映画Podcast「二九歳までの地図」の話

今年の夏頃にジョギングをやろうと思って、走っている最中に持て余す暇を解消する手段をいくつか探していたところ、一つのPodcastに行き当たった。

ジョギングは続かなかったが(ネタが途切れがちなのと胃に食物が残った状態で走るのがつらかったため)、その後もPodcastは通勤時間中に聞き続けることになった。そのPodcastというのが底辺文化系トークラジオ「二九歳までの地図」。

山田さんという20代前半会社員兼ラッパーの人がメインで喋っているPodcastで、サブで金内たけき夏アニメーションさん、映画監督の息子である金子さん、金田兄弟、カリギュラは気まぐれのタカシマさん(Podcast中では何度もカリタくんと呼ばれている)、ゼブラクラブの西さん、谷さん、藤本さんといった友人繋がりに、今年からは元リスナーの怜人さんを加え、東京近辺の若い人たちが主に最近見た映画のことなどを喋っている。

このPodcastを聞くようになってから映画を見る回数が増え、今年は結局50本近く見ることになった(去年は半分以下)。

そういうわけで、今回は「二九歳までの地図」の話。

29地図(にくちず)の魅力

このPodcastを知ってからというもの、過去回をさかのぼって聞いていた。全部は聞いていないけれど、興味ありそうな回や見た映画の回などけっこう聞いた。それほどまでにハマった理由というか、魅力をまず紹介していきたいと思う。

29地図の一番の魅力は「素人感」だと思う。配信されているPodcastは一切編集がない。ボリュームもちぐはぐで言い間違いや繰り返し、咳払いなんかも連発している。音声配信に小慣れた人ならそういうところに気を遣うんだけど、29地図はあえてかめんどくさいからか、そのまま全部載っけている。そこがいい。

仲間内でダベっている感じ、ナマの感じ、リアルな感じがそのまま流れていて、作り物の感じがしない。リスナーに媚びるようなことは一切なく批判もガンガンする、サーヴィス精神も予定調和もない、ただ好きなことをやっている感じが一番の魅力だ。でも会話に間が空かなかったり、内輪にしかわからないネタを話して盛り上がるようなことはないから、実はこの魅力も演出の上で計算されているのだろう。

この「素人感」をさらに盛り立てるのが、コンテンツとの絶妙な距離感だ。彼らは映画評論家ではないが、一般の人よりたくさん作品に触れており、批評する能力も高い。この「詳しい素人」という専門家寄りではない素人寄りの立ち位置から繰り広げられるトークに妙に親近感が湧き、詳しい素人にとっての「ちょっと高度なあるあるネタ」みたいなものを連発していく。単純に参考にもなるし、聞いていておもしろい。配信メンバーは実は映画の関連会社で働いていたり、映画監督の息子だったり、学生時代に映画を作っていた映画美学校の卒業生だったりと、専門家寄りに話すこともできる。しかし専門用語を使わず、業界感をまるで醸し出さず、親近感のある作りに徹しているのは計算された演出に違いない。

最近ではリスナーも増え、作家や本職のラジオパーソナリティも拝聴していることが明らかになりメジャー化まっしぐらの29地図だけど、僕はこの「素人感」が一番の魅力だと思うから、メジャー感なんてクソ食らえな今までのスタイルを貫いてほしいと思います。

ベスト回、第12回「ブックオフハンター」

そんな中から僕が選ぶ今までのベスト回は、去年のブックオフ回。聞くものがないときに何度も繰り返し聴いたすべらない回。29地図は基本的には映画系Podcastなんだけど、この回のように他のいろんなテーマについても話している。

金子さんのコミックLOを彷彿とさせるブックオフミステリー体験はめちゃくちゃ笑った。その他に死んだ目で一日中マンガコーナーで立ち読みしているブックオフゾンビの話や、あのねのねのテーマソングに隠された秘密など、あるあるネタのちょっと上を行くところが非常におもしろかった。

僕自身、中学生ぐらいの頃はよくブックオフに通っていた。他にも似たような形態の店でコミックショックとかあったけれどほとんど潰れた(高野に残っていた)。そんなブックオフの思い出話にひたれて良かったです。

西さん回、第67回「サイバーパンク」

この回は僕が初めて聞いた回で、一発目として度肝を抜かれた。もともとAKIRAや攻殻機動隊が好きだったし、サイバーパンクの話題というだけで興味があったんだけど、まさかSDガンダムやアイアンリーガーの話をここまで掘り下げられるとは思わなかった。アイアンリーガーなんて単語何年ぶりに聞いただろ。

29地図の話し手としては西さんが一番歳が近く、SDガンダムとガンプラのくだりはめちゃくちゃ熱かった。「妖怪ウオッチがメディアミックスとか騒いでるけど、あんなものは二番煎じですらない」という語りから、マンガ、ガン消し、プラモ、カードダス、ゲーム、アニメとあらゆるメディアミックスが本当に行われていた当時を淡々と語る。当時を生きていた世代からすればめちゃくちゃ熱い。

メインの映画回もおもしろいです

映画回に全く触れていない。最新回は2017年の映画ベスト10を選ぶ回だった。今年に入って映画はたくさん見たけれど、今年上映の映画ってちょうど10本ぐらいだなーと思っていたらメールを送りそこねてランキングには参加できなかった。

実際聞いてみると、今年のランキングはかなり気軽な感じでみんな自由に選んでいた。見た中で今年の映画ベスト3を挙げるとしたら、ムーンライトブレードランナー204920センチュリーウーマンあたりになるのかな。次点でララランド。見たかったけれど見ていない映画としてダンケルク、パターソン、エンドレスポエトリーがある。

僕がメールを送ったのは、どいラジという他のPodcastとのコラボ企画、初対面の相手に「一番好きな映画は何ですか?」と訊かれたら何と答えるか。

29地図内でも最近よく90年代ノスタルジーの話題が取り沙汰されているが、僕が送ったラインナップもまさしく90年代の映画だけだった。一番好きな映画である「マイ・プライベート・アイダホ」については唯一怜人さんのみが知っていて、全体的に「90年代に流行ったミニシアター系」と称された。僕自身は全く意識しておらず、ミニシアター系が何を指すのかさえ知らないが、僕が見ていた映画は90年代ミニシアター系ばかりだったようだ。

そういうわけで、今後も29地図を応援しています。最近は去年からのメンバーがあまり登場されなくなり、いろいろ事情はあるかと思いますが、去年のメンバーと怜人さんが混ざる回も楽しみにしています。

底辺文化系トークラジオ「二九歳までの地図」

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