「バーニング 納屋を焼く」を見た

村上春樹原作「納屋を焼く」の韓国映画「バーニング」を見ました。ずっと見たいと思っていた。監督イ・チャンドンも評判がよく、前から気になっていた。Netflixで配信が始まり、時間ができてようやく。

バーニング 劇場版 | Netflix

近年Netflixでも韓国ドラマが流行っていた。人からも勧められ、どんなもんかと思って見てみたけれど、いまいち乗れなかった。しかし、韓国映画は違うと聞いていた。近年ではパラサイトもカンヌ映画祭・米国アカデミー賞作品賞とダブル受賞しており、もう既に一定の評価がある。これまで全く注目していなかったから、どんなもんか気になっていた。

このバーニングは、けっこう好きなやつだった。2時間以上ある映画だけど、長さも苦痛ではなかった。僕が好きだった部分は、まず人物描写。主要人物のどれをとっても特徴的なのに、誇張というか、わざとらしさを感じない。わかりやすいんだけど「わかりやすくやってます」感が薄く、自然に受け入れられた。主人公ジョンスも、女の子ヘミも、金持ちのおっさんベンも、韓国のその辺にいそう。僕が韓国のリアルを全然知らないから、違和感なく見れた部分はあるのかもしれない。

人物描写といえば、韓国映画でもドラマでもとにかく見ていて引っかかるのが、めちゃくちゃ性格の悪い登場人物たち。リアルなんだろうけど、見てられない。そういうメンタルの人物描写をとにかく視界に入れたくなくて、韓国モノを遠ざけていた部分があった。しかし今回見たバーニングはそういう心配をする必要がなかった。前に見た『新感染』には昔ながらのわかりやすい性格悪い人が出ていて、韓国映画全部が性格の悪い人物描写をやめたわけではない。

主人公のジョンスというキャラクターは、現実にこんなやついる感じがすごかった。失業率が高い韓国社会。兵役を終え、定職につくのも難しい中バイトで生活をしている。父親が傷害事件を起こしてしまったため、実家に戻ることになった。特に優れた人物ではなく、特徴のない普通の人物。普通の人物が普通に抱える問題、挫折、感情を映画の中でそのまま表現している。普通の人が、普通じゃないけれどよくあるような事件に遭遇したときの、反応。よく出ている。

人物描写に続いて好きだったのが、生活感。特に家がよかった。ちょっとした田舎にあるプレハブ小屋のようなジョンスの実家も、坂の上にあり日当たりも悪くめちゃくちゃ狭いヘミの部屋も、実に生々しい。現実の家をそのまま使ったような生活感だった。ベンの金持ち部屋は、あーいう生活を知らないからよくわからない。

生活描写をリアルに描いた映画が好きだということを、しみじみ実感する。外国の映画だと、リアルとファンタジーの中間のようなところがいい。どこかに確実にある別世界を体験している感覚。比較的最近に見た映画だと、パターソンなんかが生活映画。ローマとかも生活映画だった。生活映画LOVEです。

内容については若干ネタバレになるため、見ていない人は先に見ることをおすすめします。

結末まで見て、たけしの映画にすごく似ていると感じた。こういう方向で締めるのかと。ベンがやたらとジョンスに絡んでいたのも、自分の本質にまでたどり着いてくれる、自分を理解してくれる、自分を殺してくれるのがジョンスだということを見抜いていたからだろう。最初の方はずっと、ベンもヘミも一体なんなんだろうと思っていたが、そういう話だということを最後まで見てやっとわかった。アニメPSYCHO-PASSにも似ている。ベンは僕がこれまで見た中で、もっとも爽やかな快楽殺人者だった。

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