"オシャレ"かっこ悪い

地元京都のOPAという9階建てのビルには、主に10代女性向けのアパレルブランドが入っている。僕は疎いから全然知らない。そして最上階9階にはタワーレコード、その下8階にはブックオフ、その下7階にはダイソーが入っている。

エレベーターに乗った瞬間「この人はブックオフの客だ」というのがわかる。オタクっぽい人だ。この若い女性向けアパレルブランドがひしめき合うOPAで、オタクっぽい人の行き着く先は8階ブックオフ以外ありえない。まず男性であればタワーレコードかブックオフかダイソーに絞られる。タワーレコードの客もブックオフとは競合しないからなんとなくわかる。楽器好きそうな人。

ブックオフゾンビの服装

このような人間模様が、エレベーターに乗るだけで一言も発することなく、一瞬で判別される。僕自身はどこに向かうかというと、ブックオフだ。たまにダイソーに行くこともあるが、9割9分ブックオフにしか行かない。そして僕自身も例外なく、いかにもブックオフに行きそうな見た目をしている。整えられてない髪、ヒゲ、無地でしわくちゃのシャツ、擦り切れたチノパン。ドロドロのスニーカー。薄汚れたリュックサック。装飾品もGショックをそれと呼ぶなら、他に何もつけていない。

ただ薄汚く地味なだけで、オタクというよりどちらかと言えばホームレス寄りだが、このエレベーターではまごうことなきブックオフの客だ。しかし僕自身はそう見えることが不名誉ではない。むしろそう見えるべくしてやっているようなところもある。なぜかというと、僕はオシャレを「かっこ悪いもの」「ダサいもの」と認識しているからだ。矛盾するように思うかもしれないが、「オシャレ」という言葉自体に寒気を催すほどのダサさを見出している。

カッコつけることのカッコ悪さ

好きでやっている人を咎めるつもりはない。ファッションだったりオシャレは趣味の一環でもあるだろう。かわいい、かっこいいものを身に着けてメイクをすることは、心躍る楽しい行為、自信が持てる前向きで立派な活動かもしれない。好きにやってくれたらいい。ただ僕自身がそういうファッションとかオシャレとかに神経を注いでいないし、やりたくないというだけの話。なぜなら自分はオシャレだったりファッションにこだわったりする行為を「かっこ悪いこと」「恥ずかしいこと」だと思っているから。仮にやるとしても表に出ないようにやる。主張したくない。

"キメキメ"な態度と雰囲気が苦手なんだ。"キメキメ"な服装をしている人は"キメキメ"な態度をとることが多い。なんたってキメキメだし、「私今キメキメッ」っていうオーラが全身から滲み出ている。そのためのオシャレであり、ファッションなのかもしれないが、僕はそうありたくない。もっと楽で、ラフで、自然体でありたいから、薄汚い服装のまま出かける。ダサいことがかっこいいと思っているわけはない。キメキメに見せびらかしている姿に醜さを感じる。

自己主張の塊

髪の毛先から足の指先まで全身ゴテゴテギラギラキメキメドヤスタイルの人もいれば、自然を装った不自然オーガニック「実はそれ高いんでしょ?」臭が全身からにじみ出たいけ好かない人もいる。その人が実際どういう心持ちでそのようなファッションに至ったかはどうでもいい。ただ自分からはそう見えて、自分自身がそう見える服装をしていてたら「必死だなー」「気持ち悪いなー」「恥ずかしいなー」と思うからやらない。

他人の目線を気にしすぎと思うかもしれないが、他人の目線はあまり気にしていない。自分の目線が気になる。他人にどう思われようが知ったことではない。実際他人は僕の格好をただ地味で汚いとしか思っていないだろうから。そうではなく、自分が嫌な格好はしたくない。自分が嫌な格好とは、自己主張の激しい格好。私こんな人です、私かっこいいでしょう、私を見て、キメキメ、必死さ、必死さを覆い隠す必死さ、アピールが過ぎる。その態度が既に醜い、かっこ悪い、恥ずかしい。なるべくなら主張をカットした無味無臭の状態でいたい。