「光りの墓」は爆睡映画だった

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の新作映画「MEMORIA」の公開に伴い、アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ 2022 という催しが行われている。僕は2015年公開の過去作「光りの墓」を見に行った。

【アピチャッポン イン・ザ・ウッズ2022 各劇場 上映情報】|ムヴィオラ|note

映画館で寝るっていうことはあまりない(たまにある)。今回の「光りの墓」はとんでもない爆睡映画だった。寝てしまう映画と言うと、普通は退屈な映画を思い浮かべるかもしれない。ある意味その通りでもあるんだけど、この「光りの墓」はむしろ「寝るための映画」と言ってもいいんじゃないか。

というのも、前の席の人もどうやら寝ている。隣の人も、どうやら寝たり起きたりしている。劇場に来ている観客の全員が、おそらく上映時間のどこかで寝ている。いくら眠たい映画といえど、そんなことが実際にありうるのだろうか?いや、この映画に関しては、どう考えても意図的に眠気を誘っている。映画なのに!

僕は見る前から「眠気を誘う映画」という評判を聞いていたので、気を引き締めて見に行ったつもりが、うっかり数分寝てしまった!いかんいかん、と目を覚まし、画面に目をやるが、集中すればするほど…眠い…何じゃこの映画は。そして観客もみんな寝ているではないか。まるで集団催眠術にかかっているような、異常な映画体験。

この映画をソフトや配信で、自宅で見ようものならきっと、最後まで見続けることができなかっただろう。映像そのものは意味がわからない。長いし、単調で、どうしても途中で止めていたと思う。ただわからない映画という感想だけが残ったんじゃないかな。しかし映画館はそうはいかない。

「光りの墓」は眠り病にかかった兵士たちを寝かす病棟が舞台の映画なんだけど、画面のこちら側にも眠気が伝わりすぎて、映画と観客席との境界がなくなっている。スクリーンと客席がこれほどまでに一体化した映画館は、これまで見たことがない。しかも寝ている。

内容については、特に触れるところがない。あまりよくわからない。「ブンミおじさんの森」のほうが見やすかったから、アピチャッポン映画を見たことがない人はブンミおじさんを見ることをおすすめします。「光りの墓」を見ようと思う人は、ぜひ映画館で、絶対一度も寝ない覚悟で挑んでみてください。

ブンミおじさんの森(字幕版)

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