「わたしを離さないで」感想・書評

もしかしたら、そうかも。そうか、心のどこかで、俺はもう知ってたんだ。君らの誰も知らなかったことをな p421

率直に言って、なんじゃこりゃーという小説だった。この前に「日の名残り」を読んでいたから、一人称の独白で過去を回想しながら現在にたどり着くという全体としての大まかなスタイルは同じだなあと思った。著者が育ったイギリスを舞台にしているところとか、時代設定は「日の名残り」と少しずれているけれど、雰囲気はどことなく共通するものがあった。でもそれ以外は同じ作者が書いたと思えない。幅が広いと言うか、人物の描写があまりにも違いすぎて、なんじゃこりゃー。というのはこれを書いたのがおっさんだとはとても思えなくて。

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「日の名残り」感想・書評

カズオ・イシグロの「日の名残り」を読んだ。いろんな意味でうまくできた話だった。展開が気になるおもしろさがあり、こっけいさを描いた笑いもあるかと思えば、仕事に打ち込み燃える姿や、政治にまつわる教養と緊迫感もある。さらにはそこに恋愛も加えられ、一人の人間が人生で経験する、あらゆる要素を自然に調和させたひとつの物語としてできあがっている。だからまず真っ先に「よくできた小説」だと思った。しかもそれが執事の物語だなんて、よくこんなおもしろく書けたもんだ。

  • あらすじ
  • 仕事をおもしろく語る
  • 仕事人間と感情豊かな人
  • 時代の移り変わり
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「日本人の英語」は難しすぎる

「日本人の英語」を読んだ。難しい。何が難しいかって、日本人が英語を習得することが難しい。著者のマーク・ピーターセンはアメリカで英米文学、日本文学を専攻し、現在は明治大学で教授をしている。バリバリ日本語を話し、この著書も自ら日本語で書いたものだ。そんな日本語が堪能なアメリカ人から見た、日本人が間違えやすい英語、理解しにくい構造がまとめられている。まさに日本人のための英語学習指南書。特に冒頭の章はインパクトが大きい。

Last night, I ate a chicken in the backyard.
昨夜、裏庭で鶏を一羽つかまえてそのまま食べてしまった。

これをみたときの気持ちは非常に複雑で, なかなか日本語では説明できないが, (中略)夜がふけて暗くなってきた裏庭で, 友だちが血と羽だらけの口元に微笑を浮かべながら, 膨らんだ腹を満足そうに撫でている――このように生き生きとした情景が浮かんでくるのである. p10

  • 冠詞、単数、複数
  • 前置詞
  • 自然な英語は、英語的発想から生まれる
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「ノルウェイの森」を読むのはとてもつらい

「ねえ、あれは本当に淋しいお葬式だったんだ。人はあんな風に死ぬべきじゃないですよ」 下巻p252

村上春樹のファンタジー冒険小説を読んでいてもこんなふうに思うことはほとんどないんだけど、「ノルウェイの森」を読んでいるととてもつらい気持ちになってしまう。この本を初めて読んだ17歳のときもそうだった。あのときはショックが大きくてなかなか立ち直れなかった。それは哀しい話で泣いてすっきりするようなものではなく、身体の内側に重くのしかかるような、読み終えた後もずっと頭から離れないような、そういうものだった。そこにあるのは、明確な痛みだった。当時僕はごく平凡な高校に通っていて、恋愛もしたことがなく、この本みたいに周りで親しい人が死んだこともなかった。その後も変わらず平凡な日々を過ごしている。それでもこの本を読むと、自分の中をえぐられるような、ひどい痛みを覚える。

この物語は僕の経験とは全くリンクしていない。時代も違えば、出てくる人たちと共通点もない。考え方も違う。同じような体験もしてない。この本を周りの人に勧めると、内容への驚きや展開の意外性についての感想はあったが、僕のようにひどく落ち込んだ人はいなかった。感想はそれぞれがそれぞれの形で持つから、一致することのほうが珍しい。では僕がこの本から一体何を感じ取ったのか。何がそんなに、僕に対して訴えかけてくるのか。そういうことを言葉にできたらと思う。この本には誰もが経験する、ある種の普遍的なことが描かれていた。

