「アメリカ」感想・書評

アメリカという小説がある。それをふと思い出した。

少年がドイツの家を追い出され、アメリカの親戚に預けられることになったが、親戚の勘違いからそこも追い出され、その後住み込みで働くことになったが、些細なことで他人のミスを被ってクビになり、そのうちサーカス団に騙されて連れていかれるというような話だった。

ヨーロッパから新天地のアメリカへ渡ったにもかかわらず、何事もうまくいかないまま不幸に翻弄され、それを受け入れながら転々とする。
僕はこの本について前にもここに感想を書いていた。その時も同じようなことを書いたと思う。

このアメリカは、本人の力が及ばないところで何事もうまく行かず、振り回される様子が喜劇のようにとらえられることがあるらしい。どちらかと言うと、コミカルに見られることの方が主流だそうだ。

僕は、それが信じられなくて、不条理に翻弄され、不幸を繰り返す様子を笑うことが許せなくて、とても哀しい気持ちになった。笑いごとでは無い。

でも他人から見たらそうなんだろうな。これはフィクションだけど、僕は笑えない。

そういう生き方しか出来なかった人間として。その後を辿る人間として。