恋愛・結婚におけるマッチングの難しさ

去年急に結婚したこともあり、「どうすればいい相手を見つけられるか」といったことをときどき聞かれるようになった。恋愛だったり結婚だったり、相手探しに奔走している人は多いようだ。

いい人がいない

「いい人がいない」という言葉は常套句になっている。いい人とはいったいどういう人なのか。話を聞いている限り、自分の願望を満たし、なおかつ自分に好意を抱いてくれる人が、いい人という意味らしい。自分の願望を満たす人はたくさんいるけれど、既婚だったり自分の方を見てくれない。あるいは自分に好意を持ってくれる人はいるけれど、自分の求める条件を満たしていない。その結果、多くの人の口から「いい人がいない」という常套句が漏れる。

「いい人」、すなわち条件を満たしつつ、なおかつ自分に好意を持ってくれる人を見つけるために取られる手段として、とにかく数を当たるという方法がある。「いい人」という低い確率の当たり判定を、絶対数を増やすことによって実現させる。そのために世のマッチングサービスは、あらゆる形式で発展している。

「いい人」以外の二つの選択肢

しかしそれでも「いい人」に出会えなかった場合、状況を打破するためには、二つの選択を迫られる。一つは、条件を満たす人を自分に振り向かせる。もう一つは、条件を満たさないけれど、自分の方を向いてくれる人で手を打つ。相手が折れるか、自分が折れるか、いずれかを成し遂げることにより、「いい人」以外のところでマッチングが成立する。

まとめると、パターンとして3つに分かれることになる

①お互いの希望に沿う「いい人」に巡り合う
②相手を振り向かせる
③自分が妥協する

一番難しいのは、言うまでもなく①「いい人」に巡り合うことだ。

その人は本当に「いい人」なのか

「いい人」だと思っていても、そうじゃないことだってたくさんある。それを判断するのが恋愛段階だったりするが、わからないまま結婚して判明することもある。自分が相手にとっての「いい人」じゃなかった場合もある。

特に相手探しのマーケットにおいては、マッチングを成立させるために自らの条件を盛る傾向がある。条件で絞ったはずなのに、いざ親しくなってみると全然違ったってことは日常茶飯事だ。

マッチングの条件提示にはカマシ、嘘騙しが数多く存在するため、いくらでも誤魔化せるような表向きの情報はあてにならない。そういう嘘を見抜く手順だったり、ミスマッチを繰り返していると、やがて相手探しそのものに疲弊する。

そういう後々のミスマッチは、「いい人」だと思っていたパターン①だけでなく、他のパターンでも起こりうる。でもそれは後々のことだから、ここではひとまず保留する。

一番簡単なマッチング方法

「いい人」と巡り合うことを待つのに疲れ、別の方向でマッチングを成立させる人は多い。一番簡単にマッチングを成立させることができるのは、パターン③だ。自分が妥協する。言い寄ってくる人がいるなら、自分のさじ加減次第でマッチングは成立する。ただし誰からも好かれない人に、パターン③の手段は取れない。そして実際のところ、③の手段が取れない人は、パターン②の手段も取れない。誰からも好かれない人に、誰かを振り向かせることができるとは到底思えない。

まず、人に好かれるところから

パターン③の手段も取れない人は、まず自分が人に好かれる人間になるところから始めないと、スタートラインにさえ立てない。この段階にいる人は、何から始めたらいいだろうか。正直なところ、他人が自分のどこを好きになってくれるかは、人によるからわからない。まずは見た目とか性格とかお金とかそういうわかりやすい話ではなく、人として何がしかの魅力を備えたほうがいい。

僕がおすすめするのは、好きなことを見つけること。何か夢中に取り組めること、努力が苦にならない対象を見つけること。その筋の第一人者になったりプロになる必要はなく、趣味レベルでいい。上手ければそれだけで魅力的だが、何かを頑張っている姿だったり、夢中な姿というだけでも十分魅力的なものだ。何かを好きな人は、輝いて見える。

あとはその魅力が伝わる場に参加すること。競い合う場、高め合う場、共有する場。そういう場所が自然にマッチングの場となる事例は枚挙にいとまがない。マッチングそのものを第一目標としないほうが成果は出る。マッチングはあくまで副産物として、自分の好きなことを楽しむ方を重視しよう。それだけでも魅力は備わる。

それでもスタートラインに立てない、すなわち人に好かれないようであれば、何か個別の理由があるんじゃないだろうか。誰にでも何かしら、個別の特性がある。何事も程度の問題だから、個別案件はここでひとまずパスして先に進む。

「妥協」で失敗しないために

スタートラインに立ったとして、③自分が妥協する、つまり自分はそれほど好きじゃないけれど、自分に好意を持ってくれる人で手を打つというパターンが、マッチングを成立させるには一番簡単だ。とにかく彼氏・彼女がほしい、結婚したいという人は、自分を好きになってくれる人で手を打つことは珍しくない。相手に対してそこまで願望がなく、相手に言い寄られて手を打つことも、形式としてはパターン③に近い。

問題は、「③自分が妥協する」という手段が取れる人は、既にやっているケースが多いことだ。要するに、妥協できないからこそまだマッチングを待ち続けているのであり、そういう人は妥協したところで失敗を感じたり、相手に不満が出てくる可能性が大いにある。

妥協を選択するにあたっては、ただ妥協するだけではうまくいかない。その選択に対して、自分なりの納得感を持つことが重要だ。例えば、相手は自分の希望条件を満たさないけれど、自分のことをすごく好いてくれるから、日々の満足度は上がる、とか。最初の希望通りではなかったとしても、何か別の条件で上回ることができれば、妥協に納得できる。納得できていれば、後々不満もいだきにくい。

理想の人に振り向いてもらう

条件に妥協ができなくて、どうしても自分の希望に沿う人と付き合いたい、結婚したいという人は、パターン②相手を振り向かせるしかない。言い換えれば、相手に自分で妥協してもらう。何を隠そう、僕自身がとったのもこの手段だ。僕は結婚願望がなかったから、よほど自分がいいと思った相手でなければ、結婚などあり得なかった。

そもそも相手を探していなかったから、婚活的なマッチングサービスを利用したことがない。そういった相手探し市場の外で、僕は相手を見つけたことになる。仕事で例えるなら、新卒なり転職なりの採用マーケット外のところ、スカウトにあたる。スカウトは採用と違い、こちらから相手の希望に合わせていかなければいけない。結果的には、相手を納得させる形でマッチングが成立した。

結婚とかどうでもいいと思っていた僕が、この人とだったら結婚してでも一緒にいたいと思って、なんとか手を尽くしたのが僕のケースにあたる。まあ、もちろんそれ以外にも、前提としてお互い条件が合う部分はあった。

相手の理想に自分を近づける

パターン②「相手を振り向かせる」を成立させるためには、パターン③のようにただ妥協すればいいほど簡単ではない。それでもやる気があればなんとかなる。それでは、何をどうすればいいのか。相手に妥協してもらうんだから、自分が相手の理想に近づけばいい。

相手がどういう人が好きで、どういう条件で相手を探していて、どういう部分は譲れないのか、パートナーに対して何を求めているのか、それをひたすら探り、相手の理想の中で自分に当てはめることができそうな部分を、ひたすら取り込んでいく。自分を少しでも相手の理想に近づけ、相手がパターン③の妥協を選択してくれるまでに持っていく。

これをちゃんとやっている人は、うまくいってるんじゃないだろうか。というのも僕に対して「どうすればいい相手を見つけられるのか」と聞いてくる人は、この観点が全く欠けていることが多い。理想の相手に振り向いてもらおうとするのに、相手の理想に満たないそのままの自分で勝負して無残に散っている。そのままの自分では相手に求められていないことがわかっているのにも関わらず、何故か自分を変えようとしない。これはもう、やる気がないとしか思えない。

相手の理想と根本的に合わないのであれば、その相手はあきらめるしかない。どう頑張っても近づかないのなら、努力する甲斐はない。そのあたりは本当に相手のことが好きかどうかで分かれる部分でもある。そこまでするほどの相手ではない、と感じてあきらめることだってあるだろう。本当に振り向いてほしい相手なら、ただ待つのではなく努力を惜しまないことだ。

あなたは「いい人」なのか?

「どうすればいい相手を見つけられるか」と聞いてくる人には、要求ばかりの人が多い。「〜な人がいい」「〜してほしい」といった、ただ自分に都合のいい相手を求めているだけ。「それでは、あなたは対価として相手に何を与えられるのか?」と訊ねると、答えられないことが多い。また、「あなたを選ぶ相手は、あなたのどこをいいと思って選ぶのか?」と聞いても答えられない。

相手も同じ人間であり、お互いがいいところ悪いところ、許せるところ妥協できないところ、好きなところ嫌いなところ、を検証し合い初めてマッチングが成立するにも関わらず、その事が頭にない。相手も同じ立場だということを理解していないと、自分が選んだとしても相手からは選ばれない。それがわかっていない人は、あまりにも自分の武器を持たない。私と付き合えば、結婚すればこんないいことがあります、私はこんないい人です、何もないから攻め手に欠ける。そして選ばれない。

「いい人がいない」と思う前に、まず自分が「いい人」かどうか疑ったほうがいい。「いい人」でなければ、「いい人」を探すよりもまず自分が選ばれる人になるよう、「いい人」になったほうが早い。目当ての対象がいるなら、項目を絞って「その人にとってのいい人」になると、自分が望む人とのマッチング成功率は上がる。

自分の武器を増やそうとして、いわゆる「自分磨き」に精を出す人はいる。でもその多くは、やり方を間違っている。大事かもしれないが、表面的なことだけを取り繕っていることが多い。それでは根本的に選ばれない自分は変わらない。モテない人がパーマを当てたり服に凝りだしても、決してモテないのと同じ。

人からよく見える自分、ではなく、人に良さを提供できる自分へ、武器を増やしていくのがいいと思います。例えば、簡単なところで、男女関わらず料理とかはいいんじゃないですか。料理ができる自分、ではなく、相手が喜ぶ料理を気軽に提供できる自分になることが肝心です。頼れるあなた、心強いあなた、知識や経験豊富なあなた、優しいあなたを好きになる人は、それが発揮できる現場に必ずいると思います。