  • すれ違いの物語
  • 強調される生きづらさ
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キューバ旅行記をKindle本にした。超簡単だけど超大変だった

先日から既に公開しているけれどあらためて。2015年に旅行したキューバの日記を電子書籍にまとめた。まとめ記事は検索からのアクセスもあり、ある程度読まれるんだけど、苦労して書いた旅行記がほとんど読まれない。これはもったいないと思い、全部ひとつにまとめてみたら、超簡単だけど超大変だった。

超大変だったこと

誤字脱字表現を直すのがめゃくちゃ大変だった。自分が書いた同じ文章をいったい何度読み返しただろう。日記は覚えているうちに書くことが先決だったため、誤字脱字の嵐だった。実はこの作業、去年から手を付けていたがあまりにもめんどくさくてほったらかしていた。やっと完了した。途方もなく疲れた。ベースはブログの文章、写真も同じだけど、新たに追加したりしています。誤字脱字、変な日本語はまだまだあると思うから、気づいたら教えてください。

超簡単だったこと

今回初めてEPUB3形式にしてみた。電子書籍の標準はEPUB2なんだけど、現在日本の電子書籍は日本語仕様の独自路線として、EPUB3が主流になっている。EPUB3用のエディタは無く、Markdownで書いたものをでんでんコンバーターで変換した。めっちゃ簡単でこれなら誰でもできる。目次の作成も自動でやってくれる。電子書籍の自己出版に興味がある人がいて、わからないことがあれば教えますよー。難しいことは僕にもわかりませんが、今回やった程度のことなら伝えられると思います。

文量は約4万字、ページ数で言うと150ページぐらい。値段は300円です。読み物か、もしくはガイドブック代わりにどうぞ。

※カラー写真が基本になるため、タブレットやスマートフォン、パソコンのKindleアプリで見ていただくことをおすすめします。それでもほとんどが文章だから、ペーパーホワイトでも読めなくはない。

Kindle

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  • 無料

追記:頂いた感想

ありがたいことに感想を頂いているので、ご紹介いたします。

「海辺のカフカ」感想・書評

僕らの人生にはもう後戻りできないというポイントがある。それからケースとしてはずっと少ないけれど、もうこれから先には進めないというポイントがある。そういうポイントが来たら、良いことであれ悪いことであれ、僕らはただ黙ってそれを受け入れるしかない。僕らはそんなふうに生きているんだ。
上巻p343

話題の「騎士団長殺し」読みましたか?僕の手元には「騎士団長殺し」どころか「多崎つくる」も「1Q84」もなく、しかたがないから「海辺のカフカ」を再読していた。「海辺のカフカ」が発売されたのは僕が大学生の頃で、大学の本屋に「少年カフカ」が積まれていたのを覚えている。読んだのは社会人になってからだった。5年以上も前のことであり、内容はぼんやりとしか覚えていなかった。せっかく再読したんだから、ネタバレありの感想を書こうと思う。

[asin:410353415X:detail]

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「爆笑問題のススメ」に見習う

昨日のリスペクターの話のつづき。

以前にTwitterで、文学界が盛りあがらないという話を見かけた。文芸誌は売れておらず、ピース又吉が芥川賞獲ったりしないと一般読者層はついてこない。その流れも極めて一部、一時的であり、安定しているのは村上春樹が既存の文学界とは別に極めて異例の形で一般読者層にも売れるぐらい。このままでは文学界は危ういのではないかというような話だった。

