「辺境中毒」感想・書評

先日、Kindle版が日替わりセールで199円になっているという話を聞き、買って読んだ。こちらはアヘン王国から日本に帰る経緯や西南シルクルードは密林に消えるとは別の機会にミャンマー、カチン州を訪れた話など、今までの紀行における本編に収録されなかった裏話、雑誌連載の書評、作家との対談をまとめた本だ。大槻ケンヂとの対談が面白かった。少しだけ引用して触れていこう。 

【カラー版】辺境中毒! (集英社文庫)

【カラー版】辺境中毒! (集英社文庫)

 

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角田 私は何一つ盗まれたくないんです。そして誰にも意地悪をされたくないんです。まあ無理ですけど、そんなの。

これは角田光代さんとの対談にあった一行。対談内容とは直接関係ないけれど、旅行においてこういうメンタルの人多いよなーと感じる。盗まれたくなくて意地悪されたくない(意地悪って…子供か)、そりゃあそうだろ、とも思うんだけど、それだったら大人しくリゾート旅行をするかツアーガイドを雇って丸投げしたほうが楽じゃないかなーと思う。トラブルに対して過剰に怯えたり腹を立てていたら、旅行してもあまり楽しくないんじゃないかなーって。そのくせ「特別な体験をしたい」なんて思うのはただのわがままだ。この人は仕事だからしょうがないんだろうけど。

高野 僕は自由気ままにぶらぶらする旅が、すごく苦手なんですよ。だから旅に目標がないとつまらなくて寂しい。

寂しいとは思わないが、これは非常によくわかる。目的のない旅行をしようものなら、旅先でホテルの部屋に篭ってしまうことさえある。雨なんか降ると本当にそうなる。1週間前後の滞在では、最初の数日で近場の主要なところを見終わってしまい、残った日に近郊まで行こうと思えば日数や時間が足りなかったりするため後半は手持ち無沙汰になる。そう思って人から聞いて寄ってみただけの場所とか、目的がない地域に立ち寄っても全然興味が湧かず、あまりにやることがなく暇すぎてすぐに立ち去ってしまうことも多い。オーストラリアのニンビンとかそうだった。自然に恵まれているのはわかるけど、ただの山奥だなあって。

内澤 一般的なUMA好きは、UMAそのものに執着しているんでしょうね。
高野 そうそう。UMAが好きで、存在してほしいと思っている。でも僕はそうじゃない。

高野さんは「幻獣ムベンベを追え」とか「怪獣記」、「怪魚ウモッカ」などのUMA(未確認動物:UMAは日本人による造語らしい)を追いかけた本を書いていたため、UMA専門家だと思われていたことがあった。実際には「アヘン王国」や「謎の独立国家ソマリランド」、「未来国家ブータン」、「西南シルクロード」といった未知の場所を取り扱う本であったり、「謎のアジア納豆」や「移民の宴」のように未知の食習慣について書かれた本など、ジャンルを問わず未知のものを解明するということをテーマに本を書かれている。だから書かれている内容はコアなファンでなくてもついていける本になっている。そしてコアなファンは、ジャンルが違う本まで読んでいないだろうなと思う。

内澤 モロッコには十六世紀頃につくられた砂漠の中の図書館があっ て、

これは単純に気になる。タムグルートという場所にあるこれだろうか。
Morocco – Tamegroute’s secret library | FionaDunlop

モーリタニアのシンゲッティという場所にあるこっちのほうが見た目はそれっぽい。
The Lost Desert Libraries of Chinguetti

高野 でもシーラカンスはUMA信者の心の支えだから。

これは大槻ケンヂとの対談。この発想がおもしろい、まさにそうなんだろうな。「生きた化石」と呼ばれたシーラカンスが実在したことは、嘘か誠かわからないファンタジーが実在すると判明した、まさに夢の出来事だったのだろう。もしかすると他にもまだ、古代の生物が人知れず活動しているかもしれない。歴史ファンにとってみれば、神話だったトロイの木馬が実在したことのようなもんだ。モーセの十戒を刻んだ石版も、それをおさめた聖櫃もどこかに実在するかもしれない。ノアの方舟だって。日本の歴史的遺物だと、神話に出てきた天叢雲剣などは実在する。年代測定とかしないのだろうか。

「向上心と職業意識が強いため、それを得られない老人や失敗者は自殺しやすい」ウ・フラ著『ビルマ商人の日本訪問記』

これは紹介されていた本で、1936年(昭和11年)戦前の日本を訪れたミャンマー人の残した記録だそうだ。昔から変わってない。こういう空気はいったいいつからあったのだろう。

角幡 『ムー』の影響(笑)。

角幡唯介氏との対談。角幡さんは高野さんの9年か10年後輩なんだけど、ときどきこうやって高野さんをいじる様子が伺える。おそらく、角幡さんの方が高野さんよりも常識人なのだろう。ブログや本を読んでいても、高野さんがいじられやすい体質なのはよくわかる。『ムー』の影響(笑)。といのは高野さんが探検部に入ったきっかけの一つとして挙げたものであり、中学生が読むオカルト雑誌に影響を受けて高野さんが早稲田大学の探検部へ入部したという事実を冷笑している。他にネットで読める対談記事もあるため、気になった人はどうぞ。

対談本もある

地図のない場所で眠りたい

地図のない場所で眠りたい

 

「辺境中毒」についてはこちらでもっと詳しく触れられていたのを読んだ。