今Netflixで「コブラ会」を見ていて、これがけっこうどうでもいいコメディとして面白く見れているんだけど、やはりどうしても前作「ベスト・キッド」をおさらいしたくなる。コブラ会でもところどころにベスト・キッドのシーンを挟んでおり、先日見た第5話「バランス勝負」はまさにミヤギさんを偲ぶ回だった。これは尚更ベスト・キッドを見直さないといけないと思い、ついに見た。
ベスト・キッドもコブラ会も知らない人のために簡単に説明すると、ベスト・キッド(原題:The Karate Kid)は1984年の映画。転校先で集団暴行にあっている少年が、近所に住む日本人の老人に空手を習い、心身ともに強くなるという話。人気があったようで、パート4まで制作されている。僕は子供の頃、本当に物心が付く前ぐらいに何度か見た記憶がある。
コブラ会はその34年後の話で、2018年にYouTube Redにて配信され、最近Netflixに移籍して現在シーズン2まで配信されている。コブラ会とは、ベスト・キッドに出てくる集団暴行を行っていた少年たちが、通っていた空手道場の名前。言うなれば敵道場。コブラ会の道場生だった敵役のジョニーが、34年の時を経て再びコブラ会を立ち上げるという物語。
ベスト・キッドは1984年の映画で、コブラ会が2018年のドラマ。なんで今さらこんな続編を作ったのか、わけがわからない。だけどベスト・キッドの主人公ダニエルさんも、敵役だったジョニーも同じ俳優を起用しており、完全な続編。当時人気のあった映画だから、コブラ会が始まったときはリアルタイムで見ていた人たちの間で盛り上がった。Yesセンセイ!
さて、僕が今回見たのはコブラ会ではなくベスト・キッドの方。まさに30年ぶりぐらいに見直すと、こんな話だったのかと思うことがたくさんあった。まず、30年以上前の映画ということもあって、けっこうわからないことが多い。「当時はこれが普通だったの?」と思うようなことがたくさんある。主人公のダニエルさんは今で言うイジメに遭うんだけど、ところどころでやり返している。しかも金持ちの女の子と仲良くなったりする。全ての元凶。
このダニエルさんを主人公として話は進んでいくんだけど、ダニエルさんの物語としては凡庸そのもの。この映画の中でミヤギさんだけが異常な存在として際立っている。この映画は完全に、ミヤギさんの映画だ。ミヤギさんとは、ダニエルさんの空手の師匠である日本人の老人だ。
これは当時のアメリカ社会における、東洋人への幻想を映像化したものだろうか。多分この前提として、ブルース・リーのブームがあったと思う。アメリカで空手が流行る文脈として確か、ブルース・リー映画の流行があった。向こうの人からすればカンフーも空手も区別ついていないのか。しかし、この映画における空手は、カンフーとは違う空手そのものとして描かれている。構えが、受けが、型が。師匠のミヤギさんは沖縄出身という設定で、これも空手の文脈を忠実になぞっている。
ミヤギさん役は三船敏郎を考えていたらしいけれど(Wikipedia情報)、日系二世のアメリカ人、ノリユキ・パット・モリタというコメディアンが起用されている。三船敏郎なんかがこの映画に出ていたら浮きすぎる。この映画のミヤギさんは、めちゃくちゃシリアスな設定をはらみつつも、どこかマスコットキャラに近いところがある。言ってしまえば変な人。
ただアクションは様になっていた。この映画におけるアクションは、当時であることを考えればけっこういいと思う。一番の見せ所がミヤギさんの無双するシーンだとして、二番目はダニエルさんが受けを伝授するシーンだ。あの素早い動きが急に始まるのが良い。
ベスト・キッドの映画はけっこうな時間を女の子とのシーンに割かれてしまい、ダニエルさんとミヤギさんの物語としては、2時間がなかばダイジェスト的に過ぎていってしまった。僕の記憶にあった他のシーンは、2,3といった続編に引き継がれていることだろう。コブラ会を楽しむためには、2も3も見ておいたほうがいいんだろうなー。
コブラ会は全く別の趣向とはいえ、このミヤギさん抜きで続きをやっているんだからなかなかすごい。ミヤギさんの俳優は2005年に亡くなっており、コブラ会の作中にもミヤギさんの墓が出てきた。コブラ会にてダニエルさんが自動車販売会社の社長をやっているのは、ミヤギさんから車をもらったのと何か関係あるのかと思ってしまった。多分ない。