山崎元さんについて

僕が買って読んだことがあるのは「超簡単 お金の運用術(2008)」「全面改訂 超簡単お金の運用術(2013) 」この二冊だけ。山崎さんの主張は、僕の知ってる範囲でも昔からある程度一貫しているんだけど、山崎さんの本は具体的かつ実践的な内容が多いため、本の中でお勧めされている商品が、時代に合わせてコロコロと変わっていく。

時代が変わると制度が変わり、それに伴い商品のラインナップも変わる。昔書かれた書籍を読んで盲目的に商品を購入すると、今となっては時代遅れになる(例えば山崎さんはかつて日本のベンチマークに連動するインデックス投信を勧められていたが、近年は海外の指標に沿った商品を勧められている)。一貫している部分は、手数料が安く、リスクが低く、簡単なもの、このあたりだったと思う。それらに該当する、その時代の最適な商品を選んでこられた。最近ではオールカントリー。

また、山崎さんの本に書かれていることだったり、言っていることは専門家の意見なので、素人にはけっこうとっつきにくいというか、難しい内容が多い。かなり詳しく説明してくれているけれど、理解するためには勉強しないといけない。

説明をちゃんと書いてくれているという意味において良心的で、ただ盲目的に信じるのではなく、根拠や考え方の基本を提示してくれている。だから、考え方や理屈を理解していれば、時代が変わって商品のラインナップが変わっても、応用していくことができる。このあたりは、勉強する意思であったり、ある程度の適性も要求される。

「難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!」というような本も書かれているけれど、読んだことがないからどんな内容なのか知らない。タイトルから察するに、難しいことを解説していない付け焼き刃の本なのかな。難しいことを避けてきた人は、山崎さん亡き後に投資の指標を失っておののいているのではないか。

山崎さん亡きあと、誰の言葉を参考にすればいいか。そういう不安を抱えている人は、「ほったらかし投資術」で山崎さんと共著を執筆された水瀬ケンイチさんをフォローし続ければいいんじゃないか。現役で、リアルタイムでインデックス投資の情報を発信し続けてらっしゃる。

梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

水瀬ケンイチ(@minasek)さん / Twitter

山崎さんの本は二冊しか読んでないけど、最近はネットで連載されている記事などを読んで情報を更新していた。

ホンネの投資教室 | 楽天証券の投資情報メディア

人に投資関連の本を勧めるときは、大体山崎さんの本を挙げていた。投資と言えば、どうしてもギャンブル性と切っても切れない縁がある中で、人に勧めるには一番真っ当で、無難だった。本気で投資家になろうなどと考えている人は、世の中にはほとんどいない。そういう人にバフェトロジーなどを勧めてもしょうがない。最初の一歩にはウォール街のランダムウォーカーでさえハードルが高い。

僕は個別銘柄に手を出していたけれど、個別銘柄はその性質上いつまでも持ち続けるわけにいかず、売り時を考えるのがストレス過ぎて、この旧NISAが終わるタイミングで降りることにした。それからはもうインデックスのみで落ち着いている。最近は日本株の高配当も流行っているけど、僕はポートフォリオを考えたり維持する自信がないから一切手を出していない。

投資をゲームとして遊びたいなら、いろいろ手を出したらいいと思う。僕は自分の精神がもたないからやめた。今はもう堅実にやっていくために、インデックスだけでいいかなと思っている。

山崎さんはガンが発覚してからnoteの投稿も始められ、それもずっと追いかけていた。

Hajime Yamazaki(山崎元)|note

実は浪費家だったこと、酒の飲み過ぎ、転職が多かったこと、子供のこと、闘病とそれにまつわる工面や生活の見直しなど、投資以外の人生についても多く書かれていた。人生を終えられるその直前まで、何を後悔したとか、何が正解だったとか、何に満足しているとか、正直につまびらかに語られている。

この時代のこの制度のもとで、山崎さんは本当にガン保険も生命保険もいらなかったようだ。その分の必要なお金を投資で賄ってこられた。多くの人は自分でそれができなかったから、手数料が高くとも保険会社に頼ってきた。山崎さんには鉄の意志というか、冷静さとそれを支える脳味噌があったように思う。サンクコスト(取り返しがつかないから考えてもしょうがないコスト)をここまで冷静に切り離せられる人を、他に知らない。noteの最後の言葉が印象的で、まだご存命の間に僕は思わずコメントを残した。

最期の日のぎりぎりまで幸福は追求できる。一方、他人はその人を過去の業績その他で評価しようとするかも知れない。実は、このズレを上手く利用することが良い人生を送るコツになるのではないか。「本人」にとって、他人からの評価は「サンクコスト」に過ぎないからだ。
 いくら努力しても過去の蓄積を「本人」は将来に持ち込むことが出来ない。
 過去は「他人」のもの、最期の一日は「本人」のものだ。お互いに機嫌良く過ごす上で邪魔になるものは何もない。
 上機嫌なら全て良し、と思うがいかがだろうか。

「癌」になって、考えたこと、感じたこと(5)|Hajime Yamazaki(山崎元)

今回のこの日記は、ネット上で山崎元さんの追悼記事をいくつか見かけて、自分も何か思いつくことを残そうと思って書いた。

Life goes on - 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記)

山崎元氏追悼: まだ一般には受け入れられていない主張まとめ

山崎元さんと「お金」と「怒り」について - いつか電池がきれるまで