しかし文学賞選考への持ち込みは多いそうだ。その中でも一部は「文藝春秋」や「文學界」「群像」などといった文芸誌を一切読まず、テレビで取り上げられる有名な芥川賞を獲って成り上がりたいだけの一般読者層だという。僕自身、小説を書いたこともなければ文芸誌を読んだことがない一般読者層だ。そもそも現代文学をほとんど読まないというのもあるが(「火花」は読んでいないが「コンビニ人間」は借りて読んだ)僕みたいなときどき本を読む一般読者層が、なぜ文学界のことを全く感知せず、文芸誌を手に取ったこともないのか。それはやはり敷居が高いから。

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クローズアップ現代のハルキスト特集がきつい #騎士団長殺し

2/23(木)に放送されたグローズアップ現代+は「いきなり130万部!?村上春樹新作フィーバー」というタイトルだった。この時点で「騎士団長殺し」の内容は全く明らかになっておらず、発売を目前にして番組で何を扱うのかと思えば、まさかのハルキストだった。その日はTwitterで「空想読書会」などというわけのわからないワードが飛び交っていたからおそらく見た人も多いだろう。僕は今やっと見た。地獄絵図ですね!!正直見てるのがつらいです!!毎年ノーベル賞のたびにハルキストたちがニュースに取り上げられ、その存在は知っていたがまさかこれほどとは…おぞましい!!

「空想本です」

なんと、まだ発売されていない本を勝手にデザインしちゃったようです。

新作速報!村上春樹フィーバーに迫る - NHK クローズアップ現代+

  • 吊し上げのハルキスト
  • 村上春樹、逆輸入作家説
  • 村上春樹ネタで遊ぶ人たち
  • 「騎士団長殺し」祭に参加する人たち
  • ハルキスト情報
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「怪しいシンドバッド」感想・書評

長いこと旅行から遠ざかっている。最後に旅行したのは去年の夏、あと4ヶ月ほどで日本に帰ってきて1年になる。どこかへ行きたい、どこか遠いところへ、そんな気持ちを常に胸の片隅に置きながらも、しばらくは眠っていた。「怪しいシンドバッド」を読んではいけない。力強く呼び起こされる。著者はこの本の中でインド、コンゴ、タイや中国、コロンビア、と世界各地を飛び回っている。全て仕事であったり取材であったりするが、中には伝統あるインディオのみが儀式で使用する「幻の幻覚剤ヤヘイ」を試しに行くという突拍子もないものも含まれている。旅行したい。目的を持たない放浪の旅みたいなのが苦手で、そういうことをやってる本を読んで憧れることはあるが、いざ行ってみると何もやることがなくて、途方に暮れてしまうのが常だった。この本のように、何かを探し求める旅行がしたい。ただ今のところ、その目当てにするものが見つからない。

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「パプリカ」感想・書評

筒井康隆のSF小説「パプリカ」を読んだ。この人の長編小説を読むのはこれが初めてだった。代表作はなんだろうと思って調べていたら「旅のラゴス」っていうのが評判がいい。そのうち読むかもしれない。「パプリカ」の方は映画を先に見ていたため、どうしても映画のイメージが強かったが、映画と原作は結構違った。映画はいわばダイジェスト版であり、映像で魅せる演出が多彩で、内容もしっかり1時間半でおさめられている。原作はもっと長い物語を詳細に描いている。映画にあった目まぐるしく多彩な展開は部分的であり、地道なSF物語がじわじわと進む。

映画のトレーラー

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風呂で本を読む習慣

風呂で本を読む習慣がある。昔からではなく、つい最近の話だ。なぜ風呂で本を読むようになったか。風呂に入ると暇で、すぐにあがってしまう。そして脱衣所に出ると寒い。銭湯や温泉に行ったときは、外が寒いぐらいであっても涼しく感じる。それは体が温まっている証拠だ。自宅の風呂からあがり、脱衣所ごときで寒いようなら、それは体が温まっていない証拠だ。もっと長くつからないといけない。しかし風呂場は暇である。何もやることがない。そんなところでじっとしていられるのはせいぜい数分で、すぐに限界が来る。何か考えようものなら、調べたりメモを取りたくて居てもたってもいられなくなる。

