キューバ旅行記3日目⑧「ギブアンドテイク」

前回の続き

キューバ人のたかり行為

僕はお釣りが返ってこなかったことに対して特別文句を言う気力がなかった。ラチェはどんどん自分の話をしだした。

「俺はボクシングをやっていた」
「俺はマフィアをやっている」
「かつてはドラッグディーラーだった」
「銃を持っている」
「女は好きか?17歳のキューバ人を紹介する、金はいらない」

ああ、どんどんヤバイ方向へ。僕はとにかく早く彼と別れたかった。

 

「そのサングラスかっこいいな」

「これか?欲しい?あげるよ」

僕は3年ぐらい前にヴィレッジヴァンガードで1,000円で買って一度ツバが取れて直した、ズレまくるサングラスをラチェにあげた。

「どうだ?似合うか?写真撮ってくれ」

僕はその場でラチェの写真を撮った。

「やっぱりブレスレットやるよ、お前の母親にあげてくれ」

向こうは一方的にもらうのが悪いと思ったのか、ブレスレットを手に握らせた。僕は既にビールを飲み干していた。そして「今日は一旦ホテルへ帰る」と何度も言った。

「どこのホテルだ?この近くか?」

「そうだよ。Isla Azul Caribbeanだ」

「近所じゃないか!困ったことがあったら何でも言ってくれ」

僕はそうやってようやくラチェから解放された。

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ラチェに撮ってくれと言われたTattoo

ギブアンドテイク

ラチェや昨日のキューバ人に関して思ったことがある。彼らはこのようなたかり行為を全く悪気なく行っていた。向こうからすれば自分が情報提供したり助けたのだからその見返りをもらうのは当たり前だろうと、そういう意識みたいだ。そしてマイフレンド、マイフレンド、と呼ぶ。昨日のキューバ人のたかりにしたって、ブエナ・ビスタのショーを教えてもらい僕達としては結果的によかった。そして今日もATMが使えて僕は助かった。その分の見返りとして$10のチップであったり、コーラやタバコをもらうのは向こうは当たり前だと思っている。この感覚というのは日本人には全く馴染まないんじゃないか。

それはただのギブアンドテイクの関係であり、友達とは違う。僕は友達とは見返りを求めない関係だと思っている。友達にかぎらず、親しい間柄というのは見返りを求めないものだ。もちろん向こうだって会ってすぐの人間が本気で友達とは思っていないだろう。つまり、やはりただのたかりなのだ。だから、たかりに対して見返りを渡す気が無いのであれば、安易に質問したり何かをもらったりしては絶対にいけないと思った。これはまさにマフィアのやり方だ。トロントで家具店を経営している友人が言っていた、マフィアからは一切何も受け取らず、一旦受け取っても全てすぐに返したという話を思い出した。

ホテルの電話が鳴る

時間は夕方4時頃。僕はホテルの部屋に入り、先ほど買ったラムを飲みながらタバコを吸い、昨日撮った写真をRAW現像したり旅行のメモを取っていた。すると部屋の電話が鳴った。もしや、これは本当に驚いた。ラチェは僕のホテルを知っている。

「Hello」

「ああ、俺やけど暇やから来てん」

自由行動中の友人だった。一気に安堵した。

「とりあえず上がる?」

「そうやな、ちょっとトイレ借りたいし」

友人は僕の部屋に来た。そしてお互い今日の自由行動中にあったことを報告し合った。僕はラチェについて全部話し、写真も見せた。友人も道かバーの場所か何かを聞いたたとかで、酒をおごったという話をしていた。そのキューバ人は2杯目を頼もうとしたから2杯目は奢らないと言って断ったそうだ。お互いだいたい同じような経験をしていた。

ライス屋へリベンジ

僕らは今日の食事をどうするか話し合った。おとつい食えなかったチャイナタウン近くのライス屋へもう一度行ってみるのはどうだろう、ということでそこに決まった。僕のホテルからは歩いて30分ほどだろうか。道はもうわかっていた。ライス屋に着くと、既に並んでいた。今日はチェックインに急いでいることもないため、最後尾へと並んだ。今日も観光客は一人もいない。僕らの順番が来たものの、何をどうやって頼めばいいかわからず、そのへんの客が持っているプレートとメニューを指し「これが欲しい、これはいくらだ」みたいなことを友人が聞いた。人が多く並んでいることもあり、僕は友人に二つ頼んでくれとお金だけ渡していた。頼んでからも15分からそれぐらい待つことになった。キューバではどこでも待つ羽目になる。待てない人はキューバで何もできない。

プレートが運ばれてきた。それはライスと魚のフライだった。豆のソースがかかっていなかった。二人とも「あれ、豆のソースは?」と思っていたがとにかく食べ始めた。味がちょっと薄かったからカウンターに置かれていた塩を借りた。ちなみにこのCafeteriaのスタイルはテーブルやイスなんかない。みんなそのへんで立ち食いしている。友人はしきりに「空いているスペースにイスとテーブル置けばいいのにな」と言っていた。

豆のソースが惜しかったものの、味はうまく量が多い。そして10人民ペソ(約50円)という圧倒的な安さ。ハバナでは200円もあれば1日全部外食で済ますことができる。

バーが見当たらない

食事が済むと、今度はピザ屋の近くにあった昨日客でいっぱいだったバーにもう一度行ってみようということになった。チャイナタウンからはそれほど離れておらず、向かったところ、なんと閉まっていた。日曜だからだろうか。じゃあしょうがないけどまた酒屋でビールでも買うか、と言って酒屋へ行くが酒屋も閉まっている。しかし、そのすぐ近くにある酒屋を併設したイスのあるスペースがあった。なんと言えばいいのだろう。酒しか置いていないフードコートのような場所だ。Crystalビールを買ってそこに入った。

親切について

僕らはそこで2本のビールを飲んでいた。僕はお酒に弱いからそれだけでもかなり酔っていた。友人は「キューバ人合わない」という話をしていた。今まで何度も金をたかられたり客引きにあったりチーノと罵られたり、キューバが嫌いになっていたみたいだ。僕はそこに追い打ちをかけるように

「相手に頼ったら見返りは求められるって、相手を利用したんやから見返りは与えて当然やろ、向こうはビジネスなんやから」

などと昨日今日の感想を踏まえて述べた。

「なんでそんな騙す方の肩を持つねん?そんなんただのたかりやろが」

酒が入っていたせいもあってか、そこでちょっとした口論になった。僕自身の教訓や、彼の信条が相容れない形となった。僕も彼もキューバで痛い目を見ている。キューバへ行った他の人のサイトに書いてあったことだが

「自分から声をかけて道を聞いたりすれば、大抵みんな見返り無しに親切に教えてくれる。向こうから声をかけてくるやつは相手にするな」

これは他の国でも、日本でも通用することかもしれない。向こうから声をかけてくる人というのは間違いなく何か見返りを求めている。それはビジネスだ。利害が一致することはあっても、少なくとも親切ではない。親切とは見返りになしに応えてあげることだろう。

僕らは少し気まずい状態で夜12時頃を迎えた。僕はまだ酔っていた。明日は午前中からビーチへ行くことにして、友人が僕のホテルに朝10時頃来る約束して解散した。

次回、キューバ旅行記4日目「Santa Maria」へ続く

※電子書籍にまとめました。タブレットやスマートフォンのKindleアプリで読めます。

記録キューバ旅行

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