週刊連載「海外旅行」3

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とにかく、僕はその道路に沿って歩き続けた。車は一台も見かけないとは言え、車道の上を歩くのはなんだか気が引けたため、車道の左側を歩いた。道路沿いは本格的に枯れ草や雑草が増え、そのまま行けば水場や畑、村なんかもあるかもしれない。しかし前方はただ道路がまっすぐ、時折カーブを描いて続いているだけだった。空港の前で見た山はまだ右手に見える。もうかなり歩いたというのに。

さすがにここまで何もないと、この先が不安になる。今日は間違いなくこのあたりで野宿だろう。寝袋もあるから寝るには困らない。食べ物だって水だってまだある。寒さに凍えることはないはずだ。むしろ暑いぐらいだから。

かなり歩いて、そろそろ休憩しようと思い周りにどこか座れるところがないか探していると、左手の遠方に動くものが見えた。ちょうど山と反対側の空港があったほうになる。最も空港は遠の昔に通り過ぎているため、そちらに見えるのは、ところどころ草の生えた地面と空だけ。そこに動く物が見える。多分動物だろう。かなり遠く、僕は道路から離れるのをためらったが、その動物の方へ歩き出した。50mぐらいまで近づくと、もっと後ろに人影が見えた。飼い主だろうか?僕はそのまま近づいていった。

動物は馬のような、しかし馬よりももっと小さく、耳が長く顔も長い。ロバとも少し違う。背中に何か生地がかかっており、この上に人が乗るにしてはこの動物は小さすぎるため、何か荷物を載せたりするのだろう。僕が近づくのを見ても特に意識はしていないようだ。やはり人に慣れている。人の方は僕に気づいたみたいだ。後ろにいた人は、布でできたニット帽のような形の帽子を被り、薄手のローブのような服を着ていた。色も薄く、白ではないがくすんだ白っぽい、アイボリーを少し濃くしたような色だ。雰囲気は空港のロビーで見かけた中年の女性に似ている。おっさんは褐色の肌で、そんなに多くはないがヒゲを蓄えている。僕はその動物と人に近づきながら話しかけた。

「すみません、Hello, I’m looking for some places to stay like a hotel.」

おっさんは声に反応してこっちを見ているが、無言で無表情のままだ。

「Do you know where is a hotel?」

おっさんは何か口を鳴らした。鳥の鳴き声ような音だ。そして振り返り、どこかへ向かって歩いて行く。その音に反応したのか、ロバのような耳の長い動物も振り返り、おっさんの後についていった。あれが彼らの言葉だということは税関のおっさんとこのおっさんとではっきりしたが、それが僕に対して放たれた言葉なのか、それともただ動物を帰すすために発した音だったのか。僕は一瞬迷ったがこのまま道路沿いで寝ても同じことだろうと思い、動物とおっさんの後についていった。

おっさんはゆっくり歩いた。僕が大きな荷物を背負っているからだろうか。動物も僕たちに合わせてゆっくり歩いた。僕はおっさんに追い付くと、歩きながら

「どこか寝るところを知りませんか」

寝るジェスチャーを混じえて伝えようとした。おっさんも口で音を鳴らしながら手を振り、どこかを指さしているのかジェスチャーで伝えようとしている。それでもやはりよくわからないからついていくしかなかった。

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