風呂場の暇を解消するために、テレビなんかを置く人もいると思う。しかし僕はテレビを見ないし、そのために買おうとは思わない。スマートフォンを持ち込む人もいるだろうが、僕のスマートフォンは防水ではないから濡れると壊れる。それで本を持ち込むことにした。本も濡れると読めなくなるが、スマートフォンほどの損失ではない。そして余程のことがない限り濡らしたりしない。浴槽の上にフタをして、ハンドタオルを置いてその上で読むからだ。

風呂場で本を読むのはいい。他にやることがないから、読書に集中できる。参考書や勉強の本を持ち込んでもはかどる。湯あたりしやすい人は、思考が働かなくなるのでご注意を。おすすめなのは、風呂に入って体や頭を洗って、他にやることがない状態にしてから湯船につかり、じっくり本を読むことだ。先に体や頭を洗ってしまわないと、本を読んだ後ではぐったり疲れて億劫になる。先に頭を洗っていると、濡れた頭が外気によって冷やされ、湯あたりしにくい。そうやって1時間ばかり湯船で本を読む生活をしている。

ひとつ困ったことは、最近電子書籍の購入が増えたことだ。Kindleやスマートフォンを風呂場に持ち込むのはリスクが高い。だから風呂場で読むのはどうしても紙の本になってしまう。だったら全部紙の本で買ってしまえばいい、という風にはならない。電子書籍には電子書籍の利点がある。例えば夜、電気を消してから布団の中で読むことができる。僕は寝付きが悪いほうで、電気をつけたまま寝ることができない。そして、眠くなってから電気を消そうと布団から出てしまえば、目が覚めてしまう。電気のスイッチまでは歩かないといけない。読書灯のようなものもあるにはあるが、角度によって光が当たらないため、読書灯で本は読みづらい。結局、電気を消した状態で本が読めるKindleは便利なのだ。

風呂場で読む紙の本と、ベッドで読む電子書籍に分ければいい。そりゃあそうだ。しかし僕は、基本的には一冊ずつしか本を読めない。同時進行で紙の本を2冊読んだり、紙の本と電子書籍を交互に読んだりできないのだ(今は例外的に紙の本を2冊読んでいるが)。だから、紙の本であれば紙の本、電子書籍であれば電子書籍、そのときに読んでいる本を読み終えるまで切り替えることができない。めんどくさいやつだ。そういうわけで、ちょうど電子書籍を読んでいたときに一度、Kindleを風呂場へ持ち込んだことがある。ビニール袋に入れて密閉し、水や水蒸気が入らないようにした。その上からフリック操作できるかも確かめた。いざ、風呂場Kindle。

結果、包んだ袋がよれて文字がはっきり読めなかった。無理して読むことはできたが、目が疲れる。これはナシ。おそらく防水キットなんかを探せば売っているんだろうけど、そんなものを買うほどのことでもない。風呂場の電子書籍はあきらめよう。これ、スマートフォンだったらダメなんです。なぜかというと、スマートフォンはいろんなことができるから、風呂場に持ち込んだところで読書に集中できない。初めは風呂場の暇を解消するための手段だったのが、いつのまにか快適な読書環境を風呂場で実現しようとしている。

お題「ひとりの時間の過ごし方」

2017年時点の電子書籍事情と未来予測

2015年の秋頃、アメリカで電子書籍が失速し、紙のメディアに戻る流れがあるというニュースを見て、ホッと胸をなでおろした旧体制の保守派にいる方々は多かっただろう。2012年に紙媒体を廃止し、電子版のみに移行していたNewsweek誌は、わずか1年で紙媒体を復活させた。日本だと2015年に週刊アスキーが電子版へ移行したが、たった半年で紙媒体が復活している。

そうかと思えば2016年にはイギリスのインデペンデント紙が紙媒体を廃止し、電子版へと移行している。ニューヨーク・タイムズは電子版の購読者数を順調に増やしながらも、売上の大半は紙媒体の広告費が占めており、電子版の存在意義は薄い。

いずれも不況の煽りを受けているのか、産業構造の移り変わりに対応しきれていないのか、紙媒体を復活するにせよ廃止するにせよ全体的な業績は下降気味であり、儲かっていない中での試行錯誤であることが伺える。

  • 出版は衰退するのか
  • 出版および電子書籍の現状と未来
  • 具体的な未来予測
    • 高価な「ハードカバー」と安価な「ペーパーバック」
    • 高価な「紙の本」と安価な「電子版」
  • 電子書籍の今
  • 紙の本と電子版を比べる
    • 紙の本のメリット(電子版のデメリット)
    • 電子版のメリット(紙の本のデメリット)
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本気の人はおもしろい「怪魚ウモッカ格闘記」感想・書評

「もうアートなんか超えた、まったく新しいジャンルですよ」

これは当時39歳のノンフィクション作家、高野秀行が「謎の怪魚ウモッカ」を探しにインドへ向かう話だ。約10年前の現代、2006年に書かれた本である。「謎の怪魚ウモッカ」とは、日本人のモッカさん(ハンドルネーム)が1995年にインドのプーリーを訪れた際に、目撃したものだ(魚+モッカの造語でウモッカ)。モッカさんは惜しくもカメラを持参しおらず、その場で描いたスケッチだけが唯一の手がかりとなる。ウモッカのスケッチは現在確認されているどの海洋生物にも当てはまらず、図鑑にも載っていない。海洋学専門家に尋ねてもそんなものは見たことがないと言われる。もしウモッカが確認されれば、シーラカンス以来の世紀の発見になるかもしれない!「怪魚ウモッカ格闘記」の始まりだ。

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やっぱりドストエフスキー読もうぜ!

ピピピのブログで、記事内容を読むのがめんどくさい人用に動画で読みあげるっていうのをやっていたのでパクります。

↑読むのめんどくさい人は再生(30分)

映画の黒澤明に続き、定番シリーズです。別に、自称本好きのくせにドストエフスキーも読んだことないやつってハーン?と言いたいわけではないです。ただ読んでいないなら、やっぱりおもしろいからオススメしたい。そのことを先日「地下室の手記」を読んで改めて感じた。「罪と罰」はもう4、5回読んでいる。「カラマーゾフ」も2回は読んでいる。「悪霊」はまだ読んでいないから読みたい。初めて読む人にオススメしたいのは、先日読んだ「地下室の手記」だ。

  • ハードルの低い「地下室の手記」
    • ロシア人の名前問題
    • キリスト教的価値観
    • 時代設定
    • 本の分厚さ
    • 手始めに「地下室の手記」
  • 意外と読みやすい「罪と罰」
  • 難解でも止まらない「カラマーゾフの兄弟」
  • 頭のおかしい人ばかり
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「地下室の手記」は見てられなかった…感想・書評

「俺は駄目なんだ……なれないんだよ……善良には!」

「地下室の手記」は読むのが大変だった。おもしろくないとか文章が読みにくいとか、話がややこしくてわかりにくいとかそういうわけではなく、目を背けたくなるような内容だから読み進めるのが苦痛だった。ある意味で刺激が強い、というか、テレビや映画などでよく目を背けたいシーンがあるだろう、そういう感じだ。それは決して、映像としての残酷な描写が多いからじゃない。精神の奥底をえぐられるような、これ以上白日のもとに晒すのはやめてくれと叫びたくなるような、思わず本を閉じてしまうような、そういう内容だった。ただ実際は2日で読んでしまった。ページも141ページと多くない。光文社古典新訳で読んだが、19世紀に書かれた本だから時代の違いと現代語の翻訳にちょっと変な感じがあった。それでもおそらく読みやすいのはこちらのほうだろう。これは別の訳で読んでみるとまた全然違ってくるだろうから、別の訳でも読んでみたい。

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