奇跡の彩りで描いた「ムーンライト」感想・評価

いつかは見たいと思っていたが、やっと見た。同年にアカデミー賞6部門受賞となったララランドとは対照的で、シンプルな彩りを結晶化したような作品だった。

ムーンライトがよかったのは、何よりもその画のきれいさ。「二九歳までの地図」でたけきさんが「どのシーンのどのカットも画になる」「ムーンライトの画で世界が見えるメガネがほしい」と言っていたが、一番最初のシーンであるホアンが運転するキャデラックの反射から既にいい。さらに言えば音楽もかなりいい。冒頭でシャイロンがホアンに飲食店に連れて行ってもらって「名前ぐらい言えよ」と話すシーンでかかっている飲食店のBGM、どっかで聞いたことあるなーと思って検索したらこれだった。

こういう随所でかかっている音楽が抜群にいい。主張はしていないのにしっかり残る、ムーンライトの画を作る重要な要素になっている。

物語自体はアメリカ黒人の日常風景を描いたドキュメンタリーのような単調さ。よくこんな普通の内容をきれいに描いたなーというぐらい、やはり画作りがすごい。色調を非常にうまく使い、余計な装飾や説明がいっさい省かれている。

ただ日本人の我々からすれば、アメリカ黒人の日常風景にどこまで寄れるかというのはあった。僕は10月に「ハイパーハードボイルドグルメリポート ~ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯~ 」を見ていたから、これがいかに日常の風景なのかなんとなくわかったけれど、普通に生活していたら特別な物語のような印象を受けるかもしれない。貧困、ドラッグ、家庭問題、ゲイ、学校のいじめ、ギャング、我々日本人だけでなくアメリカ白人にだってこういう日常にはあまり縁がない。

でもおそらく、こういう要素を省いたとしてもこの映画は画になっていたと思う。これらは特別なものとして描かれていないから、要素自体は強調されておらずそれほど重要じゃない。例えば日本人、上京組、30代、派遣社員、彼氏無しの女性で同じような日常物語を作ろうと思ったらできると思う。多分アメリカ黒人にとってはそれぐらい馴染みのある身近な風景。でもこの映画みたいに主張なく流れる画で仕上げようと思うと、それこそ奇跡みたいな力が必要なんじゃないか。

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