

まだまだ他にもたくさんあったが、今覚えているのはこれぐらい。

天井の先

彼女と会うのも1年ぶりだった。彼女には「若くてカッコイイ男性にチヤホヤされたい」「リッチで贅沢な暮らしをしたい」という若い女性の典型的な願望があるそうだ。以前はそこに「性欲」もプラスされていたが、最近は性欲がなくなったと言う。その理由を聞いてみると、

「一通り経験して満足したから」

ということだった。今まで充足できなかったものについて、自分の中であるていど収まりがついたらしい。つまり天井が見え、それ以上を目指さなくなった。僕はこの話を聞いて、あーこれって何事にも当てはまるなーと思った。

彼女が「若くてカッコイイ男性にチヤホヤされたい」「リッチで贅沢な暮らしをしたい」という願望を抱き続けているのも、まだ彼女の中の天井を知らないからだ。もう十分、これ以上は望まない、という天井が見えてくると、もうそんな願望には囚われなくなり、また別のことに興味が湧いてくる。僕はもともと女好きでもなければ金持ち願望もなかったから、けっこう低い段階で満足してしまった。旅行も行きたいところをある程度回って満足してしまっている。

そこから先は二手に分かれる。満足してしまい、全く興味を失ってしまうか、もしくは一旦は満足したけれどまだその先に進みたいと思うか。以前ほどの熱意や勢いは失ってしまったが、まだ続けたいと思うこともあるだろう。いつまでも上を目指して続けられるようなことなんて、あまりないんじゃないか。趣味なんかはわかりやすい例になる。最初がーっと勢いよくむさぼるようにハマって、一旦どこかで落ち着く。その後もなんだかんだで続けてしまうものが、趣味として定着する。

飽きずにいつまでも情熱を傾けられる対象があれば一番楽しいんだろうけど、多くはどこかで天井を感じる。その後が大事なんじゃないかと思った。あちこち手を出していたって、いずれはどれも天井に差し掛かる。そこで満足してやめてしまえば、先には何も残らない。天井に至るまでの経験をどう活かし、その先でどう付き合っていくか。これは人付き合いにも同じことが